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プロローグ: 運命の呼び声

 夜の公園には、不釣り合いな静けさが漂っていた。

 肌寒い風が吹き抜ける中、ブランコの鎖がカラカラと揺れる。

 早乙女(さおとめ) 美秀(みほ)は、ベンチに腰掛け、空を見上げていた。

 ……三日前、あの少年と話したのは、ほんのわずかな時間だった。

 名前も知らない。けれど、ふとした瞬間、あの瞳の奥に自分と似た孤独を見た気がした。


「また、明日ね」


 そう言って別れた、たった一度の約束。

 だが次の日、公園に来たのは美秀だけだった。

 それ以来、少年は姿を見せない。

 彼の名前さえ、聞いていなかった。

 けれど、確かに美秀はあの時、奇妙な縁のようなものを感じたのだ。


「……本当に、どこへ行ったの?」


 そんな時だった。

 耳にしたのは悪霊の家の噂。

 あそこに入ったら、二度と戻れない。

 夜中に、子供の声がする。

 この街の消える子供たちは、全部あの家に……。

 誰もが眉をひそめ、口を閉ざした。

 そして。


「……その家に、あの子が入っていったのを見たって」


 美秀は、じっとその言葉を噛み締める。

 運命を感じた瞬間だった。

 何かに導かれるように、彼女は小さく囁いた。


「やっぱり、あの子は……あそこにいるんだ」


 あの一瞬で感じた、誰よりも強い縁。

 あれを、もう一度確かめたい。

 そんな衝動だけが、美秀を動かしていた

 かつての私なら、きっと踏み込めなかった。

 けれど。


「……これは、私の仕事だ」


 どこかで聞いたような言葉が、脳裏をよぎる。

 あの背中を、見てきたから。

 今の私は、もう逃げない。

 腰から下げた黄金の銃。

 普段は見つからないようにホルスターで隠している。

 それは、因果律を操る神具(しんぐ)、ゴールドメイデン。

 過去の戦いの果てに、美秀が手にした力だった。

 美秀は、ゆっくりと立ち上がる。


「……行かなきゃ」


 どこかで、あの子が呼んでいる気がした。

 たとえ、そこが悪霊の家だとしても。

 確かめずにはいられない。

 美秀の足音が、夜の街に消えていく。

 こうして、少女の物語は再び始まった。

 これは、神々と、人ならざるものへと挑む物語。

 失われた少年を探し、そして、自分の運命を確かめるための、新たな旅の始まりだった。

 夜の闇を越えて、彼女の旅は始まる。

 その先に待つのが、希望か絶望か。

 それは、まだ誰にもわからない。


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