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恋人に裏切られ番不信になった私の心を溶かして甘く抱きしめてくれたのは  作者: リーシャ


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9/20

09バイクは魔法世界だからこそロマン

 ファルミリアはその日、ギルドでなにかやろうかと考えて、依頼書にある村へ向かうことにした。異世界での生活が楽しくて暫く活動を少なくしていた。

 代わりにディアドアが忙しそうにしていたので、すれ違いというほどではないがあまり会わない日が多い。それに関して寂しさやモヤモヤは一切なかった。


 そうなるまでたくさん話し合ったり、関係を固く築いていったおかげ。前回の婚約者の関係の脆さを思い知ったので、思ったことをちゃんと言うようになった。

 前回との違いは色々ある。戦闘力の露呈、番同士、二度目の婚姻前提という関係。ちゃんとゆっくり構築していきたいという思考。

 番不信からの番だった彼との出会いと切実さ。どれをとっても前回と色々違う。戦闘力の露呈はかなり違う。


(村は向こう。右に行って曲がっていく)


 地図の通りに進む。ディアドアと行くことも考えたけど、忙しそうなので悪いなと思い、誘わずにここにいる。というわけで異世界の知識で楽々移動していた。

 風魔法や闇魔法を駆使しバイクのようなものを作り上げて、風を切っていた。この魔法はかなり前から作っていたのだが、形になったのはほんの最近。


 なかなか思ったように形にならなかったせいだ。それを知った時、他のものも並行して作っていかねば時間がかかるのだと思い知った。


「バイク最高〜!」


 あまりにも風が心地良すぎて、暇があれば爆走している。ディアドアには秘密にしている。秘密の趣味というやつだ。いつか二人乗りできるような大きさのものを作りたいけれど、一人用でも作るのが大変だったから。

 作って欲しいと言われて作れるものじゃない。自分で魔力を固めてと技術力が必要だし、自前の魔力でないと直感的な操作ができないせいだ。


 作れと言われて作っても、乗る人が操作するのは不可能な仕様になっている。

 ブウウウン!とエンジン音を響かせるとさらに気持ちを高揚させた。どうしてエンジン音を出すのかというと、演出だ。魔力は音がないので、音を出すようにしないと出ない。

 無音のバイクよりはある方がいい。バイクは前々から憧れだった。


「きーもちー!」


 ガンガン進める。人にぶつからないように、人より上の場所に浮かぶ。カーブも見事に曲がる。愛車とはこのように感じるのだな。

 惚れ惚れする。なぜこの乗り物にしたのか。それは、小説やゲームでバイクに乗る描写があり、それがやりたくて堪らなかった。

 異世界で乗るのではなく、異世界で乗るというのが自分なりのポイント。


「あ、あの村?」


 エンジン音を消して村に近づき、バイクを消して徒歩で行く。驚かれると思っての配慮である。


「ん?どうしたんだい?」


「依頼できました」


 門番の男性がたずねてくるので答える。


「えっ?」


 まさかの年若い女が依頼をしたら、やってきた場合の正常な反応である。自分とて、討伐依頼で若い女が来たら不安と相手の安否が気になって気になって仕方ない。


 その心理はわかるものの、説得する時間が勿体無いので無視する。説明も値段が積み上がるとかならば丁寧に説明してもいいが、説得や説明がタダ働きになるのならやる意味がどこにも見当たらない。というわけで、さくさくと門番っぽい人に案内してもらう。


「君は本当に冒険者なのかい?」


「はい」


「こんなに若い子が例の事件を解決できるのかな」


 ボソッと小さな声で話されるが、丸聞こえである。己の耳は良い。ちょっとでも言っていたら聞き取れる。魔法のおかげだ。

 ファルミリアは相手の疑心に満ちた視線など、なんのそのと情報をもらうために依頼書に記してある名前の持ち主のところへ進む。


「はーい」


 ドアを叩いて依頼主へ声をかける。


「すみません」


「はーいっ、なんでしょうか」


「依頼を受けてきました。詳しい話を聞かせていただければと、思います。お願いします」


「……えっ?えーっと」


 こちらの周りを見る。筋肉もりもりの男なんてどこにもいないので、探しても見つからないよ。なんて、心の中で補足。


「あの、お一人……ですかぁ?その、後から」


「来ません」


「細身の男の人だったり?」


「女です」


「実は長生きとか?」


「人族であなたとそう、年齢は変わりませんね」


 普通の瞳が段々、興味を失っていくのが見えた。そんな顔をしてもしなくても、結末はなんら変化しない。


「歓迎します冒険者さん」


「はい」


 棒読み。明らかなる棒読みだ。落胆されてもね。年齢も偽れないし、性別も変えられない。


「では、何が起きているのか詳細に言ってくださいね」


 もう、彼女について気にする記憶の隙間はない。


「近年……で……です」


 話を聞き終えて家を出ようとすると、男が家に入ってきた。彼女の彼氏かなにかだろうか。見ていると、こちらに気付いた男が眉を下げてちらりと隣を見る。


「誰だ?」


「依頼書を見て来てくれた人」


 さっきより雑な扱いになっている。いやぁ、いくらなんでも失礼ではないのかな。ファルミリアの持つ意地悪な部分が、モゾモゾしてきそうだ。

 内心今のうちに言っておけとすら思い出す。バカにしたような声音にフンッとなる。


(好き勝手いうけど助けが必要なの、忘れてる?)


 自分は知っている。


「はぁ?この女が?」


 この世には助けられる人と、助けられない人がいる。


「女?」


 どうしても気が会わない者はいるのだ。威圧を相手に向けて、殺気を部屋に充満させる。


「……ひっ」


「ぐぅ!」


 女は怯えて男は怯む。


「誰に向かって女と蔑む?」


 ギリリリリ、と威圧感を絞り徐々に緩める。


「す、すみません」


「ご、ごめんなさい」


 謝られるけれど、もうここには用はない。


「では、行きますので終わったらサインをしてくださいね」


 バカを相手になどしていられない。一秒でも早く済ませるべき。ディアドアとは男の差が違いすぎると、ファルミリアは内心点を付ける。

 やはり自分の番は性格が良く強い、頼りになる相手ということが改めてわかった。勉強代みたいなもんだよね。相手の男女らをもう、視界の中に入れることなく外へ。


「バイク飛ばせば、すぐだ。一日で帰れるかな?」


 バイクをまた出現させる。闇魔法を使っているので黒い。

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