31一番重要な時に青龍ってああなるんだね。トラウマなんて、消えました。バカで、傲慢で、最低な……どうしようもない、私の番のせいで
無理に引き剥がしては傷つけると思ったのか、手は触れない。それに好きな人に触れられている幸運をすぐに、手放したくはないのだろう。
「トラウマなんて、消えました。バカで、傲慢で、最低な……どうしようもない、私の番のせいで」
「泣いているのか?泣かないでくれ。傲慢で最低な私を、抱きしめてはいけないぞ」
段々、卑屈になってきたんだが。
「ジルステン様。私たちはまた一からやり直しましょう。全面的に私が悪いのはわかってるんです。会ったばかりの番は雲よりも情緒が浮つくのなんて、知ってたのに。うっかりしてました」
「ど、どういうことだ?」
ジルステンは漸く、ファルミリア達に目を向ける。ディアドアも仕方ないなと腕を組む。
「少なくても、お前のこと嫌いじゃなくなった、とよ」
「よかったね。おめでとう。道のりは長いけど頑張ってー。一緒にティーパック狩りしようね。青龍レベルなら農園からごっそりいけるよね?」
青龍ジルステンは呆然としながら、のほほんと応援するカップルを見つめ。己の番の少女を見た。
「マリノ。私はバカだから、わからない。悲しませたくない。だから、嫌ならはっきり言って欲しい」
まだ疑いにかかる。マリノはジルステンから少し離れて、目を合わせた。
「私と少しずつ、番になってもらえますか?」
それを聞き、青龍の王族は。胸をどきりと鳴らせて。
ガクッ。気絶したのだった。
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二人の女性がテーブルにお菓子や飲み物を乗せた光景が、日差しを引き立たせている。ごくりと飲む音に女は笑って切り出す。
「青龍族ってすごい面白いねー」
きらきらとしてぺかぺかな笑みを相手に向ける。それに苦笑するのはマリノ。
「いえ、私の実父は絵に描いたようなプライドの高い男で、気絶するなど、想像できません」
「あんなに強いのに好きって言われたら意識飛ぶなんて、王族だから?」
「どちらかといえば純真なのかと」
「惚気?言うねぇ」
「いえ、惚気というより性格の違いを説明しただけですから」
いやいや、と真面目な顔で首を振る青龍の番。もう一人のファルミリアは手で頬杖を突き、うんうんとなる。
「白目剥いてたから、記録に残しておいたよ。あとであげるね」
「え、あれをですか?」
「うん。喧嘩したときは憂さ晴らしに街中に撒けばいいよ」
「私が彼にトラウマを植え付ける側になるのですか?それは、ちょっと」
「喧嘩したらそんな気になるから、気にしないでいたら?絶対喧嘩したらこの傲慢なトカゲめ、ってなるし」
「流石に、だからと言って王族の人の白目を」
「へーきへーき。番だから許してもらえるよ」
「あなたは、その……番に対しての寛容の深さを抉り過ぎてませんか?」
利用して、相手をボコボコにするくらいの精神をしてないと。番だからといって、遠慮などという言葉はない。辞書にも中にもない。
「マリノ。随分と相互理解進んできたね」
今は、青龍実父襲撃事件から既に一ヶ月程経過している。経過報告を受けていた。あのあと、気絶した男を雑に転がしてソファに寝かせた。
次の日、例の従者が来たのでこれ幸いと引き取ってもらう。従者は泣いて喜んで、青いアザだらけの顔や体にガタガタ震えていた。
治療費も請求しておき、送り出した。その後、番の部署に円滑なツガイ同士の交流を補佐してもらおうと、マリノ達と部署へ。
まだちょっと、渋る青龍野郎を無理矢理引きずり出した。その後、第三者も含めた面会をまずはやっていくことになる。それが順調らしく、この間は花をくれたとか庭を歩いたと聞く。
「ほーん、よかったね」
「ええ。傲慢なのはどちらかというと話し方のせいだとわかりました」
穏やかな顔をするようになった。




