26青龍の人が行方不明。父を一狩りしに
彼の顔には笑みが絶えず、話の内容がよほど面白いのだろう。
「で、どうやって?」
「ジルステン様の番の把握能力は高く、どこにいるのか匂いだけでもわかるのです」
彼の声のトーンが上がると、彼女の眉がほんの少し上がる。マリノは気持ち悪いと、今すぐ言ってしまいそうな顔色をしていた。
「わかる。気持ち悪いねー」
相槌を打つ。その表情は穏やかで、深く共感していることがうかがえる。
「今はそれについてではなく、飛び出して行ったことについて、話して下さい」
「は、はい。私たちはあなたに拒否されたあと、何がだめなのかと、調査を始めました」
マリノは、彼の言葉をしっかりと理解しようとする強い意志が感じられる。こちらもその部分を聞きたい。まあ、ちょっとだけね。
「その時、青龍族の男があなたの父親だと知り、経緯を紙にて読み込んだあと、ジルステン様は激怒なされた」
男が話し終えると、重い沈黙が間に落ちる。
「もしかして、あの男に対して?」
空気そのものが、幾重にも重なる冬のヴェールを纏っているよう。沈黙を破り、マリノは唖然と呟く。それに反応する男はどうしたら良いですかと、聞いてくる。
普通なら、無視するがマリノは気にするのだろうなとなんとなく待つ。とりあえず、青龍のことについて詳しく聞かねば。
「でも、追いかけていかないの?大事な人なら、追いかけていかないといけないと、思うけど?」
「それは、み、見失ったのです」
「そんなめちゃくちゃな、突貫行動を?それは、後先考えてないね?」
聞いてすぐに、走り出したと言うことになる。それって、本当に無計画。行ってどうするのか。殴るのか、文句を言うか、まずは観察するのか。青龍族の王族なので多少のゴリ押しは通じるだろうけども。
「そうですね。ですが」
従者の男は言い淀む。
「ツガイを傷つけたものを、許すことは私にも、できそうにありませんから」
諦めに似た顔。彼に強く共感するはディアドア。
「当たり前だな。やり方はどうあれ。傷つけた過去は過去。あったことなんだから報復はやる」
「そういうものかなぁ」
「なんでお前は、あんまりわかってないんだ?散々おれが、お前を傷つけた奴らをあそこまで追い詰めているのに。おれの愛が伝わってねぇのか?少ないのか?」
まるで、もっと大盛りにしましょうか?とでも今にも言いそうだ。バイキングみたい。それにしても、どうしたらいいですかと先ほど従者は言ったけど。それをこっちに言っても、何も解決しないと思う。
「どうする?」
解決させようがない。マリノは見てわかると思うけど戦闘力は皆無の一般人。
「どうしましょうか」
戦うなんて土台無理。対してあちらは力の強い青龍族。それと実父。
「向こうの国に言ってもすれ違いになると思うし……普通に間に合わなさそうだね」
マリノがハーフであれ、力の差は埋められるわけじゃない。女の子だし、向こうは男なのでその時点で筋肉量に差がある。
「そうなんですよね。はぁ」
おまけに、身内に牙を剥くのはめちゃくちゃエネルギーが必要。あっちは不誠実な親だというストレス。会いたくない相手だし。
マリノにとっては、一概にも言えないほどの因縁を持つ相手になる。仮に番の女を相手にするとしても、やはり嫌悪感を感じる人に会うのは無理だろうし。
何も知らない人をあいてにするのって、人が思っているよりもずっと大変。ファルミリアも元婚約者なら言えるけど、相手の女に対して情報なんて持ってなかったから。
「待つしか、なくないか?」
文句を言おうにもプロフィールだってほぼないから、どう文句をつけるのかも難しかったという過去を思う。知らない相手は困るよねぇ。
「そんなっ。どうにかなりませんでしょうか?」
「そうは言われても。マリノに青龍族の子を感知する能力はないからね?無理だから。私たちも」
マリノに実父の居場所を知っているかと聞くと。首を横に振られてやはりかとなる。知るわけがないよね。知りたがるには若すぎるのだ。
嫌悪のある相手のいる場所なんて、誰だって知りたくはない。情報を全てシャットアウトするのは基本。ファルミリアも元婚約達の動向なんて一ミリも知りたくないし。




