25うちに保護する。マリノ様はおられますか?と来た
そうして穏やかに暮らせていたものの、やはり番のトラブルは簡単に終わってくれそうに無い。なんで断られるのだ、と慌てる青龍族の青年。当然、何度も何度も会いたいと申請してくる。
家に来られては堪らないと、彼女が話をするのならば番の関連部署に取り次ぎの仲介を頼んでいた。彼女の両親も青龍族の青年について知るところになったのだが、反応はやはり微妙。
青龍族によい感情がないのだから、その反応も然もありなん。ツガイ認定されたマリノは迷惑としか今のところ思ってないみたい。あれだけ乱暴なところを見せられてしまうと、ね?
嫁いでも幸せになれるビジョンが湧かない。青年、ジルステンが貴族の位にあるところもひっかかる部分らしいので。捨てられた場合、または捨てやすい地位にある。ポイっと。簡単にやれる。ハーフであれ人間であれ純粋な人外にまともに相手取って対抗できないので再び泣き寝入りするしかない。
青龍族は誇りもなく愛を囁いていたものを、いとも簡単に捨てると親子の間で身をもって教えられている。なので、周りも許してあげてや、彼は違うと言えず。それもそう。
ジルステンが捨てない保証もないし、周りもジルステンという存在を全く知らないので。人柄を知らず、彼はそんなことをしないと無責任なことを言えるわけもなし。
寧ろ、周りはマリノ親子達のことの方を知っているから余計に言う者はおらず。そうして時間が過ぎる。マリノは慣れた様子でキッチンにいた。笑顔が増えたので、こちらもホッとしている。
ドンドン。扉が強く叩かれる。
「すみません!マリノ様!マリノ様はおられますか?」
なんだか緊急事態を思わせる声音に三人は顔を見合わせる。
「誰ですか?」
扉越しに問いただす。
「ジルステン様の従者ですっ。どうか話を聞いていただきたいっ」
「家に押しかけるなんて、常識外では?お帰りください。話なら番の部署に」
言い終える前にその従者は焦った声で震わせる。
「じ、ジルステン様がっ。恐らくマリノ様の母君を苦しめた男のところに奇襲に行ったのですっ!どうか!話を聞いてくださいませんかっ!」
相手の語る言質。それは疑いが強く残るもの。これを信じてノコノコ行くほど、お人よしではないんだが?
じっとりした目を相手に向けつつ、扉を開けるかどうかはマリノに委ねた。
相手がマリノを攫おうとしても無理な陣形にしておくので、好きにすればいいと笑みを向ける。なにがあっても、必ず守るよと。
「わかりました。開けてください。ちゃんと審議を確認して、話を聞きたいと思います」
マリノは心を決めたらしく目が燃えていた。
(覚悟が決まってしまったか)
一度決まると彼女は、待つ仕草で部屋の中の真ん中へ移動。ドアを開けると、交渉の席で見た覚えのある男が焦燥の滲む顔つきで立っていた。
「どうぞ。嘘だった場合、五倍の強さで家から叩き出しますからね」
「は、はいっ」
一瞬、引き攣った笑みを浮かべたが、あっちの危機の方が重いと思い直したのか静々と家へ足を踏み入れた。
「朝早くから失礼いたしました。青龍族王弟が子息の一人、ジルステン様のそば付きをしております」
「はい。知ってます。さっきのことは本当ですか?そもそも、それ以前になぜ私がここにいると?」
そう、それ。セキュリティ的な意味で一番知りたい。こっちはそれが気になる。ジッと見つめ、にらみつけた。
(どうやって、うちにいるとわかったの?)
男を威圧する。
「そ、それは」
そこを問われると思わなかった男は、ギクリとさせる。うわ、わかりやす。
「それは」
「それは?袖の下渡した?脅した?権力乱用?」
「ぐ」
「おいおい、追い詰めたら吐かないぞ?」
ディアドアが笑って指摘する。おっとっと。




