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恋人に裏切られ番不信になった私の心を溶かして甘く抱きしめてくれたのは  作者: リーシャ


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23/40

23妖精局。なぜ初対面の相手にそんな個人的なことを?

 何でもかんでも、耳に入らないようにしていたし。他者の出来事でも、番だからとなんでも好きにやっていいわけではない。

 相手が権力を使った場合はファルミリアは、妖精局の誰かを立ち合わせた方がいいのではないかとディアドアに相談。


 それはいい、と彼も納得して連絡しておこうと笑う。外は天気が良くて、明日も同じ天候になるだろうと予感させてくれる。

 カッティングされたグラスに水を入れ、気合と共に飲む。彼女に付き添って、早二時間。段取りを話し合っているので冷静に対処するだけだ。


 午後の柔らかな陽光が差し込む窓際。女子二人の間には、穏やかな時間が流れている。何か話すとくすくすと笑みをこぼした。


「リラックスしてきてるね」


 こちらがそれを指摘すると彼女は目を細めて笑い、共感するように頷いた。


「はい!」


 マリノの表情は明るく、話す声も楽しげで、心底リラックスしている様子が伺える。


「青龍のやつとは本当に会うのか?」


 今しがた頼んだテーブルに置かれたディアドアのカップは、カフェラテで、その表面にはミルクの白い模様が溶けかけている。


「まだ自信はないですが、いつまでも逃げていては追われ続けるだけでしょうし」


 彼女の瞳は怯えの色を映しつつ、穏やかで幸せな光を宿している。余程、両親に愛されて育ったのだろう。

 両親に話してみてはどうだろうかと聞いてみた。


「一応、これが終われば言おうと思ってます。どちらに転ぶにせよ無関係ではいられないでしょうから」


 真剣な表情を見せる。確かに彼女と番の男との今後は家族も関わることになるだろう。時間になり、場所を移す。


 青龍族の男がここにきて欲しいと言ったのだ。こちらの側らには、妖精、または番関連の専門家が同席していた。トラブルになる可能性が高いと言っておいた。こちらの事情を深く伝えておいたのだ。


 張り詰めた空気が、二人の間で濃密に立ち込めている。部屋の隅で、二人は向き合っていた。立会人として座り続けることを約束している。


「自己紹介から始めましょうか」


 窓の外の喧騒とは隔絶された、静かで重い時間が流れていく。


「青龍族、ジルステン」


 一方が低い声で何かを告げると、もう一方は腕を組み、鋭い眼光で相手を射抜く。


「マリノ」


 その視線は、言葉以上に多くを物語っている。


「その、年齢は?」


 時折、どちらかが小さく息を吸い込む音だけが、静寂を破る。


「はい?なぜ初対面の相手にそんな個人的なことを教えないといけないんですか?」


「なっ」


 それは、次に発する言葉を選ぶためか、あるいは高まる感情を押し殺すためか。男の指先は微かに震え、顎のラインは固く引き締められる。


「ジルステン様」


 側付きらしき男に囁かれる。言葉は少なく、選び抜かれたかのように重みがある。


「そうか」


「分かっている」


 短い応答の中に、複雑な感情や駆け引きが凝縮されているよう。


「わ、わかった。では、いつうちの国に来れる?」


「なんですって?」


 マリノはその一方的な言い方に話し合いは決裂だ、と呆れ果てているらしい。沈黙が長く続くほど、その場の緊張感は増す。


(これは、だめだ)


 ファルミリアは相手の男が、馬鹿だということが露見しただけだなと半笑い。

 テーブルの上に置かれたグラスの水面は、わずかな振動も伝わらず、静止したまま。


「え?なんだ?」


(あなたの言動に皆呆れてるっての)


 まるで、この部屋の張り詰めた空気を映し出しているかのようで。どちらかが動けば、均衡が崩れるかもしれない。


「お断りします。あなたと番なんて死んでもごめんよ」


「な、何を、言ってる!?」


「落ち着いて下さい!」


 男たちの間では、言葉にならない激しいやり取りが繰り広げられている。番の専門家もあきれた顔を隠さずノートにやり取りを書き込んでいた。


「そんな!やっと番に会えたのに!」


 男の声には、驚きとも、あるいは別の感情ともつかないものが混ざっていた。

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