17魔法トランプ
現在、叔父らをテーブルに座らせて、アップルティーを飲んでもらっていた。例の高級アップルティーパック。
「で、ファルミリアに寝かされた私は起きたらすっきりしていた。寝不足で頭痛もしていたから、それも無くなっていた」
「叔父さんが起きてきて、たらふくご飯を食べさせたんだよ。そして、私の知る経営学をその頭に叩き込ませた」
「ははは!」
トゥバ叔父が笑う。金ピカを着ている時点で、成功している証になるよね。
「そして、私の知る異世界の知識で叔父に魔法トランプを教えた、まる」
頷き、結末を教える。ディアドアには異世界を少し知る術があることを伝えていたので、通じるはず。叔父の妻のケニーは多分叔父から聞いているから、薄ら察してはいると思う。
「魔法トランプ……?それは、七年前に発売された魔法が刻まれたあの、有名なものか?」
ディアドアは顎に手をやり、叔父に視線をやる。
「そうだ。私がファルミリアからお金を借りて、心機一転させて商会を立て直した」
「だから、待て。ファルミリアから渡された金程度で、負債をどうこうできるとは……思わないんだが?」
げっそり、ヒトからお金を借りねばどうにもならないほど追い詰められていた。それくらい、借金は大きかった。
「それは、私も信じられなかったが目の前にお金を積まれた。私の勉強代だと。借金を返して、うちに通えと。今度は甘い采配をしなくなるように己が絶対に成長させると」
「子供が言うセリフか?」
ちょっとカッコ良い台詞に叔父が脚色している。その時言ったのは。
『叔父さんさぁ。一家離散させてまで人にいい顔して楽しかったの?奥さんだって絶対に夜泣いてるよ。いくら奥さんが構わない、あなたの好きにしてぇとか言っても。人に付け込ませる行動はさせるべきじゃなかったよね?わかってる?シソウ叔父さん』
『ななななな、なんだこの子は』
叔父の母を見る目。しかし、母も厳しい顔をして叔父を細めた瞳で睨みつける。
『なんなんだこの子供は!躾をしたのか?お前の子供なのだからしっかり躾しろ?って!?』
ファルミリアは目にも映らぬ速さで叔父の後ろに回り、椅子ごと地面に男を引き倒した。
ギャッと聞こえたけど無視無視。えぐい音が聞こえたけど、叔父の顔を見下ろしてバカにした声で続ける。
『これでとりあえず借金返してきて』
と、お金を叔父の前で積み立てて叔父に返させたあとうちに来るように言い聞かせた。
そして、何度も経営学をノートに取らせて覚えさせるとファルミリアが同時進行させていた魔法トランプを彼へ知識と共に譲渡。
途中まで考えてきた方法を渡したあと、借金を返し終えると叔父はファルミリアを思い切り抱きしめて涙を流して「ありがとうありがとう」と何度も言ってきた。
何度も何度も察しているうちに、自分の表現が的確かは知らないがイケオジのスーパーダーリンになっていった。
「お前、凄いと思っていたが本当に凄すぎないか?」
成長させるとは言ったが、甘い性格が進化してしっかりしてくれたので大満足だった。
「まーね。ふふふふん!」
腰に手をやり、背中をそらす。そのエピソードは自分なりに珍しく自慢できる話。それに、親族間でもその話は広まりとても感謝された。しかし、それは母や父の功績にしてもらっている。
三人家族の功績だ。子供が魔法トランプを教えたり、経営学を教えたり、なんて現実的ではない。
「言ってしまえば周りからもっともてはやされたのに、欲のない子だなと思ったものだ」
叔父トゥバはこちらを見ながらホクホクと笑う。
「叔父さんからたっぷりお返しもらってるしいいよ。十分」
「いーやっ!ファルミリアが、魔法トランプを売るつもりだったと知っているのだぞ?まだまだ返しきれない。それに、お前の元婚約者の」
「婚約者じゃないけどね。推定婚約者だから、なんの関係もないよ」
「そうそう。その小僧に追加制裁を加えてもいいか?腹の虫が収まらない」
「うーん。もう虫の息って感じになるけどなぁ」
ケニーが夫をなだめていく。
「もう終わっていることをまた掘り返すのは、やめておいた方がいいみたいよ」
叔父も妻のケニーものほほんとした空気で、こちらを見ながらやめておこうかとなる。




