16初めて会った時は今にもどうにかなりそうな顔だった
チャームポイントで目立つは目立つけど叔父として隣で歩いてほしくない。
「叔父さん、突然どうしたの」
「お前が婚約者にこっぴどくやられたと聞き。馳せ参じた!クソガキにはたっぷり礼をしてやろうとだな」
「情報古いよ。もうとっくに縁も切れてるし、報復もなにもかも終わって今は番と出会って順風満帆だから」
「時が経つのが早いな」
聞き終えた叔父の感想。
「あなたが中途半端な状態で読んだ手紙だからよ!もう一枚に番とのことを書いているでしょう」
「え、そうなのか?」
「だからあなたはあのとき」
えっ、となった。言い合いが始まり、こんなところで話されると困る。
「中に入る?帰る?」
「入るぞい!」
叔父の言葉は力強く、中に入っていく背中を見つめた。
「ごめんなさいね。何度も言ったのだけど。次からは必ず連絡させるわ」
叔父の妻のケニーは耳を下げて謝ってくる。
「気にしてないよ。叔父さんってこういう人だし」
いわゆる、調子に乗りやすい人。
「本当にごめんなさいね。あの人、あなたのことが好きなのよ。恩を感じているしね」
優しく目を柔らかくして、にこりと微笑む。叔父がなぜ己に恩を感じているのかについて。それは、まあシンプルに言えば叔父の借金地獄から救ったから、かな。そういうことって連鎖して親族や家族にまで深く影響する。
両親はなんとなくファルミリアのことを理解していたので、モンスターやギルドについて黙認してくれているほど、なにか秘密があると理解していたと思う。
それに関して多大に感謝しか思ってない。なので、叔父が母にお金を借りたいと、資金が尽きて商売に失敗したことを話しているのを盗み聞きしていた。今からおよそ十年ほど前。
「ディアドア。この人が叔父のトゥバ。叔父さん。この人は番のディアドア」
十年ほど前、げっそり痩せた男がうちの家のドアを叩いて話を聞いたところ、かなりのお人よしであることがすぐにわかり納得。
「いやあ、番が見つかっていたなどめでたい!初めまして」
「妻のケニーです」
叔父トゥバはケニーを伴わずお金を貸してくれる人をまわっていた。その都度、その都度多分人脈も減っていたのだろう。
「初めまして。叔父の話はさっき初めて聞いていて、今知ったばかりで」
ディアドアは握手を二人と交わす。叔父は母のところに来た頃には瞳が虚で、母も危機感を感じ取り何度もウチに泊まるように説得。首を横に振るばかりで、実はファルミリアは時間の浪費にイラッとしてしまい。
「いやいや!そんなことは気にせん気にせん!」
「そうだよ、ディアドア。シソウ叔父さんに遠慮は無用だよ」
後ろからドスっと峰打ちして、気絶させたのだ。
幼い姪、幼い実娘の所業に二人は驚き叔父は見事に気絶。
「シソウ叔父さん!ふふ!あなたからそれを聞くたびに私は笑ってしまうのよねぇ。ねえ、あなた」
「そ、そうだな。でも、あのときの痛みは笑えないぞ?本当に痛かったのだ」
叔父は思い出したようにお腹の部分をさする。あのときの痛みがぶり返してしまったのかな。
「叔父さんを峰打ちして気絶させたんだよ?」
もう十年前になるのに。
「待て。十年ほど前ってなるとお前はまだ子供だろ大の大人を気絶させるなんて不可能だろ」
ディアドアは突っ込む。
「はは、それがそれが。私はその日まで全く眠れておらず気分も優れず……あっさり気を失った」
「ああ。前提条件が揃ってたと」
叔父は苦笑いにする。
「ふふ。そうね?でも、ファルミリアさんは強いと後から聞いて、きっと関係なかったのではないかと思うわよ」
叔父を気絶させたあと、ずるりずるりと引きずりベッドまで運んだ。初対面の叔父を己のベットに運びたいとは思わず母のベッドへ本人の許可を得ずに、独断で乗せた。
「お母さん、ぽかーんってなってたなぁ」
「なるだろ」
ディアドアが激しくなにか言いたい様子で、耐えきれずに話を遮る。




