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既存ワクチンとmRNAワクチン(レプリコン含む)に関する一考察

作者: よろ研

コロナ禍で登場したmRNAワクチン。最近ではコロナ以外の感染症にもその範囲を広げようとしています。mRNAワクチンは既存のワクチンとどう違うのでしょうか。また、なぜmRNAワクチンが作り続けられているのでしょうか。そのあたりを考察してみました。


※かなり簡略化した内容になっています。ガチの専門家の方には突っ込みどころもあるかと思いますがご容赦ください。

※mRNAワクチンに関しましては私見が入っていますので、一意見として参考程度にお読みいただければ幸いです。



『「ワクチン」とは』


Wikiでは「体内の病原体に対する抗体産生を促し、感染症に対する免疫を獲得する」とされています。

人為的に抗体を獲得させ、抗体で病原体を排除する、という考え方ですね。

ワクチンの起源は様々なところで紹介されている通り、天然痘の予防に牛痘を応用したのが始まりとされ、ラテン語のVacca(雌牛)から「ワクチン」と名付けられたとされています。

既存のワクチンは、大きくは生ワクチンと不活化ワクチン(広義)に大別され、不活化ワクチンはさらに不活化ワクチン(狭義)、成分ワクチン、トキソイドワクチンに分類されます。



『既存ワクチンの分類』


生ワクチン


毒性を弱めた、あるいは動物種が違うため毒性を発揮しない病原体を使用します。

例としては、天然痘(牛痘ウイルスをヒトに使用(現代の天然痘ワクチンは株が異なる))、麻しん(Edmonston弱毒株をヒトに使用)、結核(牛型結核菌(BCG)をヒトに使用)、犬ジステンパー(猿腎臓細胞で培養した弱毒株をイヌに使用)、鶏痘(弱毒株あるいは鳩痘をニワトリに使用)等々、多くの種類の生ワクチンが開発・利用されています。

通常の病原体の感染プロセスと同様に、生きた(活性のある)病原体を使用するため、液性免疫と細胞性免疫を獲得しますので、免疫記憶が働き、長期にわたって感染予防ができます。また、病原体の構造体すべてを用いていますので、病原体のいろいろな部分に対する広域の中和抗体が獲得できます。

弱点としては、弱いながらも毒性を持った病原体を使用しますので、免疫低下が起きている場合は症状が発現します。また、毒性が復帰して病原性が強くなってしまう危険性も存在します。


※液性免疫:抗体中心の免疫であり、体液中の異物除去はできるが細胞内には届かない。Bリンパ球主体。抗原記憶が長期間持続しない。

※細胞性免疫:細胞障害性T細胞やマクロファージ主体による免疫。細胞ごと破壊するので細胞内のウイルス等も標的。抗原記憶が長期持続



不活化ワクチン(狭義)


病原体を化学処理や熱処理などで不活化(増殖しない)したものを使用します。

日本脳炎やA型肝炎、狂犬病などが該当します。

不活化してありますので体内で増殖せず、安全性は高いのですが、後述の成分ワクチンやトキソイドワクチンと同様、液性免疫しか獲得できず、免疫が長続きしません。したがって、抗体価を維持するためには定期的に複数回の接種が必要になります。



成分ワクチン


病原体から感染防御に必要な部分のみを取り出して精製したものです。人工合成したタンパク質等もここに該当します。

インフルエンザワクチン(HA抗原)、肺炎球菌ワクチン(莢膜多糖体)、ヒトパピローマワクチン(ウイルス様中空粒子)などが該当します。

使用するタンパク質等が少なく明確であるため、副反応(副作用)が少ないとされていますが、液性免疫しか獲得できません。



トキソイドワクチン


病原体の産生する毒素を抽出し、ホルマリン等で毒素として作用する部分を無力化し抗原性のみを維持したものを使用します。

ジフテリア、破傷風等が該当します。

こちらも液性免疫しか獲得できません。




『感染予防と重症化予防』


ワクチンは病原体に対する免疫をあらかじめ獲得しておくことによって感染症を予防するという観点で使用されています。

病原体に対し、生体の武器は「免疫」のみですので、ワクチンによって感染予防できるものもあれば、重症化予防に留まるものもあります。これは、病原体の侵入と増殖経路が病原体によって異なるためです。


例えば天然痘や麻しんは、歴史的に「二度なし病」として知られていました。一度感染すれば、免疫が続いている限りは二度目の感染はないというものです。すごくおおざっぱに言えば、これらの病原体は増殖するときに血流にのります。免疫さえあれば、血中のウイルスは抗体で潰せますので、侵入した病原体は症状が出るほどには増殖できません。感染予防(症状発現防止)が成立します。


例えるなら、王城に侵入した盗賊(病原体)でしょうか。見張りの兵士(抗体等)が十分にいれば、あちこちを歩いて宝物を盗み出す前に捕縛されます。

ただ、いくら細胞性免疫の抗原記憶があるとはいえ、免疫そのものは徐々に下がっていきます。ですので、盗賊がほとんどいなくなった世界(感染症の激減)では、見張りの兵士もだんだん飽きてきます(免疫低下による再感染の可能性)。ですので、訓練(再度のワクチン投与)して兵士の練度を上げておく(免疫の再活性化)必要があります。


次に、これら「二度なし病」とは異なり、仕組み的に重症化予防のみに留まる感染症も存在します。

例えばインフルエンザウイルスは、上気道細胞に感染し、気道粘膜上の粘液で非感染の細胞に移行したり咳や痰などで外部に放出されたりします。血中には移行しませんので血中の抗体では防御はできません。一部、血中の抗体(分泌型IgA)が粘液に移行するのですが、細胞を覆っている粘液の量に依存しますので、乾燥等で粘膜が乾いてしまいますとその能力が発揮できず、感染と増殖を許してしまいます。ただ、免疫がある以上、病原体の広がる速度は低下しますし、時間がかかるとはいえ病原体は免疫で潰されていくことになりますので、感染し一時的に症状が発現しても重症化には至らないということになります。


こちらも例えるなら、 王城の城壁を守る兵士(抗体等)と外から飛んでくる火矢(病原体)でしょうか。この場合、火矢の数が少なければ、城壁を守る兵士でブロックできますが、数が多くなってくると、捌ききれず王城内が火事になります(感染成立・症状発現)。兵士が常駐(免疫獲得)していれば、王城内の火事は燃え広がることなくすみます(重症化予防)が、兵士を動員(免疫強化)しても飛んでくる火矢をすべて防いで火事にしない(感染防止)ようにするにはかなり困難です。

ですので、感染も予防しようとすれば、手洗いやうがい、マスク等で外部から入ってくる病原体(火矢)の数を減らしておくことが重要になります。




『mRNAワクチンとは』


近年登場したmRNAワクチンは、免疫獲得という点では既存のワクチンと同様ですが、そのプロセスが異なります。疑似ウイルス、といったところでしょうか。

ウイルスはその遺伝子がカプシドというタンパク質の殻で覆われた構造をしています。mRNAワクチンはその構造を模倣して、ウイルス遺伝子の一部を再現したmRNAを脂質ナノ粒子で覆う構造になっています。

これによってmRNAが破壊されずに細胞内に取り込まれ、細胞内で遺伝子にコードされたタンパク質を合成して細胞表面に提示するという仕組みとなっています。

細胞表面に提示されたmRNAワクチン由来のタンパク質は異物として認識され、生体はそれに対する抗体を合成するとともに、タンパク質を提示した細胞は「感染細胞」として細胞障害性T細胞等により攻撃され破壊されるという、あたかも生ワクチンやウイルスの感染と同じようなプロセスが取られます。


最近話題となっているレプリコンワクチンは、このプロセスに一手間足して、細胞内でのmRNA合成を促す仕組みとなっています。

「自己増殖」という言葉だけが先行して、無限に増えるような印象を受けますが、あくまでもmRNAが取り込まれた細胞のみに限定するもので、その細胞が破壊されてしまえば増殖は停止します。

また、「シェディング」としてウイルス粒子が外に出ていくような意見も見られますが、そもそものRNAパーツにウイルス粒子を作る部分の遺伝子がコードされていませんので、ウイルス粒子は作られません。また、mRNA由来のタンパク質も「感染細胞」が破壊されてしまえば合成は止まりますので、レプリコンワクチンも従来のmRNAワクチンと同様、合成されたタンパク質が体外に放出される、という事態にはならないと思われます。そもそも論として、大量に合成されたタンパク質が無害かどうか、という懸念は残りますが。


もう一つ、個人的に懸念されるのは、疑似ウイルス粒子として脂質ナノ粒子を使っている点です。

ウイルス粒子と違い、ただの脂質で囲まれた粒子ですので、ウイルスがレセプターを認識して特定の細胞に入り込むのとは異なり、ほぼ無差別に各種細胞に入り込みます。つまり、本来であればレセプターがなく感染しない細胞にまで入り込んでしまうので、抽象的な表現ですが、免疫システムがバグらないかと心配になってしまいます。

また、脂質ナノ粒子を筋肉注射で体内に入れ込んでいますので、「感染細胞」にものすごく濃淡が出てしまうと考えられます。通常のウイルスであればレセプターを持った細胞にのみ感染しますので、生ワクチン等の場合、レセプターのない細胞には付着せず、適度に広がると思われますが、脂質ナノ粒子の場合はほぼ無差別に細胞に入り込みますので、一部に限局してしまう可能性が考えられます。この理由によるものかどうかわかりませんが、私はmRNAワクチンを打った方の腕で、ある日突然筋断裂と内出血を起こしました。

更に、取り込まれなかった脂質ナノ粒子が血流にのって、注射部位とは全く別の場所で細胞に取り込まれる可能性もあります。再生できる線維芽細胞や骨格筋細胞なら「感染細胞」として細胞障害性T細胞等に破壊されても何とかなるのでしょうが、極端な話、再生できない心筋細胞等に取り込まれてしまった場合はその部分の細胞は欠落することになりますので、あまりよくないのではと考えられます。


私自身、新型コロナウイルス感染症が流行し、ワクチンが承認されたころ、脂質ナノ粒子を使ったmRNAワクチンはあくまで緊急使用的なもので、長年使ってきて危険性も安全性も判明している従来の技術を用いたワクチンに置き換わっていくのだと思っていましたが、メーカーは現在もmRNAワクチンを作り続けており、更にはmRNAワクチンの使用範囲をコロナ以外にも広げようとしているようです。


企業側の理屈で言えば、おそらくmRNAワクチンは「儲かるから」でしょう。

従来のワクチンは病原体を培養して作られていますので、病原体を増やす設備、外部に漏れ出さないように封じ込める施設、病原体を保存管理する設備等、かなり面倒くさい設備関係や作業工程が必須となります。

mRNAワクチンは、遺伝子配列さえわかってしまえば化学的に合成が可能となりますので、微生物学的な管理が不要となります。つまり、化学工場施設のみで製造できてしまいますので、微生物を取り扱う場合と比べ、管理が格段にしやすくなると考えられます。かなりのコストダウンが見込まれるはずですので、企業的にはオイシイ業務になるのではと想像してしまいます。



『最後に』


人類は感染症に対抗する手段として、ワクチンという、人為的に免疫を付与する方法を生み出し活用してきました。また、成分ワクチンやトキソイドワクチンといった、免疫付与に必要な部分だけを抜き出し利用することで、より安全性の高いワクチンも開発し応用してきています。しかしながら残念なことに、現代の科学では、ウイルス1個すら作製することはできていません。リバースジェネティクスなどの手法もありますが、この手法も結局生きた細胞を必要としますので、純粋に一から作製することはできていないのです。

ウイルスの仕組みが完全にはわかっていないのに、脂質ナノ粒子による「疑似ウイルス」を作製し、それをワクチンとして応用するのはまだまだ時期尚早なのではないかと懸念してしまいます。



まとまりのないお話で失礼いたしました。ここまでお読みいただきありがとうございます。



重症化予防の例えがちょっとしっくりこなかったので、初回時とは書き直してあります。ご了承ください。

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よろ研さま。 ポリオ生ワクチン(OPV)のおかげで罹患せずに済んだ、と一方的に恩義を感じている個人です。 在来型コロナウイルスは腸管で増殖することが知られていて、一方では新型コロナウイルスを弱毒化し…
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