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「死ねやぁぁぁ!!!」
「っっっ!!!」
ヒロトは本能のままアイリスを手に取り、殺意をもって振りかかってきたタイチのナタと交錯させる。ヒロトとタイチの間には火花がほとばしり、タイチの全力の一撃を受け止めることに成功した。
「な、なにぃ!?」
「っ...おおおっっ!!!」
力を振り絞ってタイチを吹き飛ばし、一定の距離を作る。全力の一撃を防がれたタイチは初めてヒロトのことを警戒し、互いに膠着状態へと突入した。
ヒロトはタイチが攻撃してこないことを機にあらためてアイリスを見る。
「こ...これは!!」
そこにはわずかな月明かりすらも強く反射し、大きな輝きを放つ刀身を身にまとった剣が燦然と現れていた。
「ア、アイリス...なのか?」
「はいっ!!、わたし達アテンドは武器に変化することでご主人様の戦闘をサポートするんです!」
「そういうのは早く言ってくれ!」
タイチをそっちのけで会話をする2人を見て苛立ちを覚える。
「おいおいおい!、武器を手に入れた途端にずいぶんと余裕でたなぁ!あぁ!?」
「っ!」
「中々よさそうな武器じゃねぇか…よぅし、お前を殺してその武器を頂くとするかぁ…!」
ヒロトは剣を構え直し、迎撃の準備をする。
「剣になってくれたのはいいけど俺、剣なんか使ったことないぞ…?」
「大丈夫です!内に秘めていた潜在力が活性化してきているはずなので身体が勝手に動いてくれます!!」
「今度こそ殺してやるぜぇぇ!?」
再びタイチが攻撃してくるがヒロトはぎこちない動きではあるものの2、3回と刃を交えて受け流していく。
「ほ、ほんとだ…まるで前から知っていたかのように身体が動く…」
「ちっ…!!」
タイチは更にナタを振り回すがその全てを跳ね返され、次第に焦りが生じ始める。
「っ!、はあっっ!!」
「がっ!!!」
焦りが出た一瞬の隙をヒロトは見逃さなかった。コンマ数秒の隙をつき、ナタをタイチの手もとから吹き飛ばした。
「うっ…!?」
「もうやめろ、あんたの負けだ」
ヒロトはすぐにナタを拾いに行くことを危惧してタイチの眼前に剣を突き立てた。
「て、てめぇ…!」
「もう人殺しなんてやめるんだ、警察に自首して罪を償え…」
「っ……」
一時の静寂、聞こえるのは激しく動いたことによって息切れを引き起こしているヒロトとタイチの呼吸音のみ。
「…わ、わかった…俺が悪かった…ちゃんと罪を償う、こんなゲームにももう関わらねぇよ…」
ふうっと一息ついてから剣をゆっくりと下にさげ、後ろを向く。
「もう二度と、俺の前に姿を見せるな…」
こちらからももう二度と関わらないように、戦意を喪失したであろうタイチの元を後にしようとする。
「甘ぇんだよクソガキがぁぁっ!!!」
「ご主人様!!!」
「っっっ!!?」
タイチ、そしてアイリスの叫び声が聞こえ、意識よりも先に反射的に身体が反転する。
ドスッと今まで聞いた事のない重く、冷たい音がヒロトの身体中に響き渡った。
「…この…人殺しがっ…」
悪魔の笑みを浮かべながら、ヒロトに呪いの言葉を放ちながら、タイチは血を流しながら倒れ、沈黙した。