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「ご主人様、この人…」
「しっ!、少し黙っててくれ…あと姿も見せるな」
透明になっているアイリスの表情など知る由もなくヒロトはアイリスの行動を制止する。
(一応アイリスは隠しておこう…やりたくないけど、ゲームに強制参加させられてるのは事実だ、何も考えずにこちらの情報を晒すのは避けた方がいいだろう…)
「なぁヒロトよぉ、お前はこのゲームのこと、願いが叶うって信じてるか?」
ヒロトはタイチに対しての警戒心は忘れないものの、初めて会う自分以外の人間、さらに同じ境遇に立っている相手に出会えたことに安堵し、気が少し楽になった気がする。
「いや、さすがに信じてないですよ…そんなこと言われても信じろって言う方が無理がある」
「だよなぁ!?そんなこと信じねぇよな!!どーせテレビの撮影かなんかだろ!俺1回素人ドッキリ食らったことあるからこうゆうの慣れてんのよ」
やけに上機嫌で口達者に話をする。本来は就寝時間であろう時刻、さらにはいきなり訳の分からない状況に立たされていることもあってか気持ちがハイになっているようだ。
「ところでお前、信じてねぇのにわざわざ外にでて何してたんだ?」
「実は…」
つい無計画に口を走らせようしたが思いとどまる。
(いや…何ごとにも用心は必要だ)
「あー…俺も撮影かなって思ったからスタッフがどこかに隠れているんじゃないかって、それで外に出て探してみようって思ったんです」
「じゃあ俺と一緒ってわけだ!なら一緒に探そうぜ」
ヒロトは迷った。タイチを完全に信用した訳では無い、まだ信用に足る人物では無い者と行動をともにしても良いのだろうか。
「…わかりました」
(一先ず行動をともにして様子を見る…それにこの男もここに来たばかりなんだ、下手なことはしないはずだ…).
「よし、なら行こうぜ」
2人はともに歩み始める。
少し進んでからタイチは歩みは止めずに再び口を開く。
「なぁヒロトよぉ、ほんとに願いが叶うとしたらお前は何を願うんだ?」
「…うーん…いきなり言われてもすぐには…タイチさんは何かあるんですか?」
タイチは不敵な笑みを浮かべる。
「俺か!俺はもちろん金だよ!金さえあれば何でもできるからなぁ!」
誰が見ても分かるほど気分が高揚している。この男は相当お金に執念深い男なのだとヒロトは理解する。
(まぁお金にがめつそうなのは見た目と合ってるな…)
「あぁーほんとに願いが叶ったらいいのによー、叶わねぇかなー」
ヒロトは違和感を感じた。タイチの最後の発言がやけに演技臭かったからだ。
(この男…本当はゲームのことを信じてるんじゃないのか…?)
再度ゲームのことを意識したヒロトはふとした疑問を抱き、タイチにたずねる。
「タイチさん、そういえばダイチさんのアテンドってどこにいるんですか?」
「ん…?、あぁ〜アテンドね、あいつなら今はいねぇよ、それよかヒロトこそアテンドはどうしたよ?」
「俺は…家に置いてきました、あんな怪しいやつと一緒に行動はできないと思って」
それを聞いたタイチは急に足を止め、数秒の間沈黙する。ヒロトはダイチの突発的な行動を不可解に感じ、表情を見るために顔を覗き込む。
「なぁヒロトよぉ、俺はさっき言ったようにこのゲームを信じちゃいねぇ…だがよ、さっきから普通じゃありえねぇことばかり起きてる…ならよ、信じちゃいねぇがやってみる価値はあるんじゃねぇか?」
瞬間、タイチは右腕をなぎ払うようにヒロトめがけて振り抜いた。