4 ゲームスタート
「うわああああぁぁぁぁ!!!」
真っ暗で何も見えない底に落ちていくヒロト。
このまま死んでしまうのではないかと思っていたが、急に視界が逆さになり、ドゴン!と頭に衝撃が走る。
「っっっつ〜〜〜〜!!」
すぐに起き上がり、痛みが走る頭を手で押えながら辺りを見渡す。
視界にはいつも通り自分の部屋があった。外は真っ暗な夜のままで寝る直前の状態と同じだ。
(さっきのは…)
直前まで起きていた不可思議な状況と今の状況を整理し、ヒロトは答えを導き出した。
「なんだ…夢か…」
「おはようございます!ご主人様!」
自分しかいなかったはずの空間から元気な高い声が鳴り響いた。
「おわぁぁぁぁ!?!?」
あまりの驚きについ背後に飛び退きベッドに尻もちをつく。
目の前にはこれまた見知らぬ少女が立っていた。
シルクのような長い白髪を2つにくくり、見たことのない衣装を身にまとっている華奢な少女だ。
「だっ!だれだっ!?」
少女は待ってましたと言わんばかりの顔をしながらヒロトの問いに答える。
「はい!わたしの名前はアイリス!女神様の命によりあなたのアテンドを任されました!これからよろしくお願いします!!」
「あ、あてんどぉ…?」
ヒロトはまたも理解できない状況に立たされてしまった。しかし、アイリスと名乗る少女が口にした女神様と言う言葉でヒロトは何かを察する。
「女神様ってまさか…フローラのことか…?」
「はい!その通りです!」
「ゆ、夢じゃなかったのか…」
ヒロトは落胆した気持ちを抑えられずため息をつきながら顔を落とした。
「どうしたんですか?ご主人様?」
「いや別に…それより、アテンドって?」
半ば自暴自棄のようになりながらアイリスに今1番の疑問を尋ねてみる。
アイリスは役目を与えられたことに喜びを感じたかのように清々しい表情で話し始める。
「アテンドというのはその名の通り、ご主人様のサポートを行う者のことです!神具を探すだけじゃなく、ご主人様の潜在力を引き出して戦闘もサポートします!」
「はいはいサポートね…神具を探したり、戦闘のサポートをしたり…ん?」
ヒロトの思考が停止する。
戦闘…?、今この少女は戦闘と言ったのか?なぜそんな言葉が出てくるのか全くもって意味がわからない。
「戦闘って…戦うってこと…か…?」
「そうです!願いを叶えれるのは神具を集めるたびに一つだけなので戦って取り合いになります!」
(嘘だろ…!?本当かどうかも分からないのにそこまでするのか!?)
ヒロトは戦って神具を奪い合っているということを知り驚愕すると同時にこのゲームは危険なことだと瞬時に判断し、身の毛をよだてた。やはりゲームには参加するべきではない、その思いだけが残り、アイリスに言おうとするが
「ご主人様!さっそくですがこの近くに神具があります!行きましょう!」
「えっ…おい!」
ヒロトが話始める前にアイリスは神具の居場所を探知したらしく、情報を伝えると同時に窓から外に飛び出した。
「なんで2階から飛び降りれるんだ…ていうか勝手に行くなよっ!」
ヒロトも慌てて外に出る。アイリスは周りをキョロキョロしながら目的地であろう場所へ歩き始める。
「おい!1人で勝手に動くなよ!ゲームに参加してない人に見られたらどうするんだ!変な噂が立っちゃうだろ!」
「大丈夫ですよ、この空間にはプレイヤーしかいませんから」
「は?どういうことだ?」
アイリスは歩みを止めずに淡々と説明していく。
「今わたしたちがいる場所はご主人様のいる世界ではありません、見た目は同じでも中身は違う。いわばここはご主人様の世界の鏡なんです」
「鏡…だから見た目は同じだけど、ここにはゲームに参加してる…いわゆるプレイヤーしかいないってことか…?」
「おぉ!この状況を瞬時に理解できるなんてさすがはご主人様です!」
頭が痛くなってきた。常識から外れたことのオンパレードにヒロトの脳内はオーバーヒートに寸前になっていた。