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三題噺もどき2

不変

作者: 狐彪

三題噺もどき―にひゃくななじゅうはち。

 


 瞼を上げると。

 そこには変わらず闇が広がっていた。

「……」

 はて。

 もしや私は、未だに目を閉じたままだったかと。

 一度確認もかねて、意識して瞼を落とし。

 もう一度上げる。

「……」

 変わらずそこは、暗闇だった。

 どこまでも、どこまでも、真っ暗で。

 際限なく広がる闇。

「……」

 今一度。

 今度は掌で、指先で、瞼を触りながら。

 落として。

 上げる。

「……」

 ふむ。

 やはり認識どうり、暗闇が広がっているだけで、私はしっかりと瞼を上げているようだ。

 よかった、よかった。

 一生瞼が上がらない呪いにでもかかったのかと思いまでした。

 そんなもの信じて居やしないが。

「……」

 目を開けたという確認ができてよかったが、現状が何も変わらないのは、よくないなぁ。

 変わることは好まないし、何よりも不変を愛しているつもりだが。

 現状を変えることは恐ろしいことだと思ってはいるが。

「……」

 今のこの状態は、あまりよくなさそうだ。

 まるで世界に誰一人として、生きて居なくて。

 1人きりになったことに気づかずに眠ったままでいて。

 そのまま夜が訪れていて。

 それにすら気づかずにぼうっとしているみたいだ。

「……」

 目が覚めたはいいものの、世界はすでに終わってしまっているようだ。

 なんだかなぁ。

 今広がっているこの闇は、夜とは違う暗闇のようでならない。

「……」

 んん…。

 もう、なにがなんだか。

 正直、頭が混乱していて…。

 思考が一向にまとまらない。

 あれにこれにと、考え始めてしまっている。

「……」

 目の前に集中したくとも、できない。

 この状況をどうにかすべきだと、分かってはいるが。

「どうしたらいい」のか、ということを考えることを、頭が拒否している。

「……」

 確かに、不変を好むとはいったが。

 このままであることの方が、よくないということは分かっている。

 変えるべきだと言うことは、痛いほど分かっている。

「……」

 それなのに。

 ただ目前に広がる暗闇から。

 目を反らそうと、他のことを考えている。

 今はそれは関係ない。それは別にどうでもいい。それは今の話ではない。それは違うことの話であって。

「……」

 今私が、立っているのか座っているのか寝ているのかもわからない。

 前を向いているのか後ろを向いているのか見上げているのかも分からない。

「……」

 ただ暗闇が広がっているということだけが分かっていて。

 それをどうにかしないといけないということも分かっていて。

「……」

 あぁ、でも。

 私は、割と昔からそうだな。

「……」

 現状を変えるべきで、そうしないといけないということは分かっているのに。

 どうしても動かない。

 どうにかすべきと、言い聞かせていても、どうもしない。

 不変が好きで。

 変わることが、恐ろしくてたまらなくて。

 心地いいままの場所にいたいと願う。

 その不変を守るためにだけ、動く。

「……」

 もうお手上げだ。

 自分じゃどうにもならない。

「……」

 漫画とかアニメとかおとぎ話とかなら。

 ここで何かの光が見えて、そこに向かっていくとか。

 導く様に飛ぶ鳥でも現れて、それに惹かれるように走って飛んでしまえばいいとか。

 そんな風に、何かが現れるのかもしれないけど。

「……」

 そんなにうまくはいかないし。

 ここが私の思考の中である以上、そんな奇跡は起きない。

 ただ広がる暗闇を、ぼぅと眺めたまま。

 何も変わらないまま。

 特に関係もないことをぐるぐると考えて。

「……」

 そうだな。

 うん。

 そうだ。

「……」

 これは夢だ。

 だから、現状把握とかもしなくていい。

 どうにか変えようとしなくてもいい。

 ずっと。

 ぐるぐると同じことを考えていればいい。

「……」

 どうせ夢なら。

 醒めてしまえば事足りる。

 考えたところで。

 動いたところで。

 何も変わらない。

「……」

 どうせ。

 忘れる。



 お題:夜・鳥・光

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