樹海
こちらは百物語七十九話の作品になります。
山ン本怪談百物語↓
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皆さんは「樹海」を知っていますか?
日本にもありますよね、有名な樹海が。
昔テレビの心霊企画で、有名な樹海へ撮影に行ったことがあったんですよ。
富士山の近くにある有名な樹海です。
女子アナ2人とスタッフ数人。私が解説をしながら心霊写真を撮影したり、肝試しみたいな企画をする予定でした。
時間は深夜0時過ぎ。
撮影は静かに始まりました…
撮影用の小型バスで樹海の近くを走っていると、予定していた場所が見えてきた。
「あそこですよ、あそこから樹海へ入りましょう」
私たちは近くに小型バスを停めると、小さな山道から樹海の中へ入っていきました。
「最初はあそこで撮影しましょうよ」
「あの木が自殺者が続出する謎の木だっけ?」
「Iさん、何か感じませんか?霊とか出そうですかね!」
最初はよかったんですよ。思っていた以上に怖くなくて、スタッフも楽しんじゃってる感じでね。
「あれ、なんすか…あの音…?」
ただ、ここから一気に「空気」が変わったんです。現場にいたスタッフの1人が変な物音に気がついちゃったんです。
「なんだろうね…樹海の奥から聞こえてくるよ…」
その場にいた全員が耳をすませていると…
「ナ……ダ………ブツ………ナム…ビ……ブ…」
樹海の闇の奥深くから謎の音が聞こえてくる。さらに耳をすませていると、スタッフの1人がとんでもないことを言い始めた。
「あそこの闇の奥から聞こえてくるんだよね。女子アナ2人行かせましょう」
この人が恐ろしいこと言うんだわ。
可哀想にね。女子アナ2人にカメラ持たせて声の聞こえる方向へ行かせようって言うんですよ。
私は危険だからやめようって言ったんだけれども、女子アナ2人は最終的に行くことになっちゃった。
「大丈夫かぁ!無理だと思ったらすぐに帰ってこいよぉ!」
そんなこと言いながら女子アナ2人を送り出したわけですが、事態はすぐに急変しました。
「だ、だめです!も、もう無理…!」
女子アナの1人が血相を変えて闇の中から戻ってきた。そして…
「ヤバいです!来てます…来ちゃってますよ…!」
もう1人の女子アナも泣きそうな顔で戻ってきた。2人に話を聞いてみると、先ほどの音がどんどんこちらへ近づいてくるのがわかったらしい。それだけじゃなく、足音や何かを叩くような音も聞こえてきたとか。
「Iさん、さっきの音が大きくなって…」
もうこの時点で耳をすませる必要はありませんでした。
「ナ…ム………ツ…ナム…ブツ……ム…アミ…」
それは音ではなく、何者かの声だったのです。
「これってまさか…『お経』か?」
それは読経のようにも思えました。夜の樹海の中で何者かが大声でお経を読んでいる。普通ありえませんよね。
「ヤバいですよ!これはマジでヤバいですって!」
もうスタッフは全員パニックですよ。
「皆さん落ち着いて。さすがに危険なので今日はもう帰りましょう」
私がそう言うと、スタッフたちは急いで持ってきた機材を片づけ始めました。
(この声の正体は何なんだろう…とりあえず帰る前に写真でも撮ってみるかな…?)
全員が逃げる準備に必死になっている中、私は思わず持っていたカメラを暗闇の中へ向けたのです。そして…
パシャッ!
カメラのシャッター音が樹海の中に響き渡った途端…
「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏」
いきなりでしたよ。
私の目の前から大きな声でお経が聞こえてきたんです。
もう全員パニックになりながら、急いで樹海の外へ逃げ出してきましたよ。
すぐに小型バスの中へ避難しましたが、お経は小型バスのすぐ近くまで聞こえていました…
ちなみに私が最後に撮った写真ですが、暗闇の中に薄黒い髑髏のようなものが写っていましたよ。
この樹海で静かに眠る魂を、私たちは呼び起こしてしまったのかもしれませんねぇ…
作者の山ン本です。
こちらの怪談、元ネタは番組のロケで稲川淳二さんが体験した有名なお話です。
稲川淳二さんといえば「生き人形」が超有名ですが、心霊映像関係ならこれがトップクラスで怖くて好きです…