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木曜日の午後9時、公園のベンチで「楽しい」と呟く


 草木生い茂まくってほぼ森みたいな公園。

 遊具には蔦が絡まっていたり、苔やサビが張り付いていたりと様々だ。

 共通点としては掃除や修理をしなければ使えないこと。


 私が座っているベンチも、元はサビや汚れが酷く座れなかった。。

 けれど、会社をサボるついでに気まぐれに掃除をしてみたら意外と雰囲気が良さげなベンチになった。

 それからは勝手に有り難く使わせてもらっている。


 ここは会社の近く……というか裏手にある破棄された場所だ。

 詳しくは知らないし、これからも詳しくなろうとも思わない。

 だって私には関係ないし。


 隣にはお昼休みが潰れて食べれなかった、冷凍食品詰めまくり弁当。ちなみに自作。

 社畜に自炊も恋人を作る時間も無い。

 これでも買い物という過酷なお出かけを達成したんだから褒めてほしいぐらい。


 内容としては唐揚げ、ミニコロッケ、ミニエビフライ、玉子ふりかけのかかった白米。

 茶色の白のコントラストが暗闇とハエのたかる街灯によく映える。うん、言葉にはしたくないけど何か相乗効果で余計に惨めに感じてくるよ。


 まあ見た目は味とは関係ないし?

 見せる人もいないし?

 揚げ物をたんまり食べ手も文句を言う家族もいない……ちょっと誰かしら私の健康気遣ってくれないかな。

 そしたら、ちゃちゃっと自作のサラダを作ってくれるんだ。


 ……次からはポテサラも買おうかな。ミニトマトも入れよ。

 私が誰かの素敵な恋人としての予行練習をすればいいだけのことだし、うん。


 少し前なら速く帰って愛猫と抱っこしながら食べてたんだけど、今は独り身だし。

 よし、折角こんな雰囲気のあるところなんだから思いっきり満喫しよう。


 空気は良いし、景色も良いし、街灯付近さえ見なければ良いところだしね。

 

 まずは唐揚げから食べよう。

 初手肉、次点で海鮮、その以降はその他の食べ物。

 私の中では決まってる食べ順ルーティーン。

 本来は野菜からが良いらしいんだけど、その理由も忘れちゃったし肉からでも問題無いはず。


 ……うん、冷凍にしては悪くない。

 唐揚げ! ってほどボリュームもガッツリ感も無いけどしっかりお肉の味がして良いんじゃない?


 次にご飯を唐揚げの後味の中に詰め込む。

 これが凄い美味しいんだ。

 え? 次は海鮮じゃないのかって?

 やだなー、ご飯はおかずの合間に食べるんだからルーティーンの中に入るわけないでしょうが。

 

 さらにお次はエビフライ。

 ミニミニのご想像より二回り以上に小さいエビちゃんの出番です。私のルーティーン的には海鮮だからセーフ。

 

 ……これは案外美味しいかもしれない。

 いや実は「しなしなの衣で冷え冷えの状態からタルタルもなしでソースで食べろ? 何言ってんだ」なんて思ってたんだけど、結構いける。

 しかもミニが何個もあるから沢山食べた感があって、満足度が非常に高い。これはリピ確定だな。


 そしてお決まりのご飯詰め込み。

 詰め込みすぎてのどが苦しくなったけど、これがまたいいんだ。

 ふりかけで最低限の塩分が保証されてるから、おかずの後味以上の量を詰め込んだとしても最低保障の美味しさは保ってくれる。

 ここでお弁当のご飯が3分の1ぐらいになったし、良い感じ。地味に計算しながらご飯を詰め込んでたの、誰か褒めてほしい。


 最後、ド安定コロッケ。

 説明なんて要らないよね。

 美味しすぎ、しなしな衣なんて関係ないジャガイモのホクホク感と甘みが最高に偉い。

 ソースの塩分が衣に浸透してるお陰で、実質これだけでご飯とおかずの役割を果たしてる。


 だからといってご飯を詰め込まないなんてことはない!

 ふりかけとソースの塩分を頼りに、ジャガイモの甘みを堪能しながら食べる至福の時。


 ふう、ごちそうさま。

 口の中が凄いこってりしてるけど、美味しさがまだ残ってるって考えると口角が上がってくる。

 爽やかさなんて草木匂いの景色、夜の涼しさでもう賄われているからサラダなんていらないかも。


 このまま寝ちゃいたいけど、残念ながら帰宅というイベントが待っている。

 お腹も苦しいし、ちょっと休んでから帰ろう。

 鞄の中から水筒を取り出して、ほぼ90度にあおった。


 いや、ないじゃん。

 駅までの道に自販機あるかな、いや多分あるんだけど。

 麦茶とか水じゃなくて、緑茶が良いんだよね。あの苦味が私の年頃に丁度良い。


 食休みも終わってないけど、喉乾いたまんまも嫌だし早めに行くか。

 来週にらベンチも少し汚れてると思うけど、今回ほどじゃないはずだ。

 次は水拭きしてあげるからちょっと待っててね、ベンチさん。


 そうだ、ちょっとこの景色エモいし撮っとこ。

 満月でも三日月でもない微妙な形の月と、伸び切った雑草に使えなくなった遊具。

 センターに私が掃除した小綺麗なベンチを。


 うん、適当に『楽しい』でいっか。

 やっぱりいつもと違うことした日は充実した感じする。


 そうして私は苦しいお腹を抱えながら帰宅した。



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