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メルティとレイモンド 3

その後、何度か晩餐やお茶の時間を共にしたメルティとレイモンド。(もちろんカイル抜きでふたりでお茶の時間を共にすることも多かった。)

そんなふたりは私的な場では互いに名前で呼び合うようになっていた。


もうすぐデビュタント。つまり第一王子ルドルフが成人する。今年中にはルドルフの婚約者と立太子の発表が予定されているとメルティは父親から聞いていた。


「レイモンド様、もう少ししたら公爵様になられるのですね?」

「そうだね。甥であるルドルフが成人するタイミングで王籍を抜けることになっているんだ。

本当は立太子の儀まで待つように周りからは言われていたけど、全部の意見を跳ね除けさせてもらった。(しがらみ)が多すぎて窮屈なんだ…

それに公爵になるからとは言っても、領地は今でも持っているから住居が変わるくらいで、俺自身にとっては生活は変わらないとは思っているよ。」

「そうなのですね。あの少し、変なことをお伺いするのですが、レイモンド様からみてルドルフ殿下はどんな御方なのでしょうか?」

「ルドルフ?メルティは彼のことが気になるのかい?」

「えっ?いえ…気になるとはちょっと違うような…

私は筆頭公爵家の令嬢ですから、周りからは殿下の婚約者候補の筆頭なんて言われてしまうのです。お会いしたことがないのに婚約者だなんて…

それが政略結婚というものだと言われてしまえばそれまでですが。」

「そうなるよな。うーん…ルドルフは頑固なところがあるが、根は真面目だと思う。王子教育にも積極的で講師たちの評判もいいと聞く。

年齢的に甥というよりは弟みたいな感じで昔はよく一緒に教育を受けていたこともあるから、()()()()()()()彼の真面目さは俺が保証するよ。」

「そうなのですね。真面目な御方なら…」

「メルティは王太子妃になりたいのかい?」


レイモンドはメルティに優しく問いかけた。


「正直に申しますと、私はなりたくありませんわ…」


俯いたメルティにレイモンドが「どうして?」と優しく問いかける。

彼女は意を決して顔を上げ、レイモンドを見る。


「私、お慕いしている御方がおりますの!」

「そうなのかい?メルティに想われるなんて羨ま…おっと…すまない…」


真剣な様子にメルティの真意に気づいたレイモンド。


「あの、レイモンド様、私…!!」


メルティは出会ってからずっとレイモンドのことを…

しかし、そんな彼女に神妙な面持ちのレイモンドは告げた。


「メルティ、その人には想いを告げないほうがいい。」


それは酷く冷たい声だった。レイモンドと出会ってから初めて聴くような声にメルティは戸惑う。


「……」


メルティは泣きそうになるのを堪える。


「メルティ、今日はこれで失礼するよ。」


スッと立ち上がるレイモンドは更に言葉を続ける。


()()ごめんね…狡い俺を許してくれるかい…?」


互いに想い合っているのに、年齢が、王弟としての立場が、そして王子の婚約者筆頭という立場がいろいろな柵が邪魔している。


「…いや…です…絶対に…許しませんわ…」

「メルは我儘だね…」

「レイモンド様は…意地悪です…」

「うん。俺は君にだけ意地悪だよ…。」


少し時間が経ってから、メルティは心を決めた。


()()殿()()、玄関までお送りしますわ。」


出会った頃に戻ろう…気持ちは押し込めようと…


()()()()()ありがとう。」


レイモンドも心を決めた。

メルティへ気持ちは告げてはいけない。彼女はデビュタントしてもっと広い世界を見るべきで、それを大人の事情で狭い世界に閉じ込めてはいけないと…



「それでは失礼するよ。」

「はい、殿下。お気をつけて。」


馬車に乗り込むレイモンドの姿を目に焼き付けるメルティ。


「(きっとレイモンド様はもう私には会いに来られないわ…デビュタントすれば私にも婚約者ができるもの…)」


馬車の窓から顔を覗かせたレイモンドは優しく微笑んだ。

メルティもそれに応えるように微笑む。

馬車が見えなくなるとメルティの頬を涙が伝う。


「お嬢様…」


アンが心配そうにメルティに声をかける。


「今日はもう休むわ。お父様たちには誤魔化してもらえる?」

「承知しました。では、お部屋へ戻りましょう。」


メルティは数日部屋へ閉じこもり、心の整理をした。

部屋から出たメルティはとてもすっきりした表情をしていた。そんな彼女を家族全員が温かく抱擁する。

しかし、シスコンのカイルは「あの野郎…!!」と殺気立っていてメルティが宥めるのに時間がかかったのは言うまでもない。

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