メルティとレイモンド
一話の前半の続きです。
メルティは会場を出て馬車へと向かう。
「メルティ嬢。」
そんな彼女に一人の男性が声をかけた。
「スペンサー公爵様、ご機嫌麗しゅう。」
レイモンド·スペンサー。国王の歳の離れた異母弟でありスペンサー公爵家現当主である。
因みにメルティの兄であるカイルはレイモンドの側近を務めている。
「メルティ嬢、屋敷へ帰るならば送ろうか?」
「いえ…私と一緒にいては公爵様にご迷惑が…」
レイモンドは優しく微笑むとメルティの耳元で囁いた。
「メル?俺が君を送りたいんだ。」
「れ、レイモンド様!?」
「あっ、やっと名前で呼んでくれた。」
「もうっ!」
メルティは紅い頬を膨らませレイモンドを見る。
「はは。ごめんね。久しぶりに君と話せると思ったらついね。」
「相変わらず意地悪ですわ…」
プイッとそっぽを向くメルティの頭をレイモンドは優しく撫でる。
「行こうか?」
「はい。レイモンド様…。」
メルティとレイモンドは久しぶりの再会だったが、別れる前の雰囲気に戻っていた。
「あの、カイルお兄様はご一緒ではないのですか?」
「カイルには仕事を頼んであるんだ。」
「そうですか…。」
カイルは仕事で他国へ行くことも多くあり、なかなかコーラル家には帰って来ないのだ。
「カイルに会いたかったかい?」
「久しぶりに会いたかったな。と思いました。」
「妬けるね。」
「えっ?」
「俺だってメルティに久しぶりに会えたのに、君の喜び薄くないかい?」
「そ、そんなことは…」
「はは。慌てている君も可愛いな。
カイルには近々長期の休みを与える予定だから、そのときにでも話しをするといいよ。」
「はい。」
「そう言えば、レイモンド様はどうしてあの場に?
パーティに招待されていたとしてもとっくに始まっていましたのに…」
「招待されてはいないよ?」
「では何故?」
「君に会いたくて。」
「からかってます…?」
「本気だよ?メルに会いたいから、招かれてもいない甥っ子のパーティの会場近くで待っていんだ。」
「レイモンド様にお待ちいただかなくても…」
「そうだけど、俺から会いに行くのに意味があるんだよ。とても久しぶりに堂々と君に会えると思ったら、嬉しくてね。」
「ふふ。何だか私も嬉しいですわね。そうですわ、レイモンド様。」
「ん?」
「もし宜しければ我が家でお茶でもいかがですか?」
「メルティから誘ってくれるなんて嬉しいな。」
「私ももう少し貴方様とお話ししたいのですわ…。」
「理由も嬉しいし、可愛い。」
メルティとレイモンドが仲睦まじい様子で一緒に帰った姿を、多くの王宮の侍従や侍女が目撃することになった。
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ルドルフから婚約破棄を言い渡されたメルティは、表向き傷心しているので領地で療養することになり、コーラル領でゆっくりと過ごしていた。
「メルティお嬢様、お客様でございます。」
コーラル領の執事長が来客を報せる。
「爺や、今日は誰ともお約束はないはずよ?」
「おや?左様でございますか…
では、スペンサー公爵様にはお帰り…」
「行くわ!」
ソフィアから勢いよく立ち上がるメルティ。
「おやおや。お嬢様、その動きは淑女にあるまじき…」
「爺や、公爵様をお待たせしては悪いわ。お説教ならまた今度聞くから。」
「応接室へご案内してまいります。」
「ありがとう。アン、少し髪を整えてくれるかしら?」
ウォルターは部屋を出ていき、メルティはメイドに身嗜みを整えてもらってから、応接室へ向った。
「レイモンド様、ご機嫌よう。お待たせして申し訳ありません。」
「やあメルティ、こんにちは。予定より早く着いてしまったようだ。」
「予定でございますか?」
「あれ?カイルから聞いてない?」
「お兄様からですか?少し前にお手紙で元気でおられると伺ってはいますが、それ以外は…」
「メルティ、申し訳ない!
カイルに近々隣国へ行くときに寄らせてもらうから、本邸の公爵と領地のメルティへ伝言を頼んだんだ。
ここは物資を補給するのにも丁度いいから。だが、伝わっていなかったようだ…」
「そうでしたの。伝言がなくても構いませんよ。
それに、お会いできてとても嬉しいですから…。」
「君はまた、可愛いことばかり言うんだね。」
「ふふ。レイモンド様、晩餐をご一緒することは可能ですか?」
「ああ。勿論だ。君と晩餐するのもとても久しぶりだね。」
「そうですね…もう6年程前でしょうか…?」