レイモンド·スペンサー 3
メルティと会わなくなって長い月日が経過し、彼女は学院を卒業する年齢に達していた。
レイモンドは彼女のことを忘れようと諸外国を周り外交に励んだ。と思いきや、時折カイルにメルティの様子を聞いたり、彼女を偶然見ることができるかもしれないと行きたくもない王城へ足を運んだこともあった。カイルはその様子を見て女々しいと思っていたが、レイモンドの気持ちは分かっていたので見守っていた。
そんなある日。
「閣下、よろしいでしょうか?」
外交が落ち着き久しぶりにスペンサー邸で執務をしていると、カイルが入ってきた。
「カイル、どうした?前に頼んだ仕事は…」
「とっくに終わっています。今は友人として話しがある。」
「分かった。」
レイモンドは手伝いの者たちを全て休憩させ、カイルと向い合せに座った。
「何かあったのか?」
カイルからレイモンドに友人として話しがあるのは珍しかった。
「驚かないで聞いてくれ…」
「勿体ぶるな!さっさと…」
「メルティがルドルフ殿下に婚約破棄されそうなんだ…」
「ど、どういうことだ!?」
レイモンドは勢いよく立ち上がる。
「落ち着け。ルドルフ殿下は学院内で偶然出会った男爵令嬢に懸想していると、末端の側近が俺に伝えてくれた。
彼はコーラル公爵家と縁がある伯爵家の嫡男で、年は離れているが仲がいいんだ。だから、これは正確な情報だ。」
「婚約破棄だと…ルドルフは何を考えているんだ…
メルティだぞ?この国の筆頭公爵家の令嬢であり、パーシヴァル帝国の皇帝の血をも引いているんだぞ?
もし、婚約破棄なんてしようものなら…」
「昔も言ったが、メルティがパーシヴァルの血を引いていることは極限られた人物しか知らない。
それと、婚約破棄の話はルドルフ殿下の周りと件の男爵令嬢と俺しか知らない。が、父上も学院内に独自のルートを持っているから殿下が男爵令嬢に懸想していることは知っている可能性がある…」
「コーラル公爵が動かないということは何か考えがあって、静観している?」
カイルは頷く。
「なあカイル…変なことを言ってもいいか?」
「どうした?」
レイモンドが何を言うのか分かっているのかカイルはニタニタしている。
「お前、その顔!俺が何を言いたいのか分かってるんだろ!?」
焦っているレイモンドをカイルが笑い飛ばす。
「ぶっ!だって、レイが慌てているのが可笑しくて!ははは!いやー、普段冷静なお前が焦るなんてことはないから、楽しくて!ははは!」
「はあ…お前、落ち着いたら仕事漬けにしてやろうか?」
「閣下の無理難題を遂行してこそ側近ですが?そろそろ俺もこの立場を誰かに譲って自分の領地のことだけしたいなー。」
「はは。そうだな。カイル、俺は決めたよ。そのためにはどうすればいいか分かるな?」
レイモンドはメルティに改めて気持ちを伝える決意をした。
「そのためにはルドルフ殿下にはそのまま男爵令嬢と懇意にしてもらわないといけないね。」
「ああ。その伯爵令息が末端ではあるが側近なのだから、上手く誘導できるな?
会場はルドルフの誕生パーティ。あれは私的なものだから陛下たちや大人は参加しないからな。」
「そうだな、伯爵子息と話しを詰めておこう。それとお前に忠告だ。ルドルフ殿下の最側近の侯爵子息は殿下と男爵令嬢の仲を応援する振りをして、メルティと婚約したがっている。」
「ちっ!まあ、問題ない。メルティが婚約破棄を言い渡されたら直ぐに攫うから。」
「兄の前で攫うとか言うなよ!」
「さて、やることは山積みだな。そのためには目先の仕事を片付けるぞ。」
レイモンドとカイルはメルティがルドルフと無事?に婚約破棄できるように準備を開始した。
伯爵子息はルドルフと侯爵子息を誘導しパーティで婚約破棄するように仕向けた。
またカイルには婚約破棄後にメルティを誰の目にも晒されないように領地へ行けるように手筈を整えてもらったり、婚約破棄の書類を公爵代理として作成してもらったりした。
メルティへの気持ちだけで、レイモンドは頑張れた。
毎日忙しいのにも関わらず、どこか機嫌がいいレイモンドをカイルは生暖かい目で見るのであった。




