娼館に落とされた令嬢が王の寵妃になるまで〜
寂しかった少女は温もりを見つけました。幸せになっても良いですか?のマリアンヌ編です。
「何故こんな事になったの?お父様やお母様、お兄様は無事なの!?」
マリアンヌ・エビネスは侯爵家の娘として生まれ、親と年の離れた兄から有り余る愛情を一身に受け育っていた。14歳の誕生日を数日後に控えた日、侯爵家に沢山の兵士が押し寄せた。
「セバス!マリィを逃してくれ!」
父は護衛騎士のセバスに命令を下した。
「私の命に替えましても!」
セバスも侯爵の命令に従い、裏庭からマリアンヌと一緒に抜け出そうとしたセバスだったが、待ち伏せしていた兵士に斬られ一命を落とした。マリアンヌは兵士に捕まってしまった。
両親達もマリアンヌ同様捕まっていた。
この時、国王夫妻と宰相夫妻は隣国へ居た。
国に帰って来た時にはエビネス侯爵夫妻と後継者であるマルスは毒殺され溺愛されていた愛娘のマリアンヌは奴隷商に引き渡され行方しれずになっていた。
この事態を聞き、激怒した国王とエビネス侯爵の親友でもあった宰相が事件の詳細を再度調べ上げ、エビネス侯爵を疎んでいた、シーラム侯爵の策略で無実の罪を着せられ捕まえ、毒殺した事を突き止めた。もちろんシーラム侯爵家は取り潰され侯爵も処刑された。
その後もどれだけ探しても、マリアンヌの消息は掴む事が出来なかった。
マリアンヌは奴隷商人に引き渡された後、人買いに買われ、見目が良かった為西の森の娼館に売り渡されていた。
ゴミの様に娼館に引き渡されたマリアンヌはこれからどうなるのか恐怖で声も出なかった。
座り込むマリアンヌに娼館の客である酔っ払いの男がマリアンヌに近寄った。
「おい、座り込んでるなら俺の相手をしろ」
そう言うとマリアンヌを掴もうとした。その瞬間
「旦那様、私がお相手しますわ。そんな薄汚れた小娘より私にしてくださいな」
娼婦は男に甘えた声で擦り寄った。
「よし、今日はお前を可愛がってやるか」
マリアンヌを助けた娼婦は他の娼婦にマリアンヌを連れていく様に合図した。
合図を受けた娼婦はマリアンヌを急いで食堂に連れて行った。
訳が分からず、ただ、恐怖で震えるしかなかったマリアンヌだった。
「怖かっただろう?もう大丈夫だよ。安心しな」
「シェリルさん、この子に何か食べ物分けてあげて」
「了解。お嬢ちゃん、そこの椅子に座って待ってな」
シェリルが差し出してくれたのは野菜クズで作ったあったかいスープだった。
あの事件以来、ゴミの様に扱われ、温かいスープを一口、口にした途端いままで緊張していた糸が切れたかの様に涙が溢れ出た。
シェリルも娼婦もマリアンヌの様子を落ち着くまで黙って見守っていた。
泣くだけ泣いて落ち着いたかい?
「はい…」
「お嬢ちゃん、良い家のお嬢様だろう?なんでこんな所に連れてこられたんだい?」
マリアンヌは皆に分かる範囲で説明した。
「そっか。貴族同士の揉め事だね。お嬢ちゃんには辛いだろうが、ご両親も兄妹も生きちゃいないだろうね」
その言葉に涙が溢れ出ていた。
「辛い事だけど、お嬢ちゃんは生きてるんだ。先を見るしかないよ。それとも絶望して死にたいかい?」
「生きたいです。家族の為にも、死ねません!」
「今はここで生きるしか無いよ。でもさ、私達はあんたみたいな子供に客を取らせるつもりはないからね。綺麗な顔は隠しようがないから、いつも煤で汚して俯いて掃除するか、厨房に隠れとくんだよ」
「そうだよ。私達に任せな。お嬢ちゃんくらい食わせてやるし、守ってやるから。安心して此処に居たら良いよ」
娼婦達の言葉に感謝の涙が止まらなかった。
娼婦達は本当に優しかった。たまに森に捨てられる子供を保護して面倒を見たりもしていた。
此処に来て3年が経った頃、客が持ち込んだ流行り病に娼婦達は次々倒れていった。このまま時間だけが過ぎれば死が迎えに来るだけだった。そんな時娼館に一人の少女が入ってきた。倒れている娼婦達を見つけ回復魔法を使い病気を治していった。
誰もが天使だと思っていた。でも少女は天使では無く、ただ愛に飢えた幼い少女だった。
ディアナは何度も何度も娼館に足を運んで、薬や食料などを届けてくれた。
ディアナが娼館に来て1か月経った頃、娼館のオーナーが変わり新しいオーナーが来る事になって表に出て皆で待っていると馬車から若い男性が降りてきた。その後ろにはディアナが居た!
男の説明ではディアナが新しいオーナーで娼婦の仕事をしたく無いものは別の仕事に就くことが出来るとのことだった。私には娼婦の仕事を続ける者達に教養や礼儀作法を教えてほしいと言われた。
娼館の横には捨てられて娼婦達が保護した子供達や娼婦自身の子供達の為に孤児院も作った。
そこでは教師や医者も護衛も常駐して優秀な子供達は此処から巣立ち高位職に就いていた。
ディアナ自身、時間がある時は孤児たちの世話もしていた。
ここに居る皆が私の家族だからと言って。
私の本当の名前と娼館に来た経緯はアデーレにもディアナにも伝えていた。
万が一追手が来て迷惑をかけてしまうのが嫌だったから。追手が来たら私を切り捨ててくれと。
「貴方はマリィよ。私の家族。私達が守るわ」
ディアナは笑い飛ばしてくれた。
ディアナが、オーナーになりニ年が過ぎた頃には娼館は貴族が出入りするほど箔を付け中には側室に迎えられる者もいた。
そんな時、娼婦と閨を共にするわけでも無く、何度も娼館に訪れる中年貴族が居た。
女主人に20前後のマリアンヌと言う娼婦が居ないか尋ねた。
女主人にはマリアンヌを、探すものが居たら、居ないと答え、直ぐにディアナとアデーレに知らせる様に伝えていた。
男の正体を突き止めると、この国の宰相である、ロゾォ・ファラモス公爵だった。
宰相が黒幕なのか?と警戒し、調べると、宰相はマリアンヌの父と親友で陥れた者達を国王と粛清後ずっとマリアンヌを探していたのだった。
それでも不安はある。直ぐにマリアンヌと対面させる訳にはいかない。
アデーレ商会として宰相と対面し、大丈夫と確信が持てた上で娼館で対面させる事になった。
「マリアンヌか?マリィなのか!?」
娼館でマリアンヌの後ろ姿を見つけた宰相は声を上げた。
「おじ様…?」
父が生きていた時美味しいお土産を持って屋敷に来ていた、身に覚えのある父の友人。
「やっと、やっと会えた!ずっと、ずっと探していたんだ!」
私を……?
大変な時に助ける事が出来ずすまなかった。アーロン達を殺した者達はもう居ない。安心して良いんだ
父様達の仇を撃ってくださったんですね
勿論だ!国王も憤慨されていた。
ありがとうございます
マリアンヌは終わったのだと、力が抜け座り込んだ。
これからはワシが面倒を見る。我が家に来てくれないか?
私は……
宰相の言葉に戸惑ったマリアンヌはディアナの方を見た。
マリィ、貴方は前を向くべきよ。此処では出来ない事を此処から出てすべきじゃない?
自分より年若い少女が背中を押してくれる。いままでこの少女に守られていたのだとも実感し、これからはこの少女とこの森の人達を守るのだと胸に誓っていた。
ディアナ、マリアンヌをいままで守ってくれて感謝する
宰相様、私の力ではありません。マリアンヌを思う皆のおかげです
困った事があればいつでも言ってくれ。必ず力になる!
ありがとうございます
宰相の言葉に子供らしい笑顔で答えた。
マリアンヌの無事は国王にも伝えられ、マリアンヌは宰相の妹の養女になり、国王に謁見した。
「良く無事でいてくれた。マルスもきっと喜んでいるはずだ」
マリアンヌの姿を見た国王の瞳は潤んでいた。
「マリアンヌ俺と家族にならぬか?年若い其方には俺では不服かもしれないが……。一昨年王妃が亡くなり息子も寂しがっているのだ」
国王の言葉にマリアンヌは驚いていた。
「国王陛下、父母や兄を王城の一角に埋葬して下さっていると宰相様からお聞きしました。感謝しています」
「マルスとは友だった。その友を救う事が出来ず、申し訳なかった」
国王はマリアンヌに頭を下げた。
そんな国王の手を取り
「国王陛下のお側に上がりたいと思います。そしてハルク様のお力になれればと……」
マリアンヌの返事に国王は周りも気にせずマリアンヌを抱きしめていた。
時間が経つごとに二人の愛は深まっていき、マリアンヌは寵姫と呼ばれる様になった。
初めは距離を置いていたハルクも裏表ないマリアンヌを徐々に母と慕う様になっていた。
そしてマリアンヌは恩のある女の子の話をよくしていた。
自分が此処に居て、国王と貴方を愛せるのはディアナと言う少女のお陰なのだと。
「マリアンヌ母上、ディアナとはどんな少女なのですか?」
「ディアナは親に愛されなかった子。でもそれでも負けずに生きて、その上私達を助ける勇気を持った子ね」
「そんな子が居るんですね!僕のお嫁さんになってくれたら良いのに」
「残念ながら先日婚約が決まったそうなの…。でもディアナが辛い思いをしたら手を差し伸べて助けてあげて。約束してくれる?」
「はい!もちろんです!母上の恩人は絶対に助けます!!」
♢♢♢♢♢♢♢♢♢
マリアンヌが寵姫となり、ハルクの母になった後、ディアナが殺人未遂の罪でカールソン侯爵邸の地下牢に入れられ尋問されていると報告が入った。
ディアナがそんな事をするはず無い事はマリアンヌは分かっていた。冤罪だと。その後アデーレから連絡が入り、ディアナを娼館で保護している事を知った。
すぐにでも娼館に向かいたかったが、気軽に動ける立場では無い。辛かった。
「俺が行きます」
「ハルク…?」
「俺がディアナの様子を見てきます。」
ハルクは隠し通路から時々森に行きディアナに会っていた事をマリアンヌに話した。
「ディアナをお願いね」
♢♢♢♢♢♢♢
ディアナに会って城に帰ってきたハルクは父である国王とマリアンヌと宰相に経緯とディアナの容態を説明した。
陥れた者も切り捨てたディアナの父親も絶対に許さないと訴えた。
これからは自身がディアナを守るとも。
「殿下、それならば、ディアナ様を我が娘としましょう。戸籍を替えるのは難しくはありません。その上でディアナを婚約者にしては如何ですか?我が家の娘なら正妃にもなる事は可能です」
「そんな事が可能なのか?」
「伊達に長く生き宰相をしてはおりません。お任せください。その上で断罪致しましょう。ディアナ様は私の恩人でもありますから。ディアナ様の敵は私の敵です!」
悪の根源であるアンリと両親、キャロルと両親、そして証人であるフレン子爵を呼び王宮で断罪した。
ディアナを捨て切った父親のレーリア伯爵はこの謁見前に爵位剥奪を下されていた。
「ディアナ、やっと家族になれるのね。嬉しいわ」
「マリアンヌ様」
「今まで通りマリィと呼んで頂戴」
マリアンヌはディアナを抱きしめ髪を撫でた。
「私達家族になるのね。本当に嬉しい」
3日後ディアナは宰相の娘としてハルク王太子の婚約者として紹介された。半年後にはハルクとディアナの結婚式が執り行われた。
国王一家の仲の良さは国内外に知れ渡り王宮は笑い声が絶えなかった。
沢山の作品の中からこの作品を読んで頂きありがとうございました。
評価頂けたら作品作りの励みになりますので、よろしくお願いします。
寒くなりましたがお互い体に気をつけましょう^_^




