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おっぱいとしか喋れなくなった勇者に世界は救えるのか?  作者: らいとふっと


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82/89

決意の、旅立ち

 

 俺はガックリと項垂れていた。

 そんな中、サラ姉がルーネに声を掛ける。


「もう現実の世界に戻してくれて良いわ……牛チチ魔王」


「そう? それじゃあ、仰せのままに……」


「なっ! ま、待ってくれルーネッ……!」


 止めようとした俺の声も虚しく、視界がブラックアウトする……!




 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢




「…………おっ……ぱ……い?」


 次の瞬間。


 俺の目の前を横切ったのは赤黒い甲冑……悪魔ゼパル!

 ハッとする間も無く、悪魔はサラ姉へと凄まじい速さで向かっていた……。



「おっぱいッ……!?」


 恐るべき速度でゼパルの剣がサラ姉を薙ぎ払う!


 しかし、サラ姉は見事に身を躱す……!

 その動体視力と身のこなし、まさに最強のアサシンだった。

 わずかな一瞬で身を翻し、後方に距離を取る。


「残念だけど、今の私では悪魔(アンタ)を倒せない……」


 落ちていた愛用のナイフを拾いながら、悪魔ゼパルと対峙するサラ姉。


 間髪を入れず、再びゼパルが猛進して行く!


「だけど……攻撃パターン、射程……」


 見切ったかの様に、ゼパルの突きを回避。

 だが、瞬時にゼパルの腕が巨大化してサラ姉に迫る!


「一度見ているから……避けられる……!」


 ゼパルのフェイント攻撃さえも難無く避けている……!



「す、凄い……! サラさん……まさか、ここまで……!」


 横に居るシグネが驚嘆する程、サラ姉の動きは尋常ではなかった。

 シグネがまったく歯が立たなかった悪魔ゼパル。

 その凄まじき攻撃を回避出来る者など、世界広しと言えどサラ姉しか居ないのではないかと思えてしまう。



「止めてよ、ゼパルさんっ! サラは敵じゃないよ!」


 サラの背後に立っているティアが必死に叫ぶも、ゼパルの攻撃は止まらない。

 それでもサラ姉は(ことごと)くゼパルの斬撃を見切り、躱し続けている……!



「おっぱいッ! おっぱい、おっぱいッ!」


 当たり前だが、現実では俺の呪いも継続していた。

 何を口にしても、発音するのは同じ単語。



「あの戦いを止めれば良いのですよね、クレイ様?」


「おっぱいッ!?」


 まるで意思が伝わったかの様に、ナリアが俺に微笑み掛ける。


「おっぱい! おっぱいッ!」


「ウフフッ、この聖女ナリアにお任せ下さいませ……」


 サラ姉とゼパルに向けて歩み始めるナリア。

 そして、手を(かざ)すと……!



「おっ……ぱい……!?」


 ゼパルの動きが停止する。

 ナリアはいったい何をしたのか?



光神の拘束(ゴッド・バインド)……全知全能の神の力です……が、長くは持ちません。 私の精神力が尽きる前に、此処からお逃げになって下さるかしら……サラさん?」


 顔を歪めながら、そう語るナリア。

 いつもの余裕ある彼女とは違い、苦痛が滲み出している表情。

 それ程までに悪魔ゼパルは強大な力を持っているのだろう。



「判った……今はそうさせて貰うわ。 だけど、次に会った時はアンタも殺すわよ、私……」


「フフッ……その時は、返り討ちにして差し上げますから」


 ナリアと言葉を交わすと、サラ姉は真っ直ぐにマノンとイセルナに向かって行く。



「マノン、イセルナ……アンタ達も一緒に来なさい」


 サラ姉の意外な言葉に、全員が目を丸くする。

 果たして、どういう事なのだろうか?



「サ、サラお姉ちゃん……?」


「アンタ達二人は、気の迷いって事で見逃してあげる。 その代わり、私の修行に同行しなさい。 ついでに、マノンの魔力を元に戻す(すべ)も捜して、クレイの呪いを解く」


 唖然とするマノン。


「わ、私も……なのですか……?」


 恐る恐る、イセルナがサラに訊くも……。


「アンタを残したら倫理的に駄目でしょ! 旅の間、将来の姉がみっちり教育してあげる」


「でも、城に戻らないと……」


「だからッ! 近親相姦なんて許さないって言ってんの!」


 うわ、姫君の頭を(はた)いたよ、この人……。


「ひっ!?」


 しかし、姫君まで一緒に連れて行くなんて……いくら何でも、そこまでする?

 だが、サラ姉の凄みに誰一人として何も言わない。



「じゃ、暫くの間……待っててね、クレイ」


 最後に俺の側に来ると、そう囁きながら頬にキスをしたサラ姉。


 そして、マノンとイセルナの腕を引っ張りながら歩み出した。

 その姿が見えなくなるまで、俺は何も出来ずに見ているだけであった……。



「おっぱい……」


『サラ姉……』と呟いた筈だったが、やはり俺の言葉は変わらない。

 こうして、三人が立ち去ってしまった。


 程なくしてゼパルの姿も消え、聖なる力で拘束していたナリアが大きく息を漏らす。

 かなり精神力を消耗している様だ。



 そんな中で、現実に戻ってから沈黙を続けているルーネの嗤い。

 俺はまったく気付く事もなく……。


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