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おっぱいとしか喋れなくなった勇者に世界は救えるのか?  作者: らいとふっと


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改竄されし、想い人

「我が名は大悪魔ゼパル。 ティアよ、現在のところ汝と我は正式な契約を結んでいない」


 自ら馬鹿だと進言したティアに対し、若干ではあるが砕けた言い回しに変えた悪魔ゼパル。



「言わば、仮契約の状態なのだ」


「仮、契約……?」


「そうだ。 正式な契約を結べば、我を自在に召喚し、この力を思うがままに操る事が出来る様になるのだ」


 ティアに背を向けたまま語りながらも、その巨大化した掌はジャイアントワームを易々と引き千切る。

 まさに巨人族にも匹敵するであろう、人知を超えた桁外れの力である。




 ティアと謎の人物、二人の会話を聞く事となってしまったダバル。


「あ、悪魔だと……?」


 ダバルが地中より呼び寄せたクロウラーとジャイアントワーム。

 その二体の巨大な怪物を瞬く間に葬った者は、自らを悪魔ゼパルだと名乗っている……。

 あまりにも突飛な信じがたい内容であった。


 魔王軍に於いても、悪魔を使役する事は多々有る。

 その大半は、レッサーデーモンと呼ばれる下級悪魔。

 また、上級種たるグレーターデーモン、アークデーモンも少数ながら存在している。

 その全ては、聖女ナリアによって全滅してしまったのだが……。


(このゼパルなる悪魔……人間に近い姿をしているが、アークデーモンなのか?)


 そう考えながら、ダバルは次なる刺客を準備し始めていた。





「契約って……アタシ、お金は持ってないんですけどぉ……」


「人間世界の通貨など、我には不要」


「じゃあ、どうすれば良いんですかぁ……あ、アタシの身体で?」


「それも要らぬ。 我の本来の力は、汝が想いを馳せる男子との仲を成就させる事」


「アタシが、想いを馳せる……男子?」


 ティアは自分が好きな人を想い浮かべようとした。

 だが、すんなりと頭に浮かんでは来ない。



(あれっ? アタシが好きな人って……?)


 ティアが交際していた男。

 勇者クレイに托卵して貰う様に言いつけた、偏った性癖を持つ人物。

 本来ならば、ティアが好きなのは彼だった筈なのだが……。


 今のティアには、彼の顔すら思い出せない。

 そもそも彼を覚えているかさえ、記憶は曖昧だった。


 その理由こそ、実はマノンの催眠術によるもの。

 悪魔ゼパルと契約を結ばせる為、ティアが好きな人の記憶を意図的に変更したのである。

 サラ、シグネ、ナリア、ルーネの誰かが魔王として覚醒した際の対抗策として。

 正確には、暴走しがちなサラを諌めて貰う為……といったところだが。



「アタシの好きな人は……クー君……です」


 仮契約状態のティアが別れを告げた後、復縁を迫ろうとした男はゼパルによって始末された。

 これこそが、街で起こった猟奇殺人の真実。



「了承した。 その想い、必ず成就させる事を約束しよう。 但し、ティアは子を身籠る事が不可能となる。 それこそが我との契約条件となる……」


「えっと、ゼパルさんの力で避妊してくれるんですか? 避妊薬とか要らなくなるの……?」


「その通りだ」


「じゃあ、契約します!」


 軽いノリで正式な契約を了承するティア。

 今後、彼女は絶対に妊娠が出来ない身体となってしまうにも関わらず。

 元娼婦であるが故の悲劇だった。

 いや、ティアが馬鹿であるが故なのかもしれない。




「フン、何だか知らぬが……下らない話は終わりにして貰おうか」


 二人の会話に割り込むダバル。


 彼が身に纏うマントを開く。

 そこには、無数の魔蟲が蠢いていた。



「俺は身体の中に数億の魔蟲を飼っていてなぁ……」


 蛆が湧いているかの様に、無数のミミズの様な蟲がダバルの口や鼻、耳から這い出し始める。



「ひぃっ!?」


 ダバルの身体に宿る、(おびただ)しい数の蟲。

 凄まじい気持ち悪さに、ティアは顔を覆う。

 先程から失禁し続けたのもあり、今度は漏らすものが彼女の膀胱には残っていなかった。



「コイツら、常に飢えている肉食でなぁ……。 人間だろうが悪魔だろうが大好物なのだよ」


 ダバルの身体中から這い出て来る無数の魔蟲。

 見るも悍ましい姿となりながら、ダバルは下品な嗤いを浮かべる。



「ティアよ、我に命じよ。 この怪物を倒せと……!」


「へっ? あ、はい……。 それじゃ、やっつけて下さい……?」


 ティアが返事をした直後、ダバルの身体から放たれた魔蟲。


 そして、勝負は一瞬で片がついた。



「は……がっ……?」


 次の瞬間、ダバルと無数の魔蟲の全ては肉片と化していた。

 その肉片は紫の炎に包まれて燃え始める……。



「我を倒したくば……ベルゼブブでも呼ぶべきであったな、哀れな蟲使いよ……」


 足元で燃え盛る肉片を見下ろしながら、そう呟く悪魔ゼパル。

 こうして呆気なく、魔王麾下の四天王の一人、魔蟲使いダバルは倒された。



「えっ? もう終わった……の?」


 茫然とするだけのティア。

 ゼパルが何をしたのか、その目で追う事すら出来なかった。

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