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おっぱいとしか喋れなくなった勇者に世界は救えるのか?  作者: らいとふっと


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サラ姉、ガクブル

 サラの眉間を大粒の汗が流れ落ちる。

 焦りで口の中はカラカラになってしまった。

 身体は震えそうになりながらも、必死に平静を装う。


 再びクレイの身に起こった異変。

 おっぱいとしか喋れなくなってしまった勇者。


 その理由こそ、呪いを解除した魔法使いの少女、マノンを殺害したから……?

 今となっては、そうとしか思えない。


 勇者であるクレイの敵であるマノンを倒した結果、この事態を引き起こしてしまった。

 クレイがおっぱいとしか喋れない原因は、サラの短絡な行動によるものだとすれば……!


(私の、私の所為(せい)で……!? 私がマノンを殺したから、クレイはこうなった……って事!?)




「それでは、よく聞いて頂戴。 クレイ、特に貴方にとっては大事な話よ……」


 キョトンとしながらも、頷くクレイ。


 一人だけ焦りまくっているサラを他所(よそ)に、シグネは語り始めるのだった。



「実は私は、幼い頃からクレイをよく知っているの……」


 クレイを見つめながら、最初にそう切り出すシグネ。



「かつて王都では、王位継承を巡っての家督争いが有った。 イセルナ姫が生まれる少し前になるわね」


 皆の視線がイセルナに向けられる。

 彼女が生まれる少し前……つまりは15年程前の話だろうか?



「現国王が第一王子だった頃……。 その弟である第二王子との争いが勃発した。 家臣はおろか国民にまで波及して、当時は国内が紛争状態となったわ。 そして、クレイ……貴方こそ、その第一王子の第一子にあたるの」


 神妙な顔をしながら聞いていた各々だったが、その意味を理解して唖然としてゆく。


 そんな中、シグネはクレイに向かって膝を着いて畏まる……。



「今迄のご無礼、お赦し下さい。 クレイ殿下……!」


 シグネの行動に、全員が驚愕するのだった。



(それでは……この無礼者が……まさか、私の兄様……だと言うのですか!?)


 実の兄……おっぱいとしか喋らない男を怪訝そうに観察しながら、目を細めるイセルナ。



(クレイ様が、王家の血筋を……!? という事は、この聖女ナリアに相応しいご身分……! 私を虐めるにあたって何の問題もないですわ……ああっ、こんな素晴らしい事になるなんて!)


 マゾ聖女による身勝手な解釈。

 嬉しさのあまり、身を捩らせるナリア。



(勇者様は、王子様……!? もしかしたら、この私が王妃に迎えられるチャンス……!? 私の胸なら……夢じゃないかも……しれない!?)


 同じく身勝手な妄想をした挙句、真っ赤になっているルーネ。



 事前にイセルナの話を聞いていたサラだけは、初耳ではなかった分、他の者に比べ極端な驚きは無かった。

 そんな事より、今のサラにとってはマノンを殺してしまった後悔が全てである。

 唇をブルブルと震わせながら、一人だけ黙ったままでシグネの話を聞いていた。



「第二王子派による暗殺から逃れる為、まだ幼い頃のクレイ殿下は王都を離れた。 それを護衛したのが、第一王子に仕えていた私よ……」


 当時のシグネが第一王子派だった理由こそ、第二王子の嫡子は男子ではなかったから。

 それだけの理由であったのだが、それについては語らない。


 代々、勇者に選ばれるのは男子。

 その可能性がない女子……つまり、マノンを見捨てたのだ。

 シグネにとって、敬愛する先代勇者の血筋を引く新たな勇者以外は必要がない存在なのである。



「クレイ殿下は、腹心の家臣である夫婦の元へと預けられる事となった。 それが、サラさんのご家庭よ……。 元は王宮屈指の薬師であり、立派な伯爵の家柄。 サラさんも、本来ならば伯爵令嬢なの……」


「まぁっ! サラ様が? それは素晴らしいですわっ!」


 声を出して歓喜したのはイセルナ。

 窮地を救ってくれたサラに好意を寄せている彼女からすれば、非常に喜ばしい事実だった。


 だがしかし、当のサラ本人は心が此処に在らず状態。


 両親が貴族だの、実は伯爵令嬢だの言われたところで、今のサラにとっては些細な事であった。

 はっきり言って、そんな事はどうでも良い。


 自分の過ちによって、クレイが再びおっぱいとしか喋れなくなってしまった事こそが一番の懸念なのだ。



「う、ううっ……」


 堪らずに呻きが漏れてしまう。

 一人で幾ら考えたところで、解決する方法などは想像すら出来ない。

 いつの間にか、我慢していた涙がポロポロと溢れ出す。


「サラ様……どうなさいました?」


 突然に泣き始めたサラに、イセルナが気遣ってハンカチを取り出して涙を拭く。



「クレイが……おっぱいとしか……言えなく……なったのは……私の……所為(せい)……だか……ら」


 耐え切れず、一行の前で泣きながら呟くサラ。


 悔しいが、シグネやナリアに相談するしかない。

 シグネは愛するクレイの抹殺を狙っているだろうし、ナリアに至ってはクレイに色仕掛けをしていた、憎っくき存在。

 そんな二人に協力を仰がなければならない、そんな自分の情けなさに涙が止まらない。


 つまり、サラは後悔すれども、反省はしていない……。




「それは、どういう事なのかしら……サラさん?」


「私が……マノンを……殺した……から……」


 シグネの問いに、サラは真実を口にする。



「マノン……まさか、ガナガの娘の……マノン?」


 その名を反芻し、考え込むシグネ。

 遂に様々な関係の糸が手繰り寄せられ、纏まり始める……。

どいつもこいつもヒドインズ!

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