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おっぱいとしか喋れなくなった勇者に世界は救えるのか?  作者: らいとふっと


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26/89

三馬鹿、ざまぁ

 

 その足音に振り向くサラ、ティア、そしてルーネ。

 足音の主、その人物こそ……。


 サラの義弟であり婚約者。

 ティアを娼婦から解放した心優しい幼馴染。

 そしてルーネが会う事を夢見ていた人物。


 それは紛れもなく勇者クレイ、その人であった。



「クレイ……」


「クー君……」


「勇者様……」


 三者三様に、三人の口から発せられた言葉。



「やっぱりクレイは来てくれたんだ……! 私を助けるために……!」


 最初に動いたのは義姉であるサラ。

 一人で勝手に感極まり、クレイの元へと駆け走って行く。



「私の為に来てくれたんだよね……クレイ!」


 勢いのまま、クレイの腕に抱きついたサラ。



()めてくれないか、サラさん(・・)……」


「え……?」


 クレイが普通に会話をしている……。

 おっぱいとしか喋れない筈のクレイが今、確かに普通に喋っていた……!


 しかし、そんな事よりもサラにとって衝撃は別の所にあった。

 長年に渡って呼ばれていた『サラ姉』ではなく、クレイが彼女に対して口にしたのは『サラさん(・・)』であったのだ。

 その余所余所しい呼び方に、サラは唖然とするしかない。



「ク、クレイ……? 私に『さん』付けなんて……そんな……」


「だって、もう他人だろ? 婚約だって破棄したんだし、家からも出て行けって言ったの覚えてる? 俺との家族の縁も切ったんだよ、サラさん自身で……ね?」


「ち、違うのっ……私はずっとクレイが心配で……」


「は? 何言ってんだ……? 散々と罵ったくせに、今更勝手な事を言わないでくれるかな?」


 そう言いながら、クレイはサラを引き離す。

 死んだ魚の様な目になったサラは、何も返せずに立ち竦む。



 次に動いたのはティア。


「ちゃんと喋れる様になったんだね、クー君?」


 サラを引き離したクレイに歩み寄ると、はにかみながらクレイに訊ねる。



「ああ、お陰様で……」


「良かったぁ! あ、アタシね、やっぱりクー君の事が……」


「じゃ、彼氏さんと仲良くね」


「え、クー君……? あの、アタシ……」


 殆ど相手にされる事もなく、ティアは一瞥されただけ。

 町で出会った頃の心優しいクレイの面影は、そこには全く感じられなかった。



 動かない木偶の坊と化したサラとティアを置き去りにしたまま、ナリアを介抱するルーネとシグネに向かって歩き出すクレイ。



(この方が勇者様……! か、格好良いかも! ど、どうしよう、私……遂に運命の男性と……!)


 憧れの勇者と目が合い、ドキドキしてしまうルーネ。

 そんなルーネにクレイが投げ掛けた言葉。



「アンタさ、漏らしたの? 小便臭いよ?」


「は、はい……。 あの、ごめん……なさい……」


 こうしてルーネの恋は、一瞬で儚く散った。



「シグネ、怪我はないか?」


「ええ、大丈夫。 私は何ともないわ」


 シグネの身を真っ先に案じ、その肩を優しく抱くクレイ。

 微笑み合う仲睦まじい二人の姿を、三人は茫然と眺めるだけであった。



(その女……いったい何なの……? 私のクレイと親しくして……!?)


 シグネに対し、嫉妬の炎を燃やし始めたサラ。

 自分がクレイを傷つけた事を謝罪しようともせず、今は新たな恋敵に対する怒りだけが彼女を支配する。



(クー君に……嫌われちゃったの、アタシ……?)


 あれだけ好意を寄せてくれていたクレイに拒絶され、ショックを受けたティア。

 このままでは自分ではなく、あのダークエルフに横取りされてしまうかもしれない。

 托卵計画が頓挫してしまう気配を感じざるを得ない。



(あはは! 私、小便臭いだって……はははっ……)


 既に、心此処に在らずといった感じのルーネ。

 聖騎士見習いの少女が、密かに心に描いていたビジョン。

 それは粉々に砕け散っていた。



 そんな様々な思惑が交錯する中……。



「ううっ……私……いったい……」


 介抱されていたナリアの意識が戻った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です! ルーネの扱いだけ酷いw 他の2人は仕方ない部分もありますけどね!(特にティアさん) おっぱいの呪いが解けたかと思ったら、急にニヒルな男になってしまうとは。 シグネさんと…
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