いざ、決戦の地へ!
「以上が、この依頼の内容となります……が、本当にお引き受けなされて宜しいのですか? 今迄に帰還出来た冒険者はゼロ、現地の状況についての情報も皆無なんですよ?」
やんわりと遠回しに、命が惜しければ止めておけ、と受付嬢が忠告するも、ナリアの決意は揺るがない。
「まったく問題ありません。 但し、魔法門は使用させて貰います」
「それは構わないのですが、現地のゲートが残っているのかも不明なんです」
「なら、私が使えば判明しますわよね?」
ニッコリと微笑むナリア。
受付嬢は思った。
幾らプラチナ級の彼女でも、このクエストだけは無理だろうと。
これまでにも数多くのゴールド、シルバー級の腕利き冒険者達が調査に赴き、消息を絶った。
この若く美しい神官の少女も、彼らと同じ末路を辿ってしまう運命なのだろうか、と。
そして『魔法門』とナリアが口にした聞き慣れない言葉。
それは古の時代、偉大なる賢者が作ったと伝えられる魔法の門。
世界の各地に設置され、その門を通るだけで遥か彼方の地まで往き来が可能である。
現在は冒険者ギルドが管理しており、それを行使出来るのはゴールド級以上の冒険者のみに限定されている。
つまるところ、プラチナ級であるナリアならば、遠く離れたラシュア帝国にも瞬時に赴く事が出来るのだ。
「り、了承致しました! では急いでギルド長に報告の上、魔法門の準備に取り掛かりますので……」
ナリアにそう告げた受付嬢。
これでナリアはクエストを正式に引き受けたと言う事であり、もう後には引けない。
(さてと、次は……)
振り返ったナリアの目に映ったのは、真っ青になっている三馬鹿トリオ。
あまりにも壮大な金策に、頭が追いついていない様だ。
「貴女達は此処に残っていて下さいませ。 後は私一人で……」
「ナ、ナリア様っ! 私はナリア様を護衛する聖騎士です! 私だけはお供させて下さいっ!」
「まだ見習いのルーネでは危険です。 私だけで参りますから」
(足手纏いだから付いて来るんじゃねーよ、このカス!)
「で、でも……」
震えながらも任務を遂行しようとするルーネに、内心では苛立つナリア。
続いてはサラ。
「ナリアさんっ、私も行きます! 私、薬の調合や知識は有りますから、きっと役に立ってみせます!」
「サラさん、魔王の本拠地に赴くのは危険極まりないのですよ?」
(ったく、聖女の私が居れば薬なんか要らないわよ……)
ルーネ同様に震えながらも、何故だかサラも同行を申し出ている。
クレイの聖剣を取り戻す為、何もせずにはいられないのだろう。
「それじゃあ、アタシも行く!」
最後にティアまでも。
「アンタは行かなくて良いわよ、クソビッチ! そもそも、何の役にも立たないでしょ!?」
「うーん……そうだなぁ。 あ、そうだ! 疲れたらアタシが膝枕してあげるよ?」
「えっ……!?」
(膝枕要員って何なのよ……?)
意味不明な役割を申し出たティアに、ナリアは目眩を覚えた。
「と言う訳ですから、ナリア様!」
「薬師の私だけでも連れて行って下さい!」
「膝枕、してあげる!」
ナリアに懇願する三馬鹿。
(どう考えても誰一人必要がないけど……そうね、サラとティアは勇者の縁者。 恩を売っておくのも悪くないかもしれないかしら? ルーネも同行させておけば、枢機卿への報告の際に役立ちそうね? ま、どうせ私一人で全部片付けるんだし、この三馬鹿には聖女ナリア伝説の証人になって貰いましょうか……うふふっ)
三人の顔を見渡しながら、ナリアは決めた。
「解りました……貴女達の崇高な想い、しかと受け止めましたわ。 全員ご一緒に参りましょう!」
(だけど、足を引っ張んなよ? ゴミカス共!)




