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どうやら、彼の思い出の様です【太陽】

赤の少年は、落ちる、

奈落の底へと。


赤の少年は、落ちる、

奈落の先に待つ海へと。



果たして……


青年達の元に、運命の月の光は指すのか。



ーーーーーー 何処までも、何処までも、続く暗闇の中で


薄っすらと開いた(まなこ)から見える視界の中に、己を押しつぶさんと迫る瓦礫の数々が有った。


轟々と、言う耳をつく風が背後から身動きさえ出来なくなった自分の体温を奪っていく。



父親譲りの赤い髪が流れ、衣服が風に遊ばれる。

金の装飾が施された紅い肩当てから伸びる真紅のマントが、今は申し訳程度に背中に残っていて、まるで鳥が羽ばたいた時の様な音を立てて、(はた)の様に騒がしく耳に届く。


眼前に迫る塔の残骸は、今もその数を増して行く。


ーー 先程まで自分達が居た塔が完全に崩れてしまったのだろうか。



今も耳元で喚き散らす風の音に混ざって、爆発の音が、まるでこの城と己れの死を運んでくる死神の足音の様に、遠くから近くへと聞こえてくる。




ーー ナターシャやキールにレオン達は無事だろうか、



朦朧とした意識の中で、忍び寄る死の影の中で有っても、彼は仲間の姿を思い浮かべる。

冷え行く身体、霞む瞳、目を閉じてしまっても…もう良いのではないか…とさえ、自分の中に居る誰かが言った様に思えた。






魔王によって、俺の故郷 ーー『太陽の里』は襲われた。


山を挟んで隣の『月の里』にも彼奴の魔の手が伸びて、多くの血が流れ、生き残った里の皆は散り散りとなった。



俺の父は、太陽を信仰する部族の族長の弟、次男坊に当たる。


亡くなった祖父の代わりに、里を復興する長兄を助けるため、行方不明になった里の者を探す為、


そして、魔王を追う為に、当時まだ幼い俺を、父は兄の元に残し旅だって行った。



当時、俺の母は太陽の里には居らず、そして自分に母がいる事さえ、俺は知らなかった。


ーー 今思えばソレは当たり前の事、交わるはずのない表と裏の存在とも言える…月と太陽の部族の間に産まれたのが、自分だったのだから。



ある日、幼かった俺は、良く世話になっていた父の兄である叔父に聞いてみた。


ーー どうして、お母様いつも居ないの?


当然の疑問だ、だが…その答えは返ってくる事はなかった。


ーー ただ、その時の彼の表情が、同じ疑問をぶつけた時の父の顔と、良く似て居たのを今でも覚えている。




そうして、数年が経ち少しずつではあるが、人が里に戻ってきた頃、一つの知らせが俺の元に届く。



父が、捜索の途中で魔王と戦い…深傷を負った、と、



その知らせを聞いて、俺は居ても立っても居られなくなり、叔父にかけ合った。


今思えば随分と無謀だったと思う、助けに行きたいと叔父の前で喚き散らした。何度お願いしても叔父が首を縦には振ってくれなかったからだ。


直ぐに、喧嘩別れの様に明け方、旅に出た。



まあ、こっそり出た筈が、叔父にはお見通しだったらしく、門番の元衛兵の兄ちゃんに、選別として色々貰った。


何故なら当時の俺は、時々来ていた旅芸人や、商隊から聞いていた『旅に必要な道具』なんかを持たずに、

剣一本と簡単な食事だけ…と言う、無謀極まり無い格好で里を出ようとしていたのだ…俺は。

そりゃ誰だって、渡せるなら渡すだろう。


面倒見の良かった彼の事だ、もしも叔父の言葉が無くとも、俺の事を呼び止めていたに違いない。



ーー 門番のおっちゃん、今何してっかな…元気だろうか。今でも叔父の飲み仲間やってんのかな?




その旅の途中、おっちゃんから貰ったテントで一晩過ごし、大きな街を目指していると、森の中で見慣れない服装の女の子と出会った。



それが、教会で見習いをやっていた…ナターシャとの始まりだった。



彼女を一目見た時、それは森の中でボロボロの武器を持ったオークやゴブリンに追われていたのだ、

彼女は野猿の様に、木と木を飛び回り魔物の群れから逃げようとしていた。


だが、それは長くは続かず枝は折れてしまい…その小さな身体を地面へと投げ出してしまった。

俺はその様子を見て彼女の元に駆け出して行った、そこから二人で魔物と戦いつつ、なんとか振り切って街までたどり着いた。



ーーー そこから、色々な事が有った、


ナターシャの先生の1人、ナターシャ曰く聖職者の風上にも置けない変態の先生と戦い、実はソイツは魔王と繋がっており、

ナターシャの事を魔王の生贄にしょうとして誘拐された時、偶然出会った…


金の鎧を身に纏った青年…レオンと共に助けに向かったり。



聞けばレオンも、魔王を追っているのだという…。


ナターシャの件の後になって分かった事だが、レオンの貴族としての本名はもっと長いのだとか…、そして、自分はもうただの『レオン』なのだと、そう言って一緒に旅する過程で、己が過去を話してくれた。


もしかしたら、彼なりの配慮が有ったのかも知れない。



ーーー 俺も、また自分の名字を言う事は禁止されていたのだから。


名字の言えない俺と、言わないレオン。

互いに最初は、踏み込みすぎないと言う様な、不思議な関係だった。



ナターシャの一件が解決し旅も半ばの頃


彼とキール、ナターシャと過ごす旅の中で俺と彼が、野宿で火の番をする日が有った日の事だ。


その日、彼は火に木を焼べながら重い口を開いた。



彼はとある貴族の三男坊で、実家を出るか、騎士となって領地を守るか、と言う選択肢を父に問われた時、迷わず騎士の道を選んだと言う。



そうして…だいぶ騎士生活も慣れて来た頃に、レオンの妹にして長女のレイチェルに縁談が舞い込んでくる。


相手は山を挟んで、隣の領地の領主の息子で、レオンと妹…レイチェルもよく知る人物であり友人で、

名をマルクスと言った、レイチェルの初恋の人だったそうな。



レオンは我が事の様に喜び、結婚式場に行くまでの護衛を自ら買ってでた。

その当時の事を語る彼の瞳は、本当に嬉しそうで…、



ーーー だが…その表情も直ぐに陰りが指した。



その道中で、魔王の手下に襲撃されたのだ。



レオンと数名の従者を除き、妹一行は全滅だったと言う。



ーーー そして…最愛の妹が、自身の目の前で死んだ…と。



その数時間後、レオン達は魔物達が去って行った後で迎えに来たレイチェルの結婚相手の一行によって救助された。


彼の目が覚めると、包帯だらけの自分などどうでも良いと、言った風にマルクスの元へ急いだ


レオンは涙ながらに、マルクスの前で土下座したと言う。

守れなかったと、すまない、と。



ーー 語気を荒げるて語る、彼のその言葉は、この場に居ない妹の婚約者に向けて放つかの様で、俺の胸をかき乱した。



マルクスは責めなかった、ただ、君だけでも無事で良かった、一言…そう言って涙したと言う。



ーー その時、2人はどんな気持ちだっただろうか?、


愛しい妹を失ったレオン、最愛の婚約者を失ったマルクス、互いが互いに同じ人を亡くした悲しみの中で、それでもマルクスは、その言葉をレオンに向けたと言う。



ーー もしも、俺の父親が無事でなかったら、もしも仮にその場に友人が居て同じ様に謝罪されても、そのやりきれない気持ちをぶつけずにいられただろうか?


ーー 分からない。


分からない…けれど、この問いが生まれた…その全ての元凶が魔王だ。



ーー レオンの独白にも似た言葉が続く。



それから、数日何とか歩けるまでに回復したレオンは、自領に戻ってきた


戻ってくると、父と母に出迎えられ、父に一発顔面を殴り飛ばされたと言う。

それほどにレオンの表情は酷かったのだ、そして、彼の父はそっと抱きしめてくれた。


不覚にも父の胸で、彼は泣き喚いてしまったそうな…、


家族の多くは彼を責める事は無かった、皆、魔物による理不尽に怒っていた。



だが、妹を失った、その日から家族達は、何処かボンヤリする様になってしまったとレオンは言った。



肉親を失った…その事実が、皆の心にぽっかりと空白を開けてしまった。


今でもたまに…妹がいた時の事を思い出すと言う。

妹が好きだった花、食べ物、一緒に遊んだ時の事、話した事、口癖など、あげていけば霧の無い事だけれど。

それでも、ソレは…それだけ共に過ごした時間があったと言う事だ。


失ってしまったばかりの頃は、まだ彼女が近くに居るかの様な感覚さえも覚えていたと言う。


これではダメだ、しっかりしなければ…と思っていた矢先に…


レオンはふとした事で見てしまったと告げた。



ーー 母は、皆が寝静まった頃に、1人レイチェルの部屋で、泣いていたと。


そんな姿を、家族を…見ている事が出来ずに、レオンは家を1人飛び出し、魔王の手下を追って旅に出たと言う。





そんな旅の中で、焚き火を眺めつつ聞いた話の中、こちらにその大きな背を向けて話す彼の。どこか小さくなってしまった背を今でも覚えている。





そして、キールとの出会い。


最初は驚きから始まった、何せ…俺の上に降ってきたのだから、


ーー アレは痛かったな…。



それも、せっかくナターシャが、丹精込めて作ってくれたお昼の弁当とおにぎりを食べていた時に。


突如、悲鳴と共に銀の長髪とローブを翻しながら、見上げた俺の元にドシンと言う大きな地響きを立てて落っこちて来た。


ーー その音に驚いた鳥達が、一斉に飛び立って行ったのが、仰向けに倒れた視界から見えたのを覚えている。

折角の森の、のどかな一時を邪魔した犯人に制裁をと、そう心に決めた瞬間だった…




俺は相棒の太陽銃のカートリッジに、魔力をめいっぱい込め初めた、


俺の胸元に顔を埋める銀の物体である犯人は、痛たぁ…ごめんねぇ、と何処か間延びした口調で謝って来た、


頭に血が登りつつ有ったその時の俺には、そんな些細な事さえも許せ無かった。


多分、額に青筋が出ていただろう。


ーー テンメェ…、と我ながらドスの効いた声が出ていたっけ…



太陽の部族にとって、太陽の日の元で自らの糧を得る。

それは、太陽の恩恵で育った作物を感謝の言葉と共に頂き、作物と共に『太陽の魔力』を己に宿す、大事な行いだった。


ーー そう言えば…里では、いただきます!と当たり前に言っていた事だったが、外に出てからは、それが当たり前でない事など知らなかったな。



その当時の俺とナターシャとレオンの一行は、ナハト兄さんに負けボロボロだったっけ。


なんとか二人のお陰で逃げ切る事が出来て、もしもまた遭遇したら今度こそただでは済まないと、思っていたんだよな。


そんな時に訪れた街のギルドの酒場で、ある依頼を見つけた


それが『原初の魔女』の手がかりを探すと言って世界樹の森に消えた『賢者』を探す事、


その依頼の最中で森の中で見つけた、お昼に丁度いい場所での出来事だった。



鬱蒼と昼間なのに木々がひしめき合い太陽の光は僅かにしか届か無い森林を抜けた先に有った、その場所。



なんでも貴族の屋敷に居た当時、レオンは『賢者』と会った事があったそうだ。

最近でも、『コチラ』の国にやって来るそうで、その知恵を借りる事が有ったらしい、



更に…何と!、レオンの知己と言うだけで無く、ナターシャの魔術の担当の先生でもあるそうだ、

ナターシャは、加えて余り歳が離れて居ない見た目と言っていた。


今の自分達が強くなる為に知恵を、出来る事ならば、旅の仲間となって力を貸して欲しいと皆で頼むのが目的だった。


他にも特徴は言われていたが、余りにも未熟過ぎた当初の俺は、怒りに我を忘れかけ、

大事な事をも忘れていた…。



ゆっくりと、自分の上から退ける銀髪の犯人。

ほんのり頬に赤みが差し、長い睫毛の瞳を背けるソイツを、血走った瞳で見つめる俺。


見方次第では、俺の方が危ない人の様だったかと思う。


ーーー 思い出すだけでも自分の不甲斐なさが恥ずかしいな


陽の光を浴びて輝く背中まで流れる銀髪、翠色の眠たげに、半分閉じかかった瞳、


その左目を、鈍色の片方だけの眼鏡が覆っていた、後にモノクルと言うと()()()教えて貰った。金の装飾が胸元の合わせ目にされた黒いローブ。その内側に革製の鎧を纏い、肩から胴にかけてを覆っていた。


ーーそう、彼女…ローブの内側に鎧を着てる事が多いせいか、肩幅などで女性として判断されず、更に身長も有って、良く性別を間違えられるからと、正面からローブを開いた時に、分かる様に短いスカートを着ているらしい。

オマケに着替えなんかもスカートを多く持ってるんだっけか…キールの奴



ぺたんと腰を下ろし、ローブから覗く白いチェックのスカートと生脚。右手には木で出来た杖を持っていた。


立つと170センチ近く有り、いや…もう少しあるかもしれない、…幾つだっけか…身長も体重も教えてくれなかったっけ、コンプレックスと言って居たか…。


まぁ…その『彼女』こそが…『賢者キール』その人である。



重ねていうが、本当に我を忘れかけていたらしい。その時の俺は相手が賢者の一人だと気づいていなかった。


そして、目を反らしている今がチャンスと、魔術媒体の銃が輝き始め、右手の拳が炎を纏った、



レオンが年長者で男だからと、一人で運んでくれた食糧と水。


ナハト兄さんとの戦いで、ナターシャへの攻撃を俺が庇ったから、俺が傷ついたと、


その細やかなお礼にと、彼女が指に切り傷を作りながら作ってくれた、お弁当。



ここまでたどり着くまでに、小休止の中、俺はそれらを大切に…大切に食べていた。


言い訳では無いが…成長期のせいか…本当にお腹が空いて居たし、皆と同様に俺も疲弊して居たのだ。


だから仕方なかった…なんて思うが、今でも思い出したくない程に、黒歴史として俺の中に残っている記憶の一つだ。


レオンが食料が足りなくなりそうだな…と、集めに買って出て彼に比べて体力の少ない俺は、自己の体力も回復する司祭の彼女とも違って、一人で先に休むしか無かったのだ、だからこそソレも仕方のない事だったのだ。



ソレを、この銀髪が…



コイツが………



おにぎりの残骸は、俺の腹の部分から、大地へと無残に広がっていた。


コイツのせいで…



拳の炎、魔法名を『太陽の拳』《プロミネンスフィスト》と言った。


拳は怒りに呼応したのか、勢いを増し、次第に輝きを帯びて行った。

俺は、当たる直前には、殺しはしない程度に加減しつつ、ぶっ飛ばそうと、拳を振りかぶる。


……思えば、その輝きに気づいて、顔をこちらにキールが向けた時、

怯えた顔では無く、驚いた顔をしていたのは…



ーー きっと、その時点から彼女は俺が…



そして、その時、森の開けた空間に、ナターシャの声が響いた、

声に遅れてドサドサと、何かが落ちる音。


体力回復の薬草や、食糧を採りにレオンと二人で行っていた筈なのに…聞こえた叫びに俺は手を止めた。



声のした方を見やると、こちらを指差して、だだでさえ大きな瞳を更に見開き、口元を開いた左手で隠しながら、右手でこちらを指差していたナターシャが見えた。


その背後に、魔物を引きずってきたレオンの姿も有った。



そこからは、銀髪の怨敵、いや犯人、いやいやキールが賢者だと知り、俺達は改めて挨拶を交わした。

程なくして彼等は、やりきれない俺の気持ちを他所に、久々の会合に打ち解けて、皆で採って来たご飯を食べ、ここで野宿する事となった。



どうやらレオンが獲物を捕え、ナターシャの山菜と果物集めもひと段落して、俺の元に戻ってる途中、地響きが聞こえて、二人は俺を心配して、魔術で身体を強化して急いで来たらしい。


ーー 有り難い限りであった。本当に。

あのまま拳を、振りおろしていたらどうなっていたことか。



まぁ…彼女なら難なく避けて見せたに違いない。

あの当時の俺は、それを見て更に怒ってしまったかも知れない。


まぁ、たらればの話…だが。




キールとレオン、ナターシャは、久しぶりの和やかな会話を花咲せていた、

そして、俺達の今回の目的を話した。



なんでもこの場所は、『世界樹の森』の前半で森の休憩場の様になっているそうだ。


そして、キールは森の中腹辺りで、新たに得た魔法の実験の最中に、誤って木の枝に引っかかってしまったらしい。


間延びした、独特の少年のような高い声でそう説明してきた。


どうして、中腹辺りに居たのに、浅い前半のココに居たのか?、

そう俺が問うと、代わりに彼女は俺に問い返して来た返してきた



ーー 俺が使った魔術について



さっきのアレは、太陽の部族の魔法だよね?

キミは、太陽の一族の末裔か?と。


俺が肯定すると、暫し悩む素ぶりを見せて、彼女はこう言った。



『その力を、貸してくれるなら、ボクも手を貸そう』と、


……その言葉をキッカケに、俺は、膨大な魔力を宿した『エクスカリバー』を、得た。




その遺跡は、森の中の小さな洞穴が、入り口だった。


キールの魔法と、レオンと俺が松明をもち、少し進むと人一人分程の、扉の中央部に丸い『何か』が描かれた小さな扉が有った。


キール(いわ)く特殊な『封印』が施された扉らしい俺が良く見ようと近づくと、



ーーー ソレは起こった。



扉の中央部が小さく光を放ち、やがて描かれた『太陽』に沿って光が走り、最後に光の線によって描かれた、太陽が輝くと扉はゆっくりと開いて行った。


驚いた俺達を他所に、キールは太陽族の遺跡には、太陽族とその太陽の認めた者しか入れない仕掛けが数多く存在するらしい、と説明してくれた。


キールは、その英知を持って碑文(ひぶん)を解き、俺は魔術媒介の杖の代りとして扱って居た、弾の出ない太陽銃の使い方を知った。



部族の里から、出立する日におっちゃんから『叔父の選別』として、渡されたコレは。


里に代々伝わると言う、父が魔法の媒体として、使っていたと言う『太陽銃』《ソル・メ・デイアス》


その使用方法は単純で、銃の持ち手部分の底から、事前に太陽の光を溜め込んだ弾倉を入れて使うと言うものだったが、

その弾倉は地下に有ったこの遺跡では、充電されていなかったらしく……今すぐ使う事は出来無かった。


弾倉に魔力を溜め込むのも、何日も日の本に弾倉を出して居ないといけない、


……そう言う代物だったのだ。



その事が判明した時、遺跡が大きく揺れた、


遺跡の防衛システムと呼ばれる機能が発動し、地上の様子が俺達の目の前に移し出される。



まず目に入ったのは煙だった、時折煙の中に赤い炎が見える。


森に火が放たれ、木々を焼き、魔物の大群が動物達を追い回す。

その大群は、ゆっくりと進み、画面に地図の様なモノが移し出されると、キールは悲鳴の様に叫んで言った。



この魔物達の向かう先は、四つの国を結んでいるこの土地から1番近い人里、エルフ、ドワーフ、獣人など、様々な人種が暮らす、緑と風の国の街だと。


この世界は、大きな四つ葉のクローバーを思わせる形の大陸で出来ている、その大陸の四つ葉を結ぶ中心部に存在する。

四つ葉状の陸地には、それぞれ一つの大国が治めていると、叔父から聞いたのを覚えている。



昔々最初の勇者が、この大陸中を旅するそんな物語の絵本を読み聞かせてもらった。

張り詰めた空気の中、懐かしい記憶が脳裏によぎる。


あの時、傍には父と小さい誰かと、耳に心地よいもう一人の誰かの声が有った…。


今思えば…その懐かしくも心地の良い声は…月下美人だったのだろう…



ーー だが、記憶に残る、もう一人の声は…いったい誰なのだろう…。



そして、また、画面は変わり、魔物の大群の後方の二つの影を映し出す。


その姿を見た途端、レオンが急に部屋を飛び出した、俺は、飛びかけた意識を現実に戻した……


後から知ったが、レオンの妹さんの仇だったらしい、そして、もう一人は、



『ナハト』だった。


ソレが、俺達兄弟の二度目の会合だった。



魔王の命令で、こうすれば、きっと俺達が現れるだろうと言う策略だった。俺達にとどめを刺す目的で……。


俺は、太陽銃とエクスカリバー、そして、最初はなんなのか?分からなかったが、後のナハトとの戦いで知った『エクスカリバーの鞘』を手に、レオンを追って外へと、皆で走って行った。



ーー そこからか…



そこからは、激しい戦いの数々だった…。



そして、今まで、長い様で短い旅だった。





走馬灯の様な思い出に浸る中、俺の意識は『今』へと立ち戻って来る。


眼前に迫る瓦礫は、螺旋階段や柱にぶつかると、その数を増やして行った。


「兄さん」


本当は兄弟だったと、そう知ったのは、つい最近だ、自分と何処か似た容姿の『彼』を思い浮かべる、


二回目の戦いから、時折、洗脳が溶け始めたのだろう、姿を見せず助けくれたナハト、


そして、最後の一騎打ち、魔王によって完全に傀儡になったかに思っていたが、


どうやら、違ったらしい、


完全な傀儡になりかけていたナハトは、強かったが…ソレでも、俺は以前のナハトの方が強いと思った、


ソレに、最後の攻撃を俺がした時、微かに笑っていたのだ。


きっと洗脳に兄ナハトは、打ち勝ったのだろう…と、そう思える。



最後に…話たかったな…兄弟として、離れ離れだった今までの歳月を取り戻せるぐらい。


話たかったな…




ーーー皆、無事かな






自分の事などさて置き、仲間の事を心配する考えが浮かぶ、



もう…分かっているのだ、自分はもう助からないと…、


魔力は、先程使い果たし、


体力も、もう限界だった。



自分は、最後の約束を守れそうに無いと……



「ナターシャ…レオン…キール、」



「兄さん……皆…」



「……ゴメン」



その言葉共に、頬に一筋の涙が流れ、風と共に消え行き…



ーーー 俺は意識を手放した。




最後に感じたのは月明かりの様な光が、瓦礫の向こう側に見えた気がして、



「待たせたな、マサト」


「今助ける。」



その光と共に聞き覚えのある、声の


その言葉だった。


こんばんは、こんにちは、おはようございます。

少々の修正のみの為、本日は二話投稿です。物語への違和感など有りましたら、このページは修正するかもしれません。

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