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ゴーストと蛇、どうやら俺は事態に追いつくのに必死の様で…【月】


どん!…と言う、衝撃を感じると同時にベットから離されると、先程まで身を預けていたベットが飛んできた大きな物がと共に、壁に向かって吹き飛んでゆく。


「剛くん…きゃあっ!」


友人の名を呼ぶも、遅れてやってきた風によって少女の体勢は崩される。


「…な…なにが…」


そう言って、状況を把握する為に視線を彷徨わせると、本棚…と丸い『ナニカ』が見えた。

そのナニカは、ずんぐりとした鉄釜を思わせる胴体に筒状の湯呑みの様な頭、大小の石を組み合わせてた様な手足の異形。

丁度、頭に当たる筒状の物体からは、小窓の様な物が見える。確か少女の記憶では…アレが目の部分だった様な気がする。


そのナニカの名は『ゴーレム』

ナハトと肩を並べていた魔王軍の二大幹部の1人にして、科学者の男。

彼が好んで使役していた存在だ。複数あった本棚の一つを下敷きにして、そのゴーレムはまるで上下逆転したかの様に真っ逆さまになって機能停止している。


「こいつが、飛んできたの…?」


でもどうして壁を突き破って…?



視界を覆い隠す様な埃が舞う、部屋の中を見渡すと、本棚がベットと共に反対側の壁を突き破り、横たわっていて、ナフティアの倒れた周辺には本が乱雑し、吹き飛んだ拍子にあの本棚から吐き出されたモノだと分かった。


そして、遠くの地鳴りに加え何かがぶつかる様な音、後者はかなり近い。


「あれ…これって」


良くある物語だと、瞬時に何の音か分かったりするのだが、地鳴りの音に混ざって、この場に危険が迫って居る事は分かるが、何の音なのか断言しづらい。

不安な気持ちのままに視線を巡らそうとして、丁度、白の少女の目の前に見知った本が落ちている事に気づくと、そっと手を伸ばしてみる。


「これ…私の日記…?」


正確に言うならば、『ナハト』だった頃の日記。

ゲーム時代にも存在したソレは、マサトがナハトとの最終決戦を行う前にこの部屋に訪れた際にのみ、見る事ができる日記だ。


ここでもしも何事も起こって居なかったならば、彼女は中をおもむろに確かめて居ただろう。


されど、今彼女に差し迫った現実リアルが…



『グオオオオオオオオ!!』



ーーーーーソレを許さない。


雄叫び、狭い部屋の中に響き渡る、地響きかと思うような叫び。

先程までの地鳴りと比べて、違うモノだと分かる。何よりの違いは肌が総毛立つかの様な冷たい…殺気。


「…何!?」


その声がした方角に、手にした日記を袖の中に仕舞いながら視線を向けた先、先程のゴーレムが突き破った壁の先に幾つかの光点が見えた。

この時、本能的に逃げるべきとは分かって居るが、野生生物に対して『今の自分』が逃げても簡単に追いつかれてしまう可能性が頭にチラつき、その相反する考えの元で出来たのは、身構える事。


咄嗟に身構えると言う事が出来ただけ良かった、丁度その時、壁と少女とを遮るかの様に『影が』横切った。




「剛くん!やっぱり無事だったのねっ」



『剛』と呼ばれた影、種族名をデスゴーストと言う。

ナフティアは、彼…或いは彼女が本棚の下敷きになった際、反射的に呼びかけて居たが無事なのは確証が有った。

何故ならば彼等は元を辿れば…『幽霊ゴースト』。


殴ろうが蹴ろうが物をぶつけようが物理的なダメージは無い。擦り抜けるだけだ。


よって本棚がぶつかった際に目の前から消えていたのは『別の理由』が有ったからで…


どこ行ってたんだろう…?、そこまで考えが至った時、壁の穴から先程と同じゴーレムが複数顔を出した。


それをデスゴーストは、煙の様な影の体を揺らし一気に距離を詰めると、一体のゴーレムから拳で初撃を受けるもゴーストには効く事は無く、青い炎を纏った鎖によって動きを止めつつも鎌で一刀両断する。

だが、続け様に次のゴーレムに向かい、今度はゴーレムの光線レーザーが彼を襲うも、難なくかわして再び真っ二つにして見せた。


彼は、そんなゴーレム達には目もくれず、そのまま少女の前を守る様に陣取った。



「もしかして…剛くん私の事守ってくれてた…?」


その疑問に彼は答えない。いや正確に言えば、答えられない。

答えるだけなら簡単だろう、今の彼は以前の様な火の玉の様な体では無い、ローブのような身体では有るが頭の所を下げてくれれば事足りる。

されど依然、デスゴーストはナフティアに背を向けたまま、顔のない頭を真っ直ぐに壁の穴に向けている。



『グオォォォォオ!!』


再び聞こえた、その雄叫びと共に、壁の穴から三体程のゴブリンが姿を現した。


だが様子がおかしい、先程のゴーレム達の時とは違い、こちらを襲うというよりも背後を気にしている。


ゴーレムの時には瞳や行動に感情など感じる事は無かった。だがゴブリン達彼らは違う。


それは、まるで…。


「なにかから…逃げてる?」


そう少女が、ゴーストの背後で呟いた時だった。


『ギィ!ギァ!』


少女やゴーストにも目もくれずに、散乱した瓦礫や本に短い手足を取られながら走り抜けようとした矢先。


ゴーレム達が開けた穴の方から『ナニカ』が飛び出してきた。それを認めてかゴーストが心なしか、手にした鎌を握り直したかの様に見えた。


…まぁ少女から見て、握っている様に見えているだけで、裾元からは相変わらず『黒い霧』にしか見えないのだが…それはさて置き。不味い状況かも知れないと少女…ナフティアは思った。


『ギィア!?…ギィアぁぁぁぁぁ…っ…ぁ』


先程みえた『ナニカ』は……舌だった。それも先が二手に分かれた物。


それはゴブリン達.彼等三体を易々(やすやす)と絡みとり、何かが砕けているかの様な音が聞こえ、関節音に近いその音は脳裏に嫌な想像を掻き立てる。


その音が少女の耳に届いた時、自分の中で何かが切り替わる様な気がした。


『ナハトだった身体』…言わばこの身体になった影響からなのか、前世の眼鏡生活時代には考えられない事に、その舌が高速でゴブリン達を一瞬で連れ去った光景を目にしたにも関わらず、嫌な汗はかけども、不思議な冷静さが有った。


「…剛くん」


もしかしたら、威圧感を放っている穴から少女を守る様にたたずむゴーストの背中を見ている事が理由かも知れない。

先程見た幼き日の『あの時』の光景の様に、『彼』か『彼女』かも分からない筈なのに、まるで男であるかの様な名前を『彼』につけたのは、身体もない今も尚変わらず、どちらかさえ分からないにも関わらず呼んだ名前。


ーーー もしかしたら、『彼』はあの時、願っていた『私』の心の叫びに気づいてくれたのかも知れない。

『誰か助けて』という願い、それは自分ではどうにも出来ない事への悲しさ…誰かを頼りたいと言う想い。そして、不安。


その想いは、今の『俺』の心にも有る。


初めは夢だと思っていたこの世界、変わってしまった『全て』。

『以前』の自分では無い今の自分。『以前』と言うのが『ナハト』だった頃を指す物なのか?それとも『幼い日』だった頃の事か、はたまた『それ以前』の頃の事なのか?、数奇な運命に見舞われた少女の胸に渦巻く不安(ソレ)


ソレもまた、『あの時と同じ物』として『彼』は感じ取ってくれて居るのでは無いか?と言う不思議な気持ち。

今は『ソレ』から目を背け気付かないフリをして、少女は頭を振って考えを切り替えた。



吹き飛んできたと思わしきゴーレム、逃げ惑う様なゴブリン。そして、恐らく先程『彼』が消えた時、戦って居たのだ、この壁の向こう側の存在と。


この冷え冷えする様な威圧感を放つ存在は、きっとこの城には当たり前に居るのだろう。そして、その存在から『彼は』方法は手荒だったが何処か誘導、あるいは逃げさせていたのかも知れない。



そこまで考えが至った時、



ーーー 穴だった壁が再び爆発した。



度重なる攻撃と思えたソレに、ついにはこの部屋さえも崩壊の一途を辿り始め、穴だらけの壁だけで無く天井さえも崩れ始め、瓦礫が少女に襲いかかる。


「きゃあ!」


悲鳴をあげる白髪の少女は強く目を瞑って咄嗟に腕で頭を庇った。

いくつかの瓦礫をゴーストが鎌で切り刻むも足りない、


「きゃああああ……あれ?」


今の少女の顔を有り体に言い表せば、キョトンとした顔だろうか、


間の抜けた様な表情で思わず辺りを見渡す。


「…え?」


頭を上げると、自分の周りに『半透明の膜』の様なモノが包んでいる様にみえた。


「これって…、もしかして」


そう言って自分の身体を見下ろしてみると、自分の着ている衣服と肘の辺りに巻きついている羽衣が僅かに輝いて居た。


『月光の羽衣(げっこうのはごろも)


母、アメリアに授けられたソレには、多くの能力が秘められて居る事を少女は知っていた筈なのだが、余りに移ろい変わる事態の多さに忘れて居た。いや、彼女としては、それどころでは無かったのかも知れない。


何せ今の様に力を使用して居る時以外は羽衣自体、まるで羽根の様に軽く、ほぼ透明と言って差し支えない程に見え難いのだ。

その上、ナフティアの動きに差し支えない程度に『両肘に絡み付いたまま自らを動かす』、と言うオマケ付き。



そして現在ナフティアを守っている『半透明な膜』、その名は『月の守護結界』。

ゲームとしてプレイしていた時、ナフティアをパーティメンバーとして使用した際に良く使っていた。魔法の一つである。


「私を守ってくれた…?」



母から授けられたこの羽衣には、どうやら『意思』と呼ぶには曖昧な、それでもそれに近しいモノが宿って居た筈だ。

俺は何もして居ない。ただ悲鳴をあげる事しか出来なかった。


もしも、羽衣による防御が無ければ瓦礫の下敷きになって居たのは想像に容易い。


「助かっ…」


助かった…と言いかけた矢先、見慣れたモノが結界の前を通ったのが見えた。…青い火の鎖だ。


その鎖はまるで意志があるかの様に、空中で進路を変えるとナフティアの結界の周りを一瞬で数回回って見せた。

つまる所…、結界に鎖が巻きついたのである。


「…え?」


そう思わず声を漏らすと、視界が一気に流れた。


「キャァァァォァア!」


一度は安心した矢先だと言うのに、再び悲鳴をあげる事になってしまったナフティア。


流れる視界の中で、鎖の先を視線で辿って見るとゴーストが鎖の先の鎌を手にして、回廊を一気に走り抜けて居るのが見えた。

時には進行方向のモンスターを斬り伏せ、時には壁を通り抜け、時には障害物を青い火で燃やし、ゴーストは進む。…もちろん、ゴーストが道を曲がったりする度に結界は壁にぶつかったり、ゴーストが通り抜けた壁を突き破ったり。ゴーストが倒したモンスターの残骸が結界にぶつかってきたり、火の道と化した道中を進んだり。


そんな中を喉が枯れてしまうのでは無いかと言う程に、悲鳴を上げ続ける事に暫し…、グルグル変わる視界にナフティアは目を回し始めた時、


『ガァァァァァァっx!!』


ナフティア達の背後から先程の雄叫びが聞こえてきた。



ーーー 追ってきている。


そう思って、回る視界の中首と目を何とか声のした方に向ける事が出来た。…だが、すぐに見なければ良かった…と後悔する。


ナフティア達を追って居たモノ、先程まで壁の向こう側にいてハッキリと見えなかった先の割れた舌の主。ソレは…


ソレは有り体に言わば、『蛇』

長い胴体に大きな口に、蘭々と血走った様に煌く大きな瞳。ただ普通のナフティアが知る蛇とは異なり、大型のダンプカーでも通れそうな回廊が狭く感じる程の巨大な事と、蛇の頭に女性の上半身の様なモノが生えてる様な所だ。

頭の事が無ければ、大蛇と言った方が正しいかもしれない。それでも大きすぎるのだが…。


ーー その巨大な姿をナフティアは知っている。


前世のゲーム時代だった時、レア装備を求めて幾度と無く戦った事がある『デスゴースト』と並ぶ魔王城の『貴重な化けレアモンスター

デスゴーストと同じく、特定の下位同種のモンスターを決められたエリアで一定数倒す事で出現する、

と言う条件の元でしか姿を見せない存在。


デスゴーストの様な分かりやすい弱点は無く、それに加えてこの『魔王城』で現れるモンスターの中でも最高レベルを超える『レベル95』


『レベル』


それは、この世界に置いて『その者』が培ってきた経験を数字として表した事を指す。

『その者』と言うだけに、生物にしかコレは当てはまらず、無機物にはその制限はない。


全ての者は『レベル一』を始まりに、基本的には『レベル百』が現在確認されている最大値、とされている。

だが…何故、『基本的には』などと言う表し方なのか?と疑問に思う人も居る事だろう。


それは何故か?、それは…『何事に置いても例外』となる『モノ』が存在するからである。

人であるにも関わらず、同じ人と言う『括りに』当てはめるには、思わず首を傾げてしまいたくなる存在。

それ故に…『モノ』


生き物と言うモノは、どの世界においても多種多様、千差万別と言って良い程に多くの種類がある。

その為からなのか、時折そう言った基本的な事に治らない『例外』となるが存在(モノ)


それは種の限界を超えた存在(モノ)、それを『超越者』と人々は呼んだ。


『レベル百』と言う限界点を超える事が『世界』によって許された選ばれた存在。


この大地ほし広しと言えども、それが許された存在は、ほんの一握りしか居ない。


例えば、この世界においての『一般的』な例を述べるとすれば、『村人』。


彼等が狩りをして、草木を耕し、仲間達と手にした獲物や作物を頬張る様な極々一般的な生活をして一生を全うするとしよう。

その上で日々培った経験を『レベル』は三十から四十前後なのだ。

それが『村人』の限界値とされている。


もちろん人生道半ばで、転機が起こり『転職』をする事もあるだろう。

その場合は転職以前の『レベル』を引き継ぎ、以前よりも『環境』などが異なるからか五十よりも上に到達する事もあり得る。


つまり、何が言いたいかと言うと『レベル』とは、


この世界においての経験の証なのだ、培って来た『人生』と呼んでも差し支えないかも知れない。




…そして、更に加えて言うならば、城の主人である『魔王』の『第一形態』のレベルは『100』だ。

そこから更に『第二形態』そして『第三形態』と姿を変えて行くに連れてその『レベル』は上昇して行く。

魔族の中でも種を『超越』した存在。


その魔王にも届い得る様な存在、魔王と戦闘前に戦う『四天王』やナフティアの以前の姿『ナハト』でさえも

『85』から『90』レベル程にも関わらず。それらを超えてしまう様な化け物。



…確か、名前は疑問系の印によって判別出来なかった筈だ。故にプレイヤーの間では分かりやすく『裏ボス』や『隠しボス』と言った名で呼ばれて居た。


そんな化け物が、こちら側からどれ程長いのかさえ分からない尻尾をくねらせて、壁を破壊しつつ追いかけて来るのだ。正直言ってかなり怖い。


牙などナフティアを串刺しするだけに止まらず、容易く食いちぎれそうな程に巨大で。

その口から、ちろちろ除く舌さえまるで建造物を支えるワイヤーの様に大きい。


そう考えた矢先、奴はカメレオンの様に餌を絡みとらんと、こちらにその舌を伸ばして来た。

すると舌の動きを察知したのか、ゴーストが大きく結界に巻きついた鎖を引き寄せ舌を躱す。


ゴースト自身は物体を通り抜けてしまうため、舌に絡めとられる事は無い。それを走り抜ける回廊の中で数回繰り返した所で、


『ガァァァァァァァ!!!』


まるで痺れを切らしたかの様に、その大きな口を開けて蛇の化け物は思わず耳を塞ぐ様な雄叫びをあげると、

口に小さく光が集まって行く。


ーーー アレは…不味い!



「いけない!」


思った事とそのままに呟いたつもりが、丁寧な言い方になるも…そんな事は気にして居られない。

あの動きは知っている。『火球』だ。

アレを止めなければ、魔法に弱いゴーストは一溜まりも無く、いくらコチラが結界で守られて居ようとも無事では済まない程の威力だった筈だ。


咄嗟に手に力がはいった時、温かいモノが胸と足から右手に向けて流れ出した。


その力はやがて『白い光の球』となって、右掌に姿を現した。


「これは…私の…」


ソレを驚いた様に少女は見つめ、化け物の下顎(したあご)目掛けて投げつける。


ソレは『ナフティア』と言うキャラクターが持つ『通常攻撃』であり『唯一の自分から行う事の出来る攻撃手段』


ただただ『普通の魔力の塊』


…それだけのモノであった。故に、名前さえも無い程度の攻撃力しか無い。


だが、それでも相手の攻撃を妨害する程度には役立つらしい。


『オォォォォ!!』


強制的に閉じられた口によって、溜めて居た破壊の力は口の中で爆発を起こし。

化け物は苦しみの悲鳴をあげるながら速度を落とした。そんな時、






ーー 急に、開けた空間に出た。



今まで走り続けていたゴーストは、急に速度を落としてから立ち止まり。


ナフティアは物理運動の法則の元、ゴーストの目の前の床を勢いのまま削る様にして結界と共に突き刺さった。


通常であれば大怪我間違いなしである筈だが、法衣の効果故なのか、それとも結界を張っていたのが幸いしてか

、イタタタ…と言いながらも立ちあがれる程度には無事で有った。



「……ココは」


つい今し方まで起きた、ジェットコースター宛らの高速移動と掘削機もびっくりな程の建造物破壊の先に訪れたのは、



「…螺旋階段?」


そう、螺旋階段。


ゲーム上で7階層存在する魔王城に置いて、最下層から最上階まで続いていたソレは、途中でモンスターと遭遇(エンカウント)するし、一階層上がる事に謎解きやボスと戦闘になるなど、プレイヤー達に、最後に立ちはだかる試練の道標、

城の中央部が丸い筒状の様な空洞になっており、壁沿いを階段が下から上に向かって続いていて、現在ナフティアが佇んで居る様な、階段の途中に各階層に続けて居る大きな魔物も通れそうな回廊がある。


そして、空洞の中央には、真っ直ぐの塔が立っている。


ゲーム時代の頃は、気にせず…嫌、頭のどこかで気にはしていた…けれど、ゲーム内の雰囲気と言うか演出と言うべきか…


『人間』が作りそうに無い様な作りと言う『雰囲気』作りでもされてたんだろう。程度には考えて居た。


しかし、いざ現実として目の当たりにすると、…本当に変な…奇妙な作りだ。

見方によっては、アリの巣の内部構造にも見えて、虫を思い出した時の怖気が走る。



どうやら、魔王城の出口どころか城の中心部エリアまで連れてこられてしまったらしい。

まぁ、ここを一気に下れば出口は直ぐそこなので、わかりやすいと言えば分かりやすくて済むのだが…。


だが、何故あのままの速度で行かずに、此処で立ち止まったのだろう?、疲れてしまったのだろうか?。


剛くん…と名前を受け入れてくれたとしても、ゴーストはモンスターだ。しかも他のモンスターの様な肉体がある訳でも無いだから、疲れ知らずなイメージで有ったが…、違ったのだろうか?。


そう思って、螺旋階段の方から視線をデスゴーストの方に向けた時、ナフティアを守っていた結界がいつの間にか消えていた事に気づいた。…そして、結界に巻きついていた青い炎の鎖もまた、ゴーストの手元へと戻っていた。


俺が地面に結界ごとスライディングしてた時にでも回収したのかな…?


なんて、考えながら再びゴーストに視線を向けると…


彼は、ジッと自分達が来た道の方へ身体ごと向き直ったまま、臨戦態勢を取って居る。


さっきの化け物を警戒してるらしい。


まだ奴は姿を見せないが先程の俺の攻撃で、ダメージは多少は有った筈では有るが、まだ倒せては居ないだろう。当たり前か…。


何処か呑気な考えだったと、頭を振って切り替えた矢先、先程の化け物が顔を出してきた。


『ガァァァァァァァ!!』


回廊から頭だけを出し、雄叫びを上げる化け物。

その大きさを改めて目の当たりにして、デスゴーストが此処で停止した理由に思い至った。


この化け物は巨大だ、もちろんその大きさに見合った『重量』が有るだろう、


もしも仮にあのままの速度で逃げていたとしてだ、


壁にくっ付いてるだけの階段にその『重量』が耐えられるのか?、


仮に逃げて居る途中で階段が重さに耐え切れない崩れてしまった場合、どうなる?


ゴーストは良い…、物理的なモノはダメージにならず、しかも先程の私の部屋から此処まで空中に浮いて移動いた。

それに、度重なる事態の変化に忘れてしまいそうだったけれど、この城は崩壊して居るのだ。


幸い本格的な崩れ方は、ココまで来ていない様だが…、そこまで考えた時、化け物が動き出した。


長い尻尾を振りまわし、襲いかかってくる。



「…きっ!」


今日何度目かの悲鳴をあげそうになった所で、今度は俺の体に鎖が巻きつき引っ張られる。

臨戦態勢だったデスゴーストが動き出したらしい。


「剛くん!!」


俺を尻尾の当たらない範囲まで、化け物から引き離しつつ尻尾をすり抜けながら化け物の顔

目掛けて、斬りかかる。


化け物も頭に有る人の上半身の様な部分の両手の爪で応戦する。

時には、蛇の巨大な口や牙でゴーストを噛みちぎらんと、畳み掛ける。


対してゴーストは、それら全てを躱し着実に鎌を当て、『死の印』をゴーストに付与する。…だが、


「……いけない、ソイツには…」


そこまで言いかけた矢先、変化は起こった。


『アァァァァ……………!』


雄叫びと共に化け物が輝きはじめ…、

ゴーストも光に対して、距離をとって様子を化け物の見守る。


『…ァァァァァ!』


光が収まった時、まるで『ナニカ』が崩れる様な音が聞こえてきた


……もしや、崩壊が此処まで…?、と一瞬思ったが、直ぐに‥違う。と思い直した。

この音の発生源は、目の前の化け物だ。よく見ると顔の辺りの『皮膚』が崩れている。


『…アレは…やっぱり…脱皮』


『脱皮』

その能力の効果は、単純だ。


…『脱皮して傷を治す』


蛇系のモンスター共通の基本能力の一つだ。

…だが、その単純な能力も『レベル』があがれば上がる程に効果は増す。


そして奴の場合は『傷の回復』だけでは無い。


先程まで蛇の周りに纏っていた『黒い影』…『死の印』


……それが消えている。


『状態異常の解除』だ。


やばい…このままだと詰んでしまうかも知れない。



ーー 何せ、コイツには…、




光が収まったところで再びゴーストが蛇に攻撃をしようと飛びかかった。




「剛くん!、ダメっ!逃げてっ!」



そのゴースト目掛け、蛇は大きく口を開く。


今から止めようと、手に魔力を宿しても…間に合わないっ!


…先程、逃げていた時、俺達に仕掛けようとしていたソレが再び来る。



先程の時よりも大きな魔力が蛇の口に集まり、やがて『ソレ』が放たれた。




ーー 何せコイツは『魔術攻撃』まで持っているのだ。




こんばんは、こんにちは、おはようございます。

サルタナです。


挨拶から早速ですが…、謝罪を一つ。

二月は中々更新出来ず、申し訳ありませんでした、なんとか時間がある時に、コツコツ執筆して投稿と言う形にしていたのですが、なかなか投稿出来る所まで至れず…。

三月になってしまいました。ブックマークしてくださった方々、申し訳ないです。


では、今回の投稿ですが…だいぶ長めに…、長めに書かせて頂いた上に前回投稿した作品とは異なった点の一つとなっております。

まぁ前回の時に書きたかったのですが…展開が長い…と言うコメント・感想の元、ナフティアの部屋から此処までの過去の事など、書くことを諦めていた事でした。今回は書けて良かった…かな?と思ってます。

読者の皆様に楽しんで頂けたら幸いです。


では、また次回の投稿でお会いしましょう。


最後に、この小説を手にしていただきありがとうございました。

ブックマーク、ポイント感謝です。

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