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月のウサギ人形とゴースト、どうやら俺の記憶の追憶の様ですよ?【月】

少女は、まるで落ち葉が風に舞う様に、

ゆらりゆらりと、

状況と言う名前の風に流されゆく。


その心もまた、

ゆらりゆらりと大きく揺れ動き、

それが変わってしまった自分故だと、まだ気付いて居なかった。


注意・少しだけ不快・胸糞悪い描写が入ります。それによってご気分を優れなくなる場合は、読み飛ばして下さい。

もしもそれでも読んで頂けて、ご気分が優れなくなった方々は、作者と子供大好きの同士です。


遠くから地鳴りの様な音が聴こえる。


それは、崩壊の足音が迫ってる事を示している。


そんな不吉な音を耳にしながら、少女に新たな脅威が迫っていた。


「くっ!?」


風切り音が鳴る、そして、その直後に爆発音と風が少女をまるで木々の木の葉の様に吹き飛ばす。


少女は反射か、或いは偶然か?、自分の背後に飛ばされると、僅かによろめいた足元に手をつき彼女が元々立って居た所に目を向けた。


すると、大きな鎌を持った影が一つ見えた。



影の主は、全身が大きな黒いフードの様な見た目、足はなく本来腕が出ている筈の袖元からは黒い霧の様なモノが覗き、ソレがまるで腕の代わりの様に大きな鎌を手にしている。


本来顔があるべき所が、まるで穴の様に月明かりで僅かに照らされた廊下においてもみる事叶わず、青い炎の様なモノが一つ。まるで目の様に揺れて居る。


そんな不気味とも言える姿を…少女…俺は知って居る。




「デス…ゴースト…」




デス・ゴースト。そう名前にある様にゴースト系のモンスターで有る。


そして、一口でゴースト系のモンスターとは言っても姿は千差万別で、その中に置いて奴は取り分け希な存在であった。


その理由の一端として、奴のレベルで有る。ナフティアの前世の記憶が正しいので有れば、奴のレベルは70前後。

そして本来なら魔王の城、それはゲームのラストダンジョンであり最終ステージとも言えるエリアの中において、モンスターの出現レベルの殆どが90代なのである。


魔王城の中でもレベルだけを見れば最弱の部類に入る。


だが…


俺が最初に視界に捉えた『ソレ』、つい先程鼻先を掠めた大鎌、俺の上半身ほどしか無い身の丈のゴーストが振り回すには大き過ぎるといえる程に長く、チェーンの様なモノが巻きついて居る。


デスゴーストが持つソレが先程『稀な存在』としたもう一つの理由。


その能力は『デス


その刃が捕らえた相手に対して『印』を付けてアイテムの使用を制限し、一定時間後に、死をもたらすと言う。


出現エリアに対してレベルは低くとも、見た目も相まって正しく死神を思い浮かべてしまいそうな程強力な能力。


俺の背中に嫌な汗が流れ、僅かに足を引いた。

眼前に迫る脅威から目を逸らす事は出来ない…。前世の森の中で熊にでも遭遇してしまった時の様な心境。

どちらの方が恐ろしいか?と言う甲乙はつけ難い、何せどちらの結末も下手をしては同じ。


もちろん、ゲーム時代は対抗作はいくつかあった。


それは至って簡単。


鎌の攻撃を防御しつつ、付いてしまった『印』はナターシャに状態異常を解除する術を唱えて貰えば良い。

もしくは、パーティの仲間に道具(アイテム)で解除して貰うだけだ。


或いは、能力を食らった後に蘇生アイテムや魔術を唱えて貰う、と言う事。…それだけなのだが。


今の俺の現状は一人(ソロ)だ。

道具を使ってくれる仲間が居る訳でもないし、魔術を唱えてくれる相手も居ない。


そこまで考えが届いた時、再びゴーストが動き出した。


大鎌を振り回して迫ってくるのに対して、俺は


『ギャーー!!』


そんな乙女らしからぬ、雄叫びをあげつつ一目散に逃げ出す。


右に左に、時には跳躍し。大鎌を回避しながら出口を目指して行く。


当たり前だろう、先程初手で当たらなくて良かった。

現実となった今、あんな大鎌で斬られては簡単に真っ二つになってしまうに違いない。

一定時間…なんて、待つ余裕もなく出血多量でお陀仏だ。


ただ生きる為に逃げる俺、

天井から砕けた瓦礫で足場は悪いが通れない程ではない。


そんな恐怖の鬼ごっこの最中、何度目かの曲がり角を抜けた先に再び迎えた別れ道。


「…はぁ…はぁ」


息が切れ始め、そろそろ巻いたか…?とチラリと背後を様子見ると、



『ゴォ…ォ…ぉ…』


聴き取りにくい鳴き声をあげて、変わらずゴーストは追いかけてくる。


俺は悲鳴をあげる体に鞭打って、速度をあげて角を曲がるとそこに居たのは、



『キィ!キギィ!ガァ!』


と、意味の分からない鳴き声をあげた小鬼(ゴブリン)

瞳孔の無い金の瞳が暗い廊下の中で、いくつも輝いて居る。



「…いけないっ!」



前門の虎に、後門の狼。

前はゴブリンの群れが、廊下にひしめきあい、背後は即死持ちのゴースト。


もしかして…あれ?終わった?、俺詰んで無いか?。


そう思った時、俺の横を高速の物体が通って行く。

その高速の物体は、ゴブリン達をたやすく吹き飛ばし、群れの中に道を作った。


それは触れた者へ死を齎す青き炎。

ジャラジャラと言う音を立てながら、戻って行くソレは先程からよく目にしていたモノ…、ゴーストの眼玉と同じ炎を纏った大鎌だった。



投げた鎌を鎖によって再び手にして居るゴースト。まるで…次はオマエダと言って居る様に見えて、

再び俺は全速力で逃げ出して、近くの部屋へと駆け込んで行った。







ーーーーー





「はぁ!…はぁ!…はぁ!…」



心臓がバクバクと悲鳴をあげる。見つかってしまうかも知れないと言う想いとは裏腹に、肩で息をする程にあがった呼吸音が五月蝿い。止まってしまった脚に力が入らない。


当たり前だ、死神の様な奴と出会ってからコッチ、ずっと全力走を続けてきたのだ。

身体の悲鳴を無視してココまで来れただけ、今の身体が凄かったのだ。


「…痛い」


何処か、途中で捻ってしまったのだろうか、

足首の辺りが今更ながらに痛みを訴えかけて来る。



「何処かしら…ここ…」


いくらナハトの時に住んで居た場所とは言えど、無我夢中で走って来て、たまたま見かけた部屋に駆け込んだのは、下策だったかも知れない。

前世の自分が当たり前に置かれた環境下には、簡単に現在地を知る術は有ったし、よっぽどの方向音痴か、機械音痴でも無い限り、迷う事も少ない。

都心部、もしくは人気の無い田舎で無ければ、そこ行く他人に聞いても良い。

まぁ、口を開く事さえ少なくなって居た前世の時代。時代故なのか、コミュ症なるモノが満映している事によってか、誰かに話しかける事さえも難しい。そんな静かな時代ではあったが…。


だが…今は前世のそう言った手段を取ることさえ叶わない。自分は目覚めたばかりで、身体に宿った『二つの記憶』の中にも、自分の居場所を教えてくれる様な便利な手段は無く、ゲーム時代の様な『MAP(地図機能)』なんて便利な機能がある訳でもない。

更に言うと、この場所に人など立ち入るわけもない。


「どうしよう…」


部屋の外にはモンスターの群れ、なんでこの場所にモンスターが…なんて内心毒付きたいが、よくよく冷静になって考えてみれば当たり前だ。

マサトとしてプレイした時、よく雑魚的と遭遇(エンカウント)して居たでは無いか…。

ゲームとしては当たり前のソレだ。そう『ゲームとして』ならば。

ソレが現実としてなった場合こう言う事だったのだろう。


何か無いか…と、部屋の中を見回した時、俺はある事に気づく。それは…臭いだ。

慣れ親しんだ様な、懐かしささえ覚えた臭い。


「コレって…」


アパートの部屋の玄関先とも言うべきか、僅かばかり続く廊下を抜けて、扉を開けるとそこは…



「ここは…」





ーーーーー



キィと言う高めな音を奏で、ゆっくりと開いてゆくと。部屋の中は、明るかった。

時折…外へと続く背後の壁から地響きが聞こえる。


ソレは奴らの足音なのか、それとも崩壊の足音の方か?。


『明』と言う字をご存知だろうか?。…いや簡単な漢字だ、知らない人は…もしかしたら居ないだろう。

意味は簡単で『明かり』光源を指す言葉。


読んで字のごとく、太陽を表す『日』と月を表す『月』が合わさった文字。

元来、この言葉は異国より伝来したモノで有り、風景から来ていると言う。


俺は、そんな前世の記憶を今、目にしている部屋の光景から、思い浮かべて、窓から指す静かな月明かりに照らされた部屋の中を見回した。



ドアの向こう側にあったのは、一言で言うと『小さな書斎』だ。


大きめの本棚が二つと、小さな机、そこだけを見ると何処か勉強部屋の様にも見える。

その反対側には窓と一人用のベッドがあった。

花瓶や調度品なんてモノは無く、何処か質素な雰囲気が漂う部屋。

唯一の調度品とも言えるのは、ウサギに似たモンスターの形をした人形が、ベッドの脇に鎮座してる程度。




「ここって…もしかして、…私の部屋?」


そう…俺の部屋。疑問形なのは、何処か引っかかる様な違和感が、まだ有るからだ。

『俺』と言うよりも『オレ』の部屋?と呼ぶべきなのか?、不思議とソレがしっくり来ている自分がいる。


つい最近まで…当たり前に使って居た部屋だった気がする。


いや…思い返してみると入ってきた時の扉は、見慣れた扉と言うべきか真っ黒な木で出来た扉では無かったか?。

ナフティアが、まだナハトのだった時の部屋。

自分の中に彼だった記憶はあるのに、なぜだろう、言い表し難い様なこの気持ちは。


そう不思議に思いつつも、部屋の中に足を踏み入れた時。

俺の足元を『白いナニカ』が通り過ぎて行った。





ーーーーー『ここが、貴女の新しいお部屋です』





そんな声が自分の上から聞こえて来て『私』は、声の主を見上げる。

顔はまるで逆光にでもなっているかの様に、暗くて見えない。


何となく全体的にメイド服のような物を着てる様なその人。


『貴方たちは、指示があるまでココで待ちなさい』


達?複数の人に向けた様な、彼女?の言葉に私は視線を彷徨わせる。


すると、自分の傍に『小さな青い人魂』があった。ゆらり…ゆらり…と言う揺れる火の玉が一つ。

メイド服の影が言ったのは、この子の事だろうと当たりをつけて、私は部屋の中に歩みを進めると、メイド服の影は、消えて行った。

高い壁、小さく幼い少女にとっては、広々とした部屋に一人。


……寂しい。


思わず、ついさっきメイド服の人から貰った『月ウサギの人形』を強く抱きしめる。

首にチェーンで繋がってる小さな時計付きで、ウサギさん人形を持っていれば時間もわかると言う安心使用。


それに、月明かりはあれども…それでもちょっと暗い。


……まだ眠くも無いし、どうしよう。


ベッドに横になったとしても、幼い少女が新しい部屋で直ぐに寝付け無いだろう。


……何か無いかな?


特別な何かが置いてあるとまでは、考えて無い…例えば、食べ物とか。自分の知らない様な変わったオモチャだとか、

落ち着かないのだ、足が進むまま、目につくままに部屋の中を散策する私。



ーーー そうして無いと耐えられない。


何に?何から?耐えられ無い?


その答えは簡単『恐怖』に、だ。


自分は、ほんの数時間前に拐われて来た。魔王の手によって。


母親にとって大事なモノを魔王はたくさん奪った。


月の集落の住人の命、食べ物、貴重な物。

そして、一族にとって大事な…大事な一族の族長の証でもある『月の鏡』と『私自身』

私は、母親がその身に宿した『月の鏡』を無理矢理引き剥がして、奪われるのを魔王の魔法によって作られた牢屋の中から見てる事しか出来なかった。


ソレが悔しくて、悲しくて…、辛かった。


幼い自分の無力さを呪う、なんて発想さえも産まれない程に少女は……幼かった。


「お母さま…」


揺れる視界の中、再び人形を強く抱きしめると、唯一自分の目線に近い高さのベッドに、足を運んだ。


「お母しゃま…」



それは、私が8歳になる数年前初めて母親の事を呼べたばかりの頃から



『お母しゃま…じゃありませんよ?ティア?、お!か!あ!さ!ま!ですよ?。』


『お!か!あ!しゃ!ま!』


『んーーー!可愛いけどっ!惜しい!』



ほんの数時間前まで当たり前にあった幸せな時間。

幼さ故の寂しさからの防衛か、無意識に口から零れ落ちた言葉は、お母しゃま…。


そう言って間違えれば、母が叱りに来てくれる。以前みたいに。


そんな表面には出てこない、出してないつもりの、淡い淡い期待。



『なまむぎなまごめなまたまおー!』


『よく噛まずに言えたわねっ!、偉いわよ〜!ティア!…最後の所は、もう及第点にしちゃいましょ!』


『ましょー!』


『今なら言えるわっ!さん!ハイ!お!か!あ!さ!ま!』


『あい!、お!か!ら!さ!ま!』


『惜しい!もうちょっと!』


『あち!、お!か!あ!さ!まっ!』


『!?!?、よく言えたっ!、よくいえましたよっ!ティア!』


そう言って、母は抱きしめてくれて、微笑んでくれて。頬ずりしてくれた…。3歳前後の朧げな記憶。

8歳だった私は、まだこの時覚えていた。


ティアとは…、成人の16歳を迎える以前に呼ばれる子供の名前のようなモノ。

本当の名前は、成人になってから呼ばれる。それが『しきたり』一族の決まり事なのだと、母親は以前教えてくれた。


『早く貴女の『本当の名前』を呼びたいわ〜』


そう今日まで言われて来た。

無意識に、頬ずりされた時の自分の頬に触れると、




ーーー 痛みが走った。




『コイツの命が惜しくば、月の鏡を差し出せっ!』


さっきまでの優しい記憶では無い、いやだ!思い出したく無い!。


そう思う気持ちとは正反対に、頬の痛みが先ほどまでの記憶を思い出させる。


『はははは!、誰がコイツを返すと言った?、コイツは大切な月の鏡の継承する血筋』


『この!オレ様が!、世界を手に入れる為の大事なピースなのさっ!』


『ムダだ!ムダだっ!力の大元の鏡を失ったオマエ如きに、ナァ!ニガできルゥ!?』



『大丈夫だ!安心しろ、オレ様がコイツを有効につかってやるよ!もちろん!丁重に扱ってナァ!』


『人間は簡単に壊れちまうカらなぁ!!』


母と魔王のやりとりだ、母親の声だけが…私の耳に届かない、黒い霧の様な牢屋の中で、頭の中に直接聞こえる魔王の声だけが聞こえる。


ソレから最後に見えた母親の姿は、血に染まった大地にその身を預け。

こちらに向かって何かを叫びながら、手を伸ばす。


そんな母親の姿だった。




そこから、魔王の城に連れてこられ母親との別れがショックだった私は、散々泣き喚いた。


すると、魔王は地面をヒビが入る程に叩き。大きな音でびっくりしている私に向けて言った。


『もう!オマエひとしきり泣いたダロゥ?、ウルセェんだよっ!』


片手で顔を下から挟む様にしてくる。


『ブサイクだなぁ!、オレ様が怖いかっ!?』


『良いぞ!もっと怖がれ!なんならこのまま目玉を取ってやろうか!?オマエらは綺麗な目をしてるもんなぁ!』


『オレ様のお気に入りの指輪にしてやるかっ!?』


そう言って、片手で顔を下から潰す様にしてくる。



…痛い!痛い!。




恐らくコレは軽く頬を摘んだだけ…摘んでいるだけ痛みは無い。だから徐々に力を入れて私を怖がらせたい…と魔王は思っているのだろう。だが違う、摘まれた最初から痛い!


大人と子供、例え同じ人間だったとしても、身体の頑丈さには大きく!大きく差がある。

顔の肉を少し動かす程度、大人なら全然痛くは無い…だが、子供の時はどうだ?。


大人になってから、痛くも痒くも無い事。頬の中を動かしただけ…の事が、子供にとっては耳を力一杯引っ張られたかの様な痛みが走らない、と何故断言出来る?。


ましてや、魔王と私、最初から身体の作りの異なるのだ、種族さえも違うのだから。


魔王の力加減なんて、アテに出来なかったのだ。



『ごめんなさい!もう!うるさくしましぇん!ゆるしてくらさい!』


そう…小さな…小さな声で訴えかける私。



『そうだ!ソレで良いンダ!やはり人間の恐怖は良い!』


『大人しくして居れば、有効に使ってやる約束だからなっ!オレ様は約束も契約も守る男だからなっ!』


『誰かっ!そうだっ!博士んとこのメイド!メイドは居ないか!?』


『ガキは邪魔だっ!、とっとと適当な部屋に連れてユケ!』


私の恐怖に染まった表情や態度を見て気分を良くした彼はそう言って、私は魔王の前を後にした。



紅葉の様な小さな私の手が頬に触れる…まだ痛い…、

頬に涙が流れる度に、痛い…


優しいお母様と触れ合った時の記憶を上書きされてしまった様で…とても痛い。


本当は、声を出して泣き出したい…だけど、もしも、また泣いたら魔王がやって来て…私に痛い事するかもしれない…怖い…。


ーー 痛い…悲しい…、どうして?わたし、こんな事になったの?。


ーー 嫌だ、助けて、何か?なにか?、この気持ちを抑える何か無いか?。何でも良い。



そう思って再びベッドから、部屋の中を彷徨く。


ウサギさん人形を抱く手が冷たくなる程に強く握りしめて散策する事、数分。


自分の目の届く範囲で、見知ったタイトルの本が見えた。


「アレは…」


パタパタと本棚に駆け出して、小さな身体をめいっぱい伸ばして本を手に取る。


「んしょ!」


目的の本に手が届くも、他の本もいくつか落ちてしまった!


「あわわわ!」


大きな音たてちゃった!!

焦る私、入り口付近と落ちた本を交互に見比べ、先程のメイドや…魔王が来ないか、片付けなきゃ!と言う気持ちでいっぱいになって!。

ひとしきり混乱してから、落ちた本を本棚へと戻すと足早にベッドの上に戻った。



「良かった。ばれてない…みたい」


小さな胸を撫で下ろし、ウサギさん人形と一緒だったからベッドに運ぶのも大変だった本に視線を落とす。


その本のタイトルは『ゆうしゃのでんせつ』


母親が枕元で語ってくれた昔話の一つ、何故かコレに登場する勇者は『なまむぎなまごめなまたまごー!』と言って、悪い魔物によって泣いてる子供達に代わって、魔物を倒してから不思議な呪文の様なソレを大きく叫んで笑わせてあげるのだ。


読みたい…そう思って本を開いて見ると



「んぅ…、ちょっと暗くて読みにくい…」


そう、窓から刺す月明かりが雲に隠れてしまった為に、かなり暗い、見えないほどでは無いけど弱くなってしまった月明かりだけでは文字が読みにくいのだ。


実は机の上に、ランプが置いてあるのだが…、小さな身体の視野には微かに見えていても届かないし、使い方なんて知らない。


「どうちよ…」


どうしたものか?…そう思った時、自分の頭の上が少しだけ明るくなった。



ーーー 『まぁた、暗い部屋で御本なんて読んで!目がわるくなりますよっ!ティア!』



そんな声が頭の上から聴こえてきた気がした、お母様の読んでくれた本の続きが気になって、何とか先に読んでみようと、自分の拙い語学を駆使して絵本の解読をしようとしてた時、

母親は優しくそう言ってくれたのだ、


…だから、



お母様が来てくれるわけないのに……、期待してしまったのだ…。


顔を上げた先に居たのは、いつもの優しい微笑みを口元に浮かべた母親では無く…。



この部屋に一緒に入った『青い炎の人魂』だった。



ほのかに期待してしまった事が、現実に裏切られた様な気持ちが少女の胸には重く。


僅かに絵本のお陰で上がった気分が、再び涙となって溢れ落ちそうになった時、


目の前の青い炎が明るさを増して小さく揺らめく。


「…もしかして、照らしてくれてるの?」


私の問いかけに応える様に、また炎は揺らめく。


「私の言葉、わかる?」


そして、また…ゆらりと揺れた。


自分の問いかける度に、火を大きくしたり小さくしたりを繰り返してくれる。

先程まで、自分の近くを漂って居たのは、なんとなく気付いて居たけど意思があるとは思ってなかった。


意思疎通…とまでは、いかないけれど、それでも暗い部屋に1人ぼっちじゃない。

それだけで、ただそれだけで、私は救われた様な気持ちになった。


「あなたのお名前は?」


…あれ?反応が無い?


「もしかして、お名前無い?」


ゆらり…


「そっか…そうなんだ、お名前無いんだ…」


ゆらり…


「私ね、ティアって言うのっ!」


「そんでコッチがさっき、メイドさんから貰ったお友達のウサギさん!」


「ねぇ!私とお友達になりましょ?」


ゆらり…、ゆらり…、そして、また…ゆらり。


「お名前無いと不便だよね…、そうだ!私がお名前つけて良い!?」


ゆらり…


「ありがとう!」


ゆらり…


「そうだなぁ…」


私は手を組む様にして考えながら、目の前の青い炎の友人を見つめる。


「青い炎が、ごうごう!ごうごう!燃えてるみたいらから!」





ーーーーーー『(ごう)くん!』





辛い一日の中で、それはまるで暗い暗い部屋の中に居る様だった私の心に、窓から一筋の『明かり』が刺したかの様な出来事。


それは『日』と言う窓から刺した月光が、床に『月』模様を描く様。



ーーー 『明』





それは、私に新しい友人が出来た瞬間だった。






ーーーーー







ふと…、俺は目が覚めた。


どうやら俺はいつの間にか、この部屋のベッドに上半身の預ける様にして眠って居たらしい。


「今までのは…夢?」


だったのだろう、だが…確かに覚えて居る。


魔王城に拐われた直後の頃の記憶、俺が洗脳される以前の記憶だ。


そう言えば、さっき月下美人と別れた間際の時も、当時の『老婆(ばあや)』の記憶を思い出して居たっけ?


そう思って、おもむろにベッドの方に視界を向けると、ベッドの隅っこにソレは座って居た。


先程の夢にも出ていた『ウサギさん人形』


だが…何かおかしい、と言うか…足りない。


そうだっ!このウサギさん人形には、チェーンの付いた時計…『懐中時計』無いのだ!


とそこまで、考えた時



『ゴぉ……ぉ』


聞き覚えのある鳴き声が真上から聞こえてきた。


すかさず鳴き声の方を見上げてみると……デスゴーストの『青い炎』の様な目玉と目があった。



思わず驚いて叫びそうになった所で、デスゴーストは、ゆっくりとベッドの上に降りてきて。

黒い霧の様な片手?でウサギさん人形を持ち上げると、ローブから何かを取り出した。


それは、小さな『懐中時計』




ーーーーー『コレね、私とウサギさんからの贈り物よっ!私とウサギさんと貴方の!友達の証だからねっ!』





ーーー 『なくしちゃ、メッ!だからねっ!』



さっきの夢の続きが、頭の中で木霊する。



「貴方、もしかして…剛 





そこまで言いかけた瞬間、部屋の壁が吹き飛び、本棚がデスゴーストを襲った。


こんばんは、こんにちは、おはようございます。

サルタナです。

今回は、前作の時には書かずに流した様な所にあえて触れてみようと言う感じで描いてみました。

以前は三人称多めでしたが、せっかく一人称で今まで頑張ってるなら、色々やってみよう!と言う感じです。


さて、前書きでも少し触れましたが、今回は少しだけ嫌な描写を書きました。ゴメンなさい。

つい最近までこの手の嫌なニュースを見て来て、それが嫌で書いた様な所は有ります。

コレも今回であえて書いた一つの理由と言う所です

とても大変なのは、なんとなくでしか知ってる程度の私から言える事では無いかもしれませんが…、

子供への暴力反対!断固!反対!、


子供は、私大好きです!、イエス!ロリータ!ノー!タッチ!なので、そこの所はご理解頂きたく思います。


…いや、コレ違うか?合ってる?

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