どうやら最終決戦と言う名のプロローグの様です
太陽の力を借りて輝くと言われた…月の光。
その輝きは、他の星々の光を飲み込み、己が輝きのみで大地を照らしだす。
そんな力強くも眩い命の光の降り注ぐ…そんな太陽の光
…とは異なり。
例え、闇を払う事は敵わずとも、…多くの星々の光と共に、生ける者達の闇世を照らす。
慈愛に満ちた…淡い輝き。
例えその光が、多くの『星々の煌めき』や『太陽』とは違って、仮初の輝きだったとしても…。
月は、その微笑みを絶やす事は無い。
例えその微笑みが
狂気の光に見える日があるとしても……。
ーーーーー 月の輝きが在った。
光は大地へと向かい、空気さえも無い空間を目的地に向かって真っ直ぐに、真っ直ぐに進み行く。
ーーー 空気の中、『空』へとたどり着いた。
その空を自由に闊歩する動物は無く、ましてや者も無い。光は尚も歩みを進めて行く。
その歩みの速さは、神の定めたこの世界に置いて、何者よりも早く、速い。
その歩みを止める事は即ち、目的地に辿り着いた時だ。
ーーー その筈だ。
多くの光は大地に分け隔て無く、たどり着いた。
ある光は、暗い夜道を歩み、明日の日が昇って行く前に目的地へと、誰よりも早く街の市に着き。がっぽりと稼いで野郎!…と言う明日への野望を胸に。
荷馬車に重たい荷物を背負っては下ろし、また同じ事を繰り返している。そんな彼等…旅の行商人達に方角と時間を告げる。
彼等はそれなりに世襲を渡り行き、それなりに賢いのだと自負している。だから月を見て方角も時間も、だいたいは知れる。…時間と言うものは彼等にとっては有限であるのだ。
それに『時計』なんて代物は、高価で力仕事ばかり回されがちな程に下っ端の彼には、まだ手が届くかさえわからないのだから。
月明かりに白んだ自分の息を、そっと赤切れだらけの両手に吹きかける。いつか、いつの日か届くと信じて。
ーーー そう願う、想いを胸に。そんな彼の足元を転ばない様に、暖かく照らす光。
またある光は、大地の隣に鎮座する『海』と綱引きをしてーー 押しては引いて、押しては引いてと大地へと小さな波を起こして、大地へと小さな貝殻の贈り物を残して行った。
小々波に押し出された空気は、小さな小さな『風』となって、砂地を駆け回り ーー ざざーんざざーん。
そんなリズムを小声で刻んで、砂に吸い込まれて行く小々波の『音』を伝えて走って踊って行く。
ーーそんな小さな風達が、潮風となって海岸を進む様を見守って行く光。
光は星々を照らし、またこの大地を明るく照らしてくれる。
ーーその筈だ。
だが、時に光は大地へとたどり着く事が阻まれる。
ーー 『雲』だ。
水を両手いっぱいに抱え込んで『潮風』となった風達が、お互いに寄り添い合って世界を渡り歩く様。まるで、それは先程の旅商人達の様に。
時には、恵の雨となって大地に降り立ち、そのまま彼方へ此方へと流れ流れて…
…そして再び、互いに寄り添い合あい、『川』と成って故郷の海へと帰する。
その旅路の途中の雲は、時に黒く分厚く『月の光達』の前に立ちはだかる…。
世界を回る風と水の旅路と、月の光が大地にたどり着く旅。その二つの道が交わる時だ。
風と水達は大地に『月の光』に先立って降り立ち、風は滑り台を降りる様に、
水は月の光の様に真っ直ぐに、時には風と共に滑り台に乗ってだ。
そんな風と水達が作り出した『雲の壁』そこに背を預けて寄り添う女性の様に待つ『月の光』。
まるで待ち人来たざると言った様に、光達は何処か寂しそうだった。
時に単独の強い北風達が…邪魔だよぅ!と言わんばかり雲を流して、切り裂いて、隙間を作る。
待たされた光は大喜びで、その隙間に顔を覗かせる様にして、大地へと降り立って行く。
ーーーー そして、
そんな自然のありのままの『雲』とは違う、『異質な雲』が在った。
遍く大地…その隅々まで照らし行く光ーー彼女らを頑なに拒む黒き暗雲。
月の恵みを、大地から断たんとする悪しき悪しき雲。
あれだけ鮮やかに雲を散らして見せた北風がかなわず、ただ雲の下の轟音を響すだけ。
どんなに、どんなに挑んで見ても、その大地の上から動く事は無い。
先程の雲と似ているが、水が降り立つ音が聴こえない。役立てずごめんね、と言って北風達は過ぎ去って行く。
それとは別に、その雲の下だけに、先程の北風達とは違った風達が暴れ回る音が聞こえてくる。
彼女らの知己なる風達では無い、別のナニカが支配する風だ。
多くの光達は悲しかった、今はもうずっとこの下を照らせて無いと。
ーーー だが、彼女らは諦め無い。
月の女神の慈しみと愛を大地に届けるのが使命と己を鼓舞する。
時折に、内側の風が暴れすぎているのか、その『暗黒なる雲』もまた先程の雲の様に隙間が空くのだ。
まだ…希望はある。
そして、今か今かと逸る気持ちを押さえ込み、待ちに待った隙間が空いた。
ーー 大地に向けて月が顔を覗く。
それは、まるで襖に隙間が出来る様に。それは、まるで木陰からこっそり覗き込む様に。
一瞬の合間に光は刺す様に大地に向けて進むと、別の光が瞬いた。
ーーー 雷の光だ。
その姿に遅れてやって来た『轟音』達が、空気を海を揺らした。
びりびりと空気に響きあげ、雷の軌跡もまたビリビリと帯電している。
月と雷の刹那の照らし会いならぬ、照らし合い。
それらの照らし合せによって見えた影が一つ在った。
その影は、風に贖い続ける天の暗雲と同じ様に、海の上…虚空に漂い。
ソレの大きさはまるで『島』の様であった、だが普通の島とは異なり海の上には無い。
光達はその島をそっと見回すと、その島の真ん中に『街』の様なモノが在った。
そして、その更なる中心部に一際大きな『城』がある。
だが…光達は少しの違和感に気づく。『城』と言う物は人が作った建造物の筈だ。確かに人が作った物も大きくは有ったが、コレはそれよりももっと…人が住まう物よりも大きい…と。
ソレは街も城も…だ。全体的な大きさが違う気がする。
そんな事を思っていると、他の月の光達は雲から刺した光の道の様に真っ直ぐに大地へと向かって行った。真っ黒な海に拒まれ涙目になっているモノや。島の各所を雷と共に照らす光達。
そんな中、城の上部に三つの塔が有った。
高い場所を好む雷達は、塔を目指して降りようとするが…阻まれる。
よく見ると雷達がぶつかって行く度に、雫が滴って生まれた波紋の様なモノが見える。どうやら見えない膜が島全体を覆う様にして存在しているらしい。
高い場所に降りたい雷達が、何度も膜にぶつかって歯軋りしているのが…ちょっと可哀想に思えた月の光達だった。
そして、丁度真ん中の塔の上、雲の切れ間が出来た。
切れ間から真っ直ぐに真っ直ぐに塔に向かって光達が舞い降りる。
月の光達は膜に遮られる事は無く、悠々と通り抜けて行く。雷達にちょっとだけ手を振って…
三つの塔の真ん中に小さな『天窓』が在った。
月の光の彼女達は天窓の中へと、入って行った。
ーーーーーー
暗闇に刺す一筋の月の光は、そっと床に降り立った。
何処か冷たい様な神々しさを覚えるその輝き。
まるで舞台の上に立ちスポットライトを浴びている様に、その一点を除いて周りが見えない。
光達は、そっと見渡すと ーーー
ーーー 冬の黄昏時を思わせる様な暗闇の中で、一つの明かりが瞬いた。
それは、仄かに肌寒さを覚えながらも、灯を反射した。そんな柔らかな雪の光では無く。
月の淡い光でも無い。
ーーー 鋭く輝いた光。
光源が殆ど無い、夜闇の様な暗がりに中で、その瞬きは…一つ、……また一つ、と次第に数を増やし、時に熱を帯びたかの様に赤く迸る。その光源足るは二振りの剣の様で有った。
剣は激しく互いを引き合い、風を切り裂く音を奏であげる。
その音と剣の軌跡に照らしだされたわ、担い手が二人。
1人は、短く逆立つ紅き髪を僅かに揺らし、夕陽を思い起こさせる様な双眸に、胴回りや膝下を覆う褐色の鎧、上質な生地で出来たであろうズボン。そして首元に髪と同じ紅の長いマフラーを旗めかせている。
その者は、頭の上から足先まで『赤かった』ーー それは返り血だけでは無い。
己が身が傷付いただけでも無い。その者が持つ『魔力』によって赤く紅く ーー その身を染め上げている。
ーーそれはまるで燃え上がる様に、それで居てこの暗がりに贖い、その身をもって照らし出す『太陽』の様に。
ーーー 片や、
1人は、紫の長い髪を背に遊ばせ、野生動物を思い起こさせる様に、紅い双眸。相対した紅き髪の少年と同じ様に、黒紫色の首元を隠す程度の短いマフラーを巻いている。
その者は紅き者に対して『黒かった』
剣を重ね合わせる事…数合、紅の者が動き見せた。
大きく柄を突き上げ、紫の者の空いた胴に蹴り、褐色の鎧に包まれた左手を横一線に振るう。
その手が合図かの様に、紅の者周りに『火の玉』が現れた、その数は五つ。紫の者に追撃する。
一方で紫の者は、剣を手放し自分の背後に手を着き一回転すると丁度、黒の者が両の足を着いた所に…その剣が落ちて来ると、そのまま構えをとらず大きく距離を取った。
剣の腹に左手を添え、剣先まで撫でるように滑らせると、剣は『黒い火』に包まれ、すぐさま紫の者は紅の者目掛けて駆け出した。
虚空に火の道を作りあげる様にして紫の者へと迫る火の玉の軌跡を、首を傾げ、時には飛ぶ様に避け。
その内の一つを己が愛剣で斬り払い、紫の者が駆け抜けた後には、火の柱が複数立ち上がる。
己が姿形の一部置き去りにする様にして駆け抜ける紫の者。
紅の者は、それを再び迎え撃たんと愛刀を握りしめると、再び剣が交差する。
紫の者が持つ剣が放つ『黒い火』に対して、紅の者が持つ剣は『太陽を思わせる褐色の帯びた白き光』
その輝きによって形作られた剣は、相対する紫の者の剣に対抗する様に、輝きを増して行く。
そして今度は紅き者が大きく弾かれ、その勢いをそのままに、地を蹴って後ろに飛んで行く。
その最中、紅の者は一瞬奇妙な行動を起こした。
己が輝かしい光の剣、その先…刀身の先っぽの部分とも言うべき場所に左手の拳を添えると…、そのまま剣を塚に向けて潰して行く様に左手を動かして行く。
まるで己が左手に剣を突き刺さして行く様な動きにも関わらず、紅の者は構わずその行動を続けて行く。
すると、みるみる内に刀身が消えて行き…よく見ると、左手に拳に隠れてしまうほどの鞘の様なモノがあった。
紅の者の上半身程度の長さ、刀身の形だけを見れば長剣程にあったソレが拳程度の鞘に消えて行くのは、奇妙な光景と呼ぶに相応しいだろう。
こうしたソレは刹那の時間だった、剣を鞘に納めると言う…たったそれだけの行動だったのだから。
納めた鞘を『くの字』にも見えるナニカに突き刺す紅の者。
そのまま右手に水平に構え ーーー撃った。
銃弾は真っ直ぐに紫の者の胸を捉え……無かった。
よく見ると胸元に黒い渦出来ていた。
その様子を見るや否や、何かを察した様に直ぐさまその場から避ける様に右手に飛ぶ紅の者…その直後。
今まで紅の者が居た場所が爆発を起こした。
紅の者はその爆炎に飲まれ、姿を隠す。
相反する光を放つ彼等。
ーーそんな彼等を見つめるは六対の瞳。ーー人数にして三人の姿が在った。
1人は、白と黒で統一された修道衣を身に纏い、薄っすら暗いこの場でさえも輝いて見える金の長髪の少女。
透き通る様な白い肌の手を重ね合わせ、神に祈るかの様に膝ま付いている。
修道衣の上からでも分かる女性らしい起伏の富んだ、女性らしい柔らかな線の細さが在った。
彼女は小さな桜色に彩れた唇を、控えめに開き聖句を唱えている様だ。
その聖句に呼応するかの様に、彼女が膝まづいてた場所を中心にして敷かれていた光の魔法陣が輝きを放ち、彼女らと紫と紅の戦いを隔てる壁を作っている。
また1人は、ローブを身にまとい頭に大きな三角帽子を乗せて。長身な己が身よりも尚長い杖を自分に倒す様に抱きしめている。
肩から踝まで、その身を隠す様に纏ったローブによって体型によって性別は分からない。
一見して見れば棒立ちの様にも見えるが、だが、その黒い瞳は真剣な瞳で彼等の闘いを見守っている。
そして最後の一人は、光り輝く黄金の鎧を身に纏い、その鎧だけでも目を惹くにも関わらず、右の肩に一角獣を思わせる様な装飾が異彩を放っている。
三人の中でも頭一つ飛び越えた長身に、鎧の上からでも分かる程に鍛え上げられた肉体が『男性らしさ』を伺える。
彼等三人でも、一番前に立ち、身の丈よりも大きな盾を手にしている。こちらもいつでも腰の剣を抜刀して行ける…と言った所だろう。
「……マサト」
その中で、修道衣を纏った少女が閉じた瞳を見開くと、そっと呟いた。
青い瞳が映すのは、爆炎の向こうに隠れた紅の者。
彼女が見つめる先の煙から、光が数回瞬いた。
その光は、再び紫の者を捉え僅かに頬を掠めるが…結果は同じ、再び爆炎が視界に舞う。
紅の者の銃弾を返されたのだ…、
ソレを見計らったかの様に、紫の者は紅の者を追って悠然と動き出す。
紫の者の右手に収まる愛刀…その塚に仕込まれた引き金を三度引くと、剣の輝きが増した。
その紫色の魔力の輝きに、魅入られた虫達の様に辺りの暗がりから黒い風が集まって行く。
右手に集まって行く夜闇の風は、次第に矛先を変え、紫の者自体も覆い隠す様に集まって行く。
黒い霧の様なモノを纏い、時折病的なまでに白い素肌が覗く中、紫の者の赤い動物の様な瞳が、爛々と輝いている。
夜闇が動いているかの様な風、その名は『ダークマター』
宇宙の光の無い場所で有れば何処にでも存在すると言わしめる存在。
太陽が無ければ、生命が生まれなかったかも知れないと言う、そんな星々に生きる全ての者にとっての母なる太陽の光と対をなす存在。
どうやら天窓と僅かな松明だけ…そして、修道衣の少女が放つ結界の輝き…と光源の少ないこの場の暗さ(ダークマター)を糧にしている様だ。
……大技が来る。とそうこの場に居る紫の者以外の誰もが思っただろう。
そう察したかの様に紅の者も動き出す。
彼は、銃を持って無い方の手を天に掲げると叫んだ。
「ライジングサン!」
天に手を掲げる際に何かを一緒に投げた様だ。
ソレは小さな光。…吹けば消えてしまいそうな蝋燭の様な頼り無い輝きだった。
……だが、
その輝きに向けて、同じ光が現れた。蛍の様にスゥ…っと最初の光に向けて、何処からともなく飛んで行く。…ソレは一つだけでは無い。
ひとつ…ふたつ…みっつ、と数を増やし…やがて焔の風が流れる様に、
焔はまるで上流から下流に流れ行く川の流れの様に、最初の光と紅の者を目指して行く。
焔を身に纏う紅の者。その流れの元を辿ると、ソレは…壁に床に柱に…松明から、そして空気中から。とこの場の至る所から集まって行く。
その光の名は『太陽の残滓』
この世界の全てを天から照らす太陽、その輝きが万物に齎す太陽の恵み。その力の一端を紅の者は借りる事が出来た。
ソレは目に見えない空気だろうと、目に見える大地であろうとも。この星の全てに存在するモノで有れば。
小さな光は、紅の者自身からも流れでて行く。彼自身の魔力はもちろんの事だが…もう一つは…服だ。
更に、先程紅の者を見守っている彼女達からも、その光は産まれている。
そして、紫の者が闇を集めた事によってか、やがて『小さな最初の光』は…『小さな太陽』の様な大きさとなって辺りを照らし出すと紅の者と紫の者の視線が交差する。
ーー 互いの準備が整ったのは同じ。
光と闇の様な二人、光源の増した中で見える二人は互いに傷だらけであり、コレが最後の一撃なのは明らかだった。
そして…どちらが先に動くかに思われたが…動き出すのは同時だった。
『ハァァァァァ!!!』
今まで殆ど無言のままに、互いに玉と剣、魔法と魔法をぶつけ合って居た彼等は
最後の最後、その一撃にと共に気合を吐き出す。
紅の者の小さな太陽が流星の様に落ちて来るのに対して、
紫の者は黒い、どこまでも黒い斬撃を放った。
ーー そして互いの技が激突する。
互いの怨敵を討ち滅ぼさんが為に、放たれた膨大な力と力は激しく互いを押し合う。
上と下、光と闇、焔と夜の寒ささえ覚える風、互いに相容れぬ存在の技と技が吹き荒れる。
決して負けまい…と言う術者の心境を物語るかの様。
その引く事の無い力同士のぶつかり合いは、互いに進む事も無い力は、激しく周囲へと影響を及ぼして行く。
その衝突を起点に、地鳴りの様な音を奏で、床にヒビが走り、天井が揺れる。
天窓が破れて、欠けらがまるでキラキラと輝くダイヤモンドダストの様に煌めきながら舞い降りてくる。
ーーー少女が祈った。
紅の少年の勝利を…。
だが、そんな中、紫の者が再び動き出した……黒い輝きを放つ剣を手に。
そして…、
『ダークネスジャッジメント!!』
そう叫んだ紫の者は、再び斬撃を放つ…先程の縦の斬撃ろは角度が異なる…横に。
先程の斬撃と折り重なる様にソレは放たれた。
紫の者の技は、まだ未完成だったのだ。その状態で互角だったのだ…
そこにもう一つの力が加われば……それは、
やがて…十字の斬撃によって、徐々に後ろに押し込まれる小さな太陽を見て、勝利を確信したかの様に紫の者が笑みを零した。
先程までの焔の輝きは紅の者には無く、抵抗し避ける力さえも無くなった様に見えた。
光と黒い斬撃が紅の者に迫る。
仲間達が見守る中…迫り来るソレに向けて、ゆらりと左手てを右腕に添えて、右手に持つ銃を構えると…
ーー 撃った。
銃口から放たれた弾は、先程までの銃弾では無く。
それはまるで…巨大な光線の様であった。
その光線は、術者の手を焼き腕の衣服さえも焦がし、床を抉りながら突き進んで行く。
そして、先程の光と共に斬撃を打ち砕き、闇の風を浄化しながら紫の者に迫るって行く光は、
やがて、今度こそ紫の者を
ーーー 捉えた。
紫の者が光に飲まれて行く最中、紅の者は小さく呟いた。
「ごめんな……ナハト」
そして、紅の者は左手を胸元にやると…
大事に服の中しまってある『小さな鏡』を、ギュっと握りしめた。
「母さん…約束、守ったよ。兄さんを倒した。」
その言葉を最後に、紅の者の意識が遠のいて行った。
皆様こんにちは、こんばんは、おはようございます。
お久しぶりです、サルタナです。
書き直し投稿開始です。定期的にまた投稿して行きたいと思いますので、良かったら楽しんで頂けると幸いです。
以上…短めで申し訳ない。