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戦闘準備

 村人の安全確保のため、当面僕らが泊まっていた部屋を村人が使用できるよう店主と話をつけると、全員で馬車に荷物を詰め込み、出立の準備を始めた。僕とクラーラ王女以外は。王女が、作戦を練るためにと僕を呼び止めたのだ。その裏にもう1つ議題が隠されていたが。


「──もちろんルイスが来ることは、シグルド王子からもカロリナからも聞かされていない。バルバロッサ卿が単独でルイスを派遣したと考えるならば、その目的は、クラーラ王女の監視か、あるいはやはり事がバレたときの保身のため、くらいしか思い付かないが」


 両手に荷物を抱えて運ぶクリスを横目で見ながらクラーラ王女の質問に答えた。


「やはりそうですよね。ルイス嬢は、たまたま長期の休みでここへ来ていたから、応援要請を受けた、と言っていますが、バルバロッサ卿がこうなることを予想し、事前に送り込んだと考えた方が自然です。しかし、夏ならともかく真冬のこの時期にここへ来ることにルイス嬢は何も違和感を感じなかったのでしょうか」


 確かに言われてみればそうだ。何かルイスがこの辺境の町に来る理由でもあったのだろうか。


 王女は息をつくとテーブルに手をついて立ち上がった。


「まあ、とにかく、まずは生き残った村人の救助と村の奪還に集中しましょう。作戦はさきほどまとまった案でいいですね」


 僕も立ち上がりながら、ため息をつく。あと何回ため息をつくことになるだろうか。


「ディサナスのことが気掛かりではあるけど、作戦自体に問題はないと思う。でも、本当に僕が指揮でいいのか?」


「ええ。やはり指揮は指揮者に取ってもらわなければ。私達を上手く導いてくださいね」


 クラーラ王女は、やたら口角を上げて、満面の笑みを浮かべた。誰もが進んで命令を引き受けたくなるような、その笑顔を。


「実は、私もこういう場合を想定して貴方に護衛の任務を引き受けていただいたのです。貴方ならきっと誰よりも巧みに皆をまとめられるだろうと」


 さっそくため息が出た。


「あまり期待しないでほしい。けど、少なくとも僕は反乱軍に怒りを感じているから、絶対に村は救いたい」


「はい。貴方ならそう言ってくれると思っていました」


 どこまで先を読んでいるのかわからない不可思議な2つの碧の宝玉が、また細くなる。ある意味、カロリナよりも恐ろしい存在かもしれない。


「それでは、参りましょう」


 クラーラ王女の後ろを歩いて外へと出ると、ちらほらと舞い散る雪が肩に触れ、寒気が押し寄せてきた。


「ディサナスを抜かすと僕らは現在5人しかいない。対して敵の人数は未知数だ」


 馬車に乗り込むと、ゾーヤ以外が集まった幌の中でみんなに作戦を伝える。


「だから、戦力は分散させず各個撃破で敵を叩いていく。前衛はクリスと僕、後ろにルイスとクラーラ、そしてディサナスは最後尾にいて身を守ることに専念してほしい。ゾーヤがディサナスの守備にあたるから」


 ディサナスは無言でうなずいたものの、その目はしっかりと前を見据えていた。


「了解。だが、もし敵が一斉に襲いかかってきたらどうする? おそらく戦力上はこちらの方が上だが、人数が多ければ対処しきれないだろう?」


 剣の手入れをしながら、クリスが疑問を呈した。


「その場合、クリスを下げて魔法で蹴散らします。ハルトのヴェルヴは発動が速いので、引き続いて上級魔法で連携し、魔法の帯をつくれば簡単には破れないかと」


 黒檀のケースから分解したトランペットを取り出すと、クラーラ王女は部品を組み立て始めた。上級魔法を習得するだけでも一生かかる者もいるというのに、クラーラ王女は聖性魔法に加えて上級魔法も使えるというのは、改めて思うが恐ろしい存在かもしれない。……敵じゃなくてよかったっていうのはこういうことだよな。


 ルイスもヴァイオリンを手に取った。


「まさかまたハルトと共闘することになるとはね。今回は弱腰にならないでよ」


「ならないよ。ただ、甘いかもしれないが、なるべくなら死人は出したくない。敵が極悪非道だとしても、即座に殺さなければいけない理由はないからな」


「マリー様と同じで相変わらず甘いわね。ま、そこがあんたの良いところかもしれないけど」


 ……もしかして誉められたのか? すっぽりと赤いフードで覆ったその顔は、何も教えてくれなかった。


「ともあれ、戦闘になれば悠長に構えている暇はありません。皆さん、私のことは気にせず全力で臨んで大丈夫です。多少の怪我や傷は私が回復しますので」


「王女。なるべくなら、傷を負いたくはないと思うけどねぇ」


「あら、そうですか? 聖性魔法を味わえるまたとないチャンスですよ」


 マッドサイエンティストのような台詞を吐くと、クラーラ王女は微笑んだ。冗談かと思いたいが、その目は笑ってくれてはいない。


 大丈夫だろうか、とまたため息が出る。同時に王宮防衛戦と違って妙に落ち着いてる自分がいるのが不思議だった。

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