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突然の告白と逃亡

昨日は、投稿できずすみませんm(__)m


今日の18時頃に昨日の分を更新します!

「え?」


 突然の話になんのひねりもない問いかけをしてしまった。


「さっきソフィアが言っていたでしょ? 『もともとこっち側の人間なんじゃないか』って。あれはその通りで、私は貴族出身の人間じゃないのよ」


「でも、バルバロッサって……まさか」


 バルバロッサ家は今のカールステッド家を支える三大貴族の一つだ。カールステッドには及ぼないものの、代々上質な魔法使いを生み出してきたと聞いたことがある。その名を冠するから、疑いもせずにルイスはバルバロッサ家出身だと思っていたが、名を持つと言っても血は必ずしもつながっている必要はない。


 燃えるような赤い瞳が僕の目からじっと逸らさずにうなずいた。


「そう……私は養子なの。元々は農家をしていた両親のもとで生まれ育った。魔法の才が特別あったから、10歳のころにバルバロッサ家に引き取られた。今の両親は、どうしても子どもができなかったから」


「えっと……」


 何と言っていいのかわからなかった。マリーやカロリナと違って、ルイスのことをそこまで深く知っているわけでもないし、ましてやついさっきまで敵だと思っていた人間なんだ。


「変な話してごめん。ソフィアの話と、ちょうど引き取られたのがこの収穫祭の時期だったから、つい、ね」


 ルイスはくるりと向きを変えると、また空を見上げた。


「そうよ収穫祭――あのときに私、初めてカロリーナ様と出会ったんだ。不安でいっぱいだった私に当たり前のように接してくれて、魔法を披露してくれた。祭りを照らすどの灯よりもずっと明るくて輝いていたあのドラゴンを」


「……だから、カロリナに憧れているのか」


 そして、カロリナに似ているのか。


「そうね。そうだわ。カロリーナ様は私の憧れで目標。あながち、ハルトの指摘も間違ってないかもね」


 そう言うと、ルイスは急に吹き出した。


「なんだよ!」


「なんでもない! ほら、さっさと馬車に戻ろう」


 そっちがわけもわからず笑い出したんじゃないか、と心の中で突っ込みつつ石床に置いた袋を拾い上げようとすると、突然何かがぶつかってきた。


「兄ちゃん、ごめん!」


 そう叫んだ声の主は次の瞬間には人ごみの中に紛れていった。かろうじて視界の隅にとらえられたのは年端もいかないおそらく少年。


 と、ルイスが大声を上げた。


「今度こそ、なんだよ!」


「あの子、袋から何か持ってったわ!!!!」


「!!!!」


 こんなにも全速力で人波を走り抜けたのはいつぶりだろうか。


 一瞬だけ見た後ろ姿を視界から逃さぬよう視線は前を向いたまま、驚いた表情で僕を見るスクランブル交差点の人込みのごとく大勢の商店街の人達の間をすり抜けていく。


 残りの袋はルイスに任せたから他のことに気を向けなくてすむ……とはいえ、ジロジロと見られるのは恥ずかしいものだ。早く捕まえたいのだが、子どもだからなのか単に足が速いからなのかちょこまかと動いてなかなか追いつけなかった。



「はぁ……はやく……その……とったものを……返し……なさい」


 ようやくその背が間近に迫ったときには、膝はがくがくで息も絶え絶えでもうこれ以上は走れないという状態だった。


 見ればまだ年端もいかない、たぶん男の子だ。薄茶色に変色した膝上までの短衣と短いボサボサの髪が貧しさを物語っていた。


 少年はゆっくりとこちらを振り返った。にやりとした笑みを浮かべながら。


「返すのはそっちだろ、おっさん」


 その言葉を合図に物陰に隠れていたのか少年の仲間と思われる子どもら4、5人が少年の横に並んだ。……というか、さすがにおっさんと呼ばれるのは心外なんだが……なんて考えている場合じゃない。


 子どもたちはあっという間に僕を取り囲んだ。ただの子どもならなんとでもなるわけだが、どこから手に入れたのか剣や片手斧を手にじりじりと迫ってくるから大変だ。少年を追って商店街を走っていたつもりだったが、気がつけば人通りの少ない町外れへ誘い込まれたらしい。


「悪いが、僕は君らから何か奪った記憶もないし、今は何も持っていない」


「うるせぇ! 俺たちから全てを奪ってったくせに! 何も持ってないなら、身ぐるみ剥がしてその高そうな服でも売ればいい金になるぜ」


 正直驚いた。こんな子どもからこんな小悪党みたいな台詞が出てくるとは。いったい何が起こっているのかーー。


「さあ、覚悟しな!」


 とはいえ、ここで身ぐるみ剥がされるわけにもいかない。不本意ながら内ポケットに忍ばせておいたヴェルヴへと手を伸ばす。


「やめなさい」


 凛とした声が木霊した。今にも襲いかかってきそうな殺気だった気配が一瞬で消える。


「エル姉!」


 と口々に呼ばれたその人物は子どもたちと同じように色褪せたローブを身にまとい、フードを目深にかぶって緩やかに歩み寄ってきた。


「その人は悪い人じゃないわっ! きゃ! ぶっ!!」


 そしてなぜか盛大に転んだ。

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