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怒りの一閃

「さすがに焦ったけど、久しぶりにマリーの声を聞けたからよかったわ。心を開きかけているのかもしれない。まだわからないけれど」


 ということで、カロリナの指示で執事長とともに、マリーを部屋へ運んだあと、僕は試験会場へと戻った。カロリナは、まだ暴走する可能性があるため、マリーの傍についてもらった。僕も残りたかったが、カロリナの方が頼りになるし、ここでやるべきことがまだ残っていた。


「ずいぶん、遅かったですわね。慰めるのに時間が掛かったのかしら」


 さっそく、用事の相手が嫌味たらしく声をかけてきた。その声の調子も、首の傾け具合も、顔の表情も、今は全てにイライラする。


「ルイス、一つ聞きたい。あのとき、本気でマリーを攻撃しようと思ったのか?」


「ちょっと、私の質問に答えてくださってーー」


「どうなんだ?」


 くだらない話に付き合うつもりは毛頭なかった。僕が知りたいのは、先の戦いでルイスはマリーへのドラゴンの攻撃を直前でやめるつもりがあったのかどうなのか、だ。


「もちろん、最後まで攻撃するつもりでした」


 ルイスはくすっと小さく笑った。何を聞いているんだとでも言うように。


「マリーは魔法を使えなかったんだぞ? 無防備な相手があれを喰らったらどうなるか想像できるだろう?」


「ええ。かなり痛いでしょうね。場合によっては身体にダメージが及ぶ可能性も、当たりどころが悪ければ大ケガ、でも、さすがに死ぬことはないでしょう」


「そこまでわかっていて、なんで攻撃をやめなかったんだ?」


 声が荒げそうになるなのをなんとか止めながら、冷静を装って聞いた。


「マリー様のご覚悟に応えるためよ。カロリーナ様がお止めにならなければ、マリー様は諦めなかった。だったら、戦闘不能の状態にするしかないじゃない。回復に備えている先生方もいらっしゃるのだから、なんの問題もないはずよ」


「だからって、あんな大技使う必要はないだろう。戦闘不能にするなら、ピアノを壊すことだってできたはずだ。エドがやったように場外へ落とすことだって」


「う、うるさいわね! そもそも私は何度もマリー様に試験の辞退を進言してきたのよ! そんなにマリー様が傷つくことが嫌なら無理矢理にでもやめさせればよかったじゃない!」


「マリーのせいだって言うのーー」


 試合開始のシンバルの音が鳴った。呼ばれた名前は、「ハルト! ルイース・カール・バルバロッサ!」


「ちょうどいいわ! スコラノラ学院に相応しく実力で決着をつけようじゃない!」


 そう言い放つと、ルイスは駆け足で階段を下りていった。そのあとを追うように僕もいきり立った気持ちのまま下りていく。


 マリーの悔しさの分も、ルイスだけには勝たないといけない。


 ヴァイオリンを構えるルイスを睨みながら、僕もヴェルヴを取り出し、赤色とそして青色の2つのリベラメンテを穴にはめ込んだ。


 最初から全力で行く。次の試合を戦うつもりははじめからなかった。だから、ここで全部を出し切っても構わない。


 試合開始の合図とともに、僕はヴェルヴを横へ払ったーー。


 カロリナ曰く。通常、魔法は一つのエレメントで構成される。楽器を用いた上級魔法でもその原則は適用され、一つの音は一つの属性しか内包し得ない。また、複数の音を重ねて強力な現象を引き起こすその性質から、ほとんどの奏者が、同属性の音の重ね合わせによってその効果を増幅させることを狙う。まれに複数属性を用いる奏者もいるが、コントロールが非常に難しく、そうして創られた魔法は超上級魔法と呼ばれることになる。


 その例外の魔法を超絶技巧なしに発動させる目的で開発されたのが、このヴェルヴだ。だが、複数の属性を同時に扱うのはそれだけで難しく、また仮にコントロールできたとしても本来魔法を使えない者が使うリベラメンテ武器の一つなので、扱えるものも少なく、限定的な効果で実践向けではないとされ、今まで使用者はいなかった。


 それだけに複数の属性を同時に扱うことができ、なおかつイメージを的確に描くことのできる人間がいれば、それは最良の武器となる。


 ーー僕とルイスの周りを白い(もや)が覆った。もう一振りすると、それは範囲をさらに拡大し、フィールド上のほとんどを埋め尽くす。観客席からどよめきが起こった。


「なにこれ、全然見えないじゃない! いったい、何をしたのよ!!」


 ルイスの動揺したような声が靄の中から聞こえた。慌ててヴァイオリンを弾き始めるが、出現した火の玉は全く見当違いの方向へ飛んでいく。


 戦闘において、特に個人戦において相手の視覚を奪うのは優位な戦い方だと思う。なにせ、相手は楽器を鳴らすからどこにいるかだいたいの焦点は定まるが、こっちは音を発すことがないので気づくことができない。


「今からでもご辞退なさってもいいのではありませんか? ルイス様」

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