プロローグ
本編第一話は次回からとなります。この序章は、スタートと伏線の役割を持った話です。
──ここには何も無い。
人含め動物、ロボット、宇宙人……命を灯している生物があるとしたら、それは所々の残骸に隠れてひっそりと生えている草だったり、倒れている数多の木々ぐらいだ。
「文明」という理が丸ごと消えた後の世界。
果てしなく「破壊」が広がっているこの終わった世界で──何故少女は生きて歩いているのだろうか。
「あの過ちが……いけなかった……」
か細く、今にもかき消されそうな声で少女は呟く。
もう力は殆ど残っていない。視界も霞み、身体は軋み、感覚が徐々に衰えていき、死にゆく感覚だ。もしかしたら、歩いているという行為も、実は幻覚なだけなのかもしれない。
必然的に死へと近付く身体を何とか動かし、少女は滅亡した世界を歩いていく。
彼女のトレードマークである白い髪と白いワンピースは殆どが、赤黒く汚れている。
「皆──ごめん……」
屍や残骸を目にする度に少女は顔をひしゃげ、何度も何度も謝る。涙はもう出ない。流しすぎたのだろう。
そのままゆっくり歩いていると、溢れた残骸の中では、まだ新しい部類に分けられるであろう戦艦が地面に突き刺さっていた。
「まだ──使える」
一目見てそう判断した少女は、もう残り僅かの距離しか歩けないだろう、死にゆく身体を引きずって中へ入っていく。
戦艦内も外と同じく、とても誰かが生存しているとは思えないし、ほんの数回の操作で動くような気配も無い。
「これが――最後の……」
瞬間、少女の身体を中心に光が現れ次第にそれは広がっていく。戦艦内の機械達はみるみると回復していき、戦艦の周りの自然達は別のものへと姿を変えていき──、
やがて光は、辺り一面の残骸と化した都市や削られた自然などにまで広がっていく。
そして────、
──音を立てて世界が崩壊していったのはその直後だった。