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菰宮牡丹は100倍可愛い。  作者: ジンボヤスヒデ@ぼんじー
30/30

あふたーとーく(九重さくらと九重きょうか)。そして。

この話は、本編『菰宮牡丹は百倍可愛い』の後日談です。




ネタバレを大いに含みます。








というか、ネタバレでできています。




お楽しみください。

ツインテール会長との対決から一夜が明けた下之宮高校。

放課後の教室。


「そうですか。私の部室は屋上になったのですね。」


 僕の席の近くに車椅子を寄せた九重は、なぜだか楽しそうだった。


「ごめんね。九重さん。」と、僕は謝る。


「いえ、いいんですよ。私たちの部活の存在目的が、私たち部員全員が、部室に集合することというのは、なかなか粋な目的です。」


それにしても、と、九重は続ける。


「会長はそんなに強かったのですね。オセロも、人生ゲームも。もし私がいれば、局面解析を駆使して、“室内の部室”を手にできたかもしれません。」


「いや、九重さん。いかさまはダメだよ。」

と、僕の席の後ろ、猿渡の席に腰かけた浮瀬が、発言する。


「そうですよね。すみません。」

と、九重はおどけたように、頭に手をのせる。


 いかさまをしたのはお前だろ。

 

と、僕の視線に気がついた浮瀬は、

「でも、魔法を使っても勝てそうになかったな。」

と付け足す。


「いえ、私は魔法ではなく、科学ですから。」

と、九重は胸を張った。


「九重さんは、魔法とか、信じないの?」

と、僕は聞いてみる。


「いえ、どちらかと言えば、奇跡も魔法も、信じていますよ。小石井くんにはお話ししましたが、私には妹がいるんです。」


 九重さくらの妹、九重きょうか。


「妹さん。」

と、浮瀬は興味があるという素振りを示した。


『浮瀬さんという人に会ったら、伝えておいてくれる?“余計なお世話よ。”って。』と、九重きょうかは言っていた。


 彼女の言う浮瀬とは、きっとこの、浮瀬雲母のことだ。

 

「はい、九重きょうかという名前です。平仮名で“きょうか”です。その妹は、8歳の時に亡くなりました。」


「今は、もうこの世にいないんだね。」

と、浮瀬は尋ねる。その言い方は、返ってくるべき言葉がわかっていて、それを期待しているようだった。


「はい、この世に生きてはいません。」


 けれども、


「けれども時々、彼女が、きょうかがそこにいるような気がする時があるんです。本当にたまにですが。」


 “そこにいるかもしれない”と、思うときがある。


「“幽霊”という言葉ではしっくりきませんが。私も、こんな義体(からだ)で、こんな形で生き長らえています。死ぬはずの私が、生きています。だから、死んだはずの妹が、そこにいてもおかしくはないはずですので。」


と、九重は教室の窓に目をやった。きっと彼女は、窓の向こう側を目にしている。

 彼女は今、何を考えているのだろう。


「九重きょうかさんは、なかなか自信家で、自分一人でなんでもやろうと思っていて、しかも一人でやりきれてしまう子だったんじゃないかな?」

と、浮瀬が口を開いた。


「はい、その通りです。」と、九重はこちらに視線を戻す。

「どうしてそう思ったのですか?私もそんな性格でしょうか。」


「いや、本人の前ではちょっと。」

と、浮瀬は返事をはぐらかし、


「それにしても、いい名前だね。」

と、話題を変えた。


 九重さくらと、九重きょうか。


「ありがとうございます。父の好きな歌、歌と言っても和歌ですけど、そこから付けてもらいました。」


 九重は、一呼吸開けると、その歌を詠む。



 いにしへの 奈良の都の 八重桜

 けふ九重に にほひぬるかな



 そしてまた、一呼吸、二呼吸開く。


「平安時代の女性歌人、伊勢大輔の歌です。」


「昔の都、奈良の八重桜が、今は京の都で満開に咲いている。」

と、僕が口にする。


「はい。だいぶ大雑把ですが、そのような意です。」


「"九重"で、"満開"か。」

と、浮瀬は呟いた。


 彼はちらりと九重の方を見ると、頬杖を突く。


「昔と今。その対比が美しい歌だ。」


「そうですね。ですので今度は、浮瀬くんのお話を、聞かせてほしいです。」


 浮瀬雲母(うきせうんも)の話。


「うん。僕もいつかは、話さないとね。」


 "私の話を。"


「あら、『私の話』だなんて。なんだか女の子みたいですよ。」


と、九重は彼をからかった。



そして、彼は。





To Be Continued…

近日投稿。

彼の、彼女の物語。

彼と、彼女の物語。



『菰宮牡丹は百倍可愛い』を、最後までお読みくださり、本当にありがとうございました。

これからもよろしくお願いします。

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