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菰宮牡丹は100倍可愛い。  作者: ジンボヤスヒデ@ぼんじー
29/30

あふたーとーく(浮瀬雲母と生徒会長 後編)

この話は、本編『菰宮牡丹は百倍可愛い』の後日談です。








ネタバレを大いに含みます。












というか、ネタバレでできています。






お楽しみください。


「それじゃあ、私を倒してもらおうか。」


屋上部の、生徒会から部室を奪取する戦いが始まった。




 オセロ。


 ボードゲーム。


浮瀬はかつて、

『ボードゲーム。いいじゃないのかな。コンピュータが生活を埋め尽くしたこの時代に、アナログのゲームに興じるのは、なかなか趣深い。まるで、戦争のようだ。』

と言っていた。



 ににんぜろわゆうげん何とかかんとかゲーム。


 まああれだよ。そこに偶然は無いというゲーム。



 そこには、奇跡も魔法も、存在しえない。



「オセロ?リバーシ?って、すごいよねー。ルール説明、五秒で終わっちゃうもん。

 ってことはさ、勝敗もそれくらいで着いちゃうかもねー。」


と、ツインテール会長は、生徒会室の棚からオセロ盤を取り出し、準備を始める。


「じゃ、小石井からやろっか。」


「はい。」


「私白ねー。」


 オセロは、交互に手盤を行うボードゲームだ。五秒で決着が着くわけなどない。

 五十秒でも無理だろう。


 が、五百秒くらいで勝敗が決した。

 8分くらい。


「あ、え、パスです。」


ぱちん。


「パス、です。」


ぱちん。



真っ白。


盤上も、頭の中も、真っ白だった。


「会長、あの、強すぎませんか?」


「ん?小石井が弱すぎるんじゃない?」


そうですか。


「じゃあ次、浮瀬ね。」


「はい。では。僕も黒で。」


と、僕は席を交代し、浮瀬は石を並べる。


 次は浮瀬も警戒してか、かなり慎重に打っていてため、五百秒くらいではまだ中盤だった。


 ただ、彼もまた劣勢だった。


 浮瀬の手盤、彼は急に立ち上がり、「あの棚の上の箱は、人生ゲームですか。」と、指を指す。


 「あ、ああ。後でやる?」と、会長は一瞬、視線をそちらに向け、答えた。


 と、その瞬間。盤上の石の1つの色が、白から黒に変わる。


 な、え、なんだこれ。と、僕が戸惑っていると、

「あれ、この石、黒だったっけ?」

と、ツインテール会長も、首をかしげ、ツインテールが揺れた。


「違いましたっけ、誰も触っていませんよ?」

と、浮瀬は笑顔で返した。


 こいつ、もしかして、魔法とやらを使ったか…?


浮瀬は飄々と、その石の対角線上に黒の石を置く。


「ま、面白いからいいや。」と、会長もそのまま打ち続けた。


 さっきの魔法(?)のおかげで、形勢が変わり始めた。浮瀬の黒色が多くなる。いや、正直なところ、オセロの形勢なんて素人の僕にはよくわからないが、ツインテール会長は明らかに思考時間が長くなった。左右の髪をフリフリ、頭を左右に揺らしている。


 すると、「ああ。まるほどねー。」と、何かに納得すると、会長は手を一気に早くする。


ぱちん。ぱたんぱたん。


ぱちん。ぱたんぱたんぱたん。


 会長の白が押し返してきたが、果たして。


ぱちん。ぱたん。


と、盤上のすべてのマスを白黒の石が埋め、ゲームが終わった。

「ふう。」と、お互いに、気が抜ける声を漏らした。


 浮瀬が少し優勢だろうか。浮瀬は素早い手つきで黒石をかき集め,数を数える。


「32個あります。」

「うん、知ってるよ。おしかったねえ。」


 32対32。

 勝負は引き分けだった。



「あの、白石が黒石にいつの間にか入れ替わってた件だけど。」

と、会長は楽しそうに話し始めた。


「手品としては100点だけど、いかさまとしては30点くらいかなー。」


「ばれていましたか。すみませんでした。」

と、浮瀬はあまり悪びれずに謝る。

 勝てなかったことが相当悔しいらしい。膝の上に置かれた、左手はきつく握られている。


「いや、タネは分からないんだけど。」


けど、


「あの局面、つまり、あの手数、あの石の配置の局面では、黒石はあそこにあるはずないんだよ。」


 存在しえない局面なんだ。

 "確かに存在する"ってことが大事なんだよー。


「だから、いかさまとしては30点。私には通用しないなあ。」


 それを踏まえて、会長は引き分けまで持ち込んでいる。


「でもね、まるで魔法みたいだったよ。すごかった。一瞬、何が起きたか理解できずに、私の頭がフリーズしたもん。」


と、そこで、浮瀬は握っていた拳を開いた。

「そうですか。楽しんでいただけて良かったです。」


「あの、会長。部室についてなんですけど。」

と、僕は浮瀬の隣から切り出した。


「あ、そっかそっか。部室部室。私に勝ったらって条件だったからねー。引き分けじゃあねー。」


 でも、楽しかったし?と、


「じゃあこの校舎の屋上を、部室として正式に認めてあげるよ。」


 君たち、屋上部だし。


と、会長は笑いながらオセロ盤を片付けていた。


「あの、入部者に、足の不自由な生徒もいまして、彼女は屋上には上がれないんです。」

と、僕は抗議した。そもそも屋上は部屋じゃないし。


「それを可能にしようってのが、屋上部の活動内容でしょ?」

と、ツインテール会長は座っていた椅子を動かし、その上に載って、棚の上の人生ゲームに手を伸ばす。


 届いていない。


 彼女の手も、僕の言葉も。


「そもそもさ、小石井。屋上部の部員候補って、全員同じクラスでしょ?放課後の教室に残って駄弁(だべ)ればよくない?」


 確かに。


「いいじゃん。部活の目標に『部員全員で部室に集合すること。』って書き加えれば。青春っぽくない?」


そんなことよりさー。と、彼女は今日の本題をそんなこと呼ばわりし、

「あれ、取ってよ。」

と、棚の上の人生ゲームの箱を指さした。


「はい。」と、浮瀬は立ち上がり、ツインテール会長に代わって椅子の上に乗る。


僕は、この部屋に来てずっと気になっていたことを聞いてみた。

「あの、他の役員の方はどうしたんですか?」


菰宮副会長が退学したとはいえ、他にも、書記と庶務、会計がいるはずだ。


「ああ、なんか皆、たまたま別々の用事があるみたいでさー。帰っちゃった。」


はい、お待たせしました。と、浮瀬は人生ゲームを机の上に置く。

「よし、やろうやろう。」


と、ツインテール会長は、その箱を開け、準備を始めている。


 その姿も、行動も、まるで小学生だ。

 暇つぶしに僕たちを呼んだだけなのかもしれない。


「よし。レッツ人生!」

と、謎の掛け声で、ゲームは始まった。


 ちなみに、僕と浮瀬は大量の借金の抱え、自己破産に追い込まれる。人生のゴールまでたどり着くことができなかった。

 ツインテール会長といえば、太平洋上の島を買い、月旅行に行くという偉業を成し遂げ、それでも有り余る富を有してゴールまでたどり着いた。

 人生の勝ち組だった。


まあ、楽しかったからいいんだけどね。



○○○○○○○○○○○○○○○




 生徒会室から出て、僕と浮瀬は昇降口に歩いていた。


「九重さんに謝らないといけないね。」

と、浮瀬は言うが、

「仕方ないよ。ツインテール会長、凄く強かったし。『すごい幼女』とは聞いていたけど、あんなふうに凄かったとはね。」


「うん。いやあ、魔法まで使って勝てなかった。」


やっぱり魔法だったのか。

って、簡単にカミングアウトするんだな、この魔女。


「その魔法のことなんだけど。もし、あの魔法をビデオカメラで撮影したら、どんな風に映るんだろう?一瞬で色が変わっているの?」


「いや、何も変化しないよ。あの石はずっと白だった。"黒のように、見えていただけ。"」


 黒のように見えていただけ。どういうことだろう。


「それよりも、きっとあの部屋、隠しカメラが仕込まれているはずだよ。僕の魔法を確認するために。」


 どういうことだ?


「きっと生徒会は、僕の正体に気が付いていたのかもしれない。だからわざわざ、他の役員がいない少人数で、アナログなボードゲームをプレイさせた。」


 魔法が使いやすいように。


「まあ、僕の考えすぎだといいんだけど。」

と、浮瀬は苦笑いをする。


 けれど、その可能性がわかっていて、どうして浮瀬は魔法を使ったのだろう。


 昇降口に着くと、「じゃあ、僕は、部室に顔を出すから。」と、浮瀬は校舎の中に引き返していった。


 いや、校舎の外に、向かっていったというべきだろうか。



○○○○○○○○○○○○○○○



生徒会室。


「いやー。浮瀬の魔法、すごかったなー。カメラ回しておけばよかった。」

と、生徒会長椅子に座る少女は独り言つ。


「まあ、他の役員には伝えとくかー。『予想通りの存在だ』って。」


それに。と、彼女はため息をついた。


「なんで本名で呼んでくれないかなぁ。」


地の文でさえも。と。

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