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Black Hack Basis Launcher  作者: Xz神刄√
1/3

誕生と消滅

<とある非凡な少女の回想>

一年前、高校一年の夏休み初日。

自宅に黒い封筒が届いた。宛先は私へ。今の時代、自分宛に封筒が届くなんてDMくらいのものでは無いだろうか?何て不思議に思いながらも封を開けた。


───中にはクレジットカード程の大きさの黒いカードと白い紙が。

私は最初に白い紙を手に取った。

『Hack Basis Launcher案内書』

『Hack Basis Launcherはアドレス八桁データ八桁から構成される世界への干渉コードを生成することができる。電子信号の形で世界に干渉コードを入力することで思うがままに世界の情報を書き換えることを可能とする機器である』

『Hack Basis Launcherを手にした諸君らは以降、〝改造者〟と呼称される。諸君はHack Basis Launcherを使って世界を改変し、自分の思い通りとなる世界を生み出そうとするだろう。ようこそ。覇権を奪い合う改造者達の闘争へ』


当時の私は想像もしなかった。黒いカード一枚がこんなにも私の運命を変えるなんて。色々なことが有った。私は他人よりHBLを扱う才能が有ったようで、一ヶ月でHBLを意のままに操り最強クラスの改造者となっていた。最近は〝透明化〟するコードを開発しているのだが、これは上手くいかない。透明化はするが、副作用で実体が消え、金縛りを喰らったかのように身動き一つできなくなるのだ。まあそれはさておき、優秀な改造者の仲間を率いて〝神圧軍〟を設立、今は隊長をやっている。


……けれど。何だ。この程度かぁ。

息をするように時間停滞、空間破壊を引き起こすことが出来る。

あらゆる者を凌駕し、濡れ紙を引き裂くが如く万敵を排除した。

至った地位は改造者戦闘力ランキング第二位。軍ランキング世界内序列第七位、神圧軍を指揮する軍隊長。何時の間にか停滞の偽神という異名も持っていた。

私は〝神〟を冠する程の力を手にしたが、到底満足いくものではなかった。神って本当にこんなものなの?何かが決定的に足りない。そんな言い様もない欲求不満を胸に抱き、この一年間を過ごしてきた。


しかし、今日は変革の刻となりそうだ。とある情報筋から、私と私の仲間を改造者達が徒党を組んで潰そうとしているという話を聞いた。私達への攻撃作戦開始時刻は本日午前零時。もし私が、襲い掛かってくる敵改造者を全員叩き潰して、頂点に立ったら景色は変わるかもしれない。私は運命を変えた黒いカードを懐から取り出した。


───Hack Basis Launcher起動。

『起動承認』

───コード入力方式を略式音声入力に変更。

『承認。音声による入力を許可』

───思考領域制限、解除。

『解除承認。使用可能領域100%』

───身体性能制限、限定解除。身体活動性能レベルをclass4からclass1へ変更。

『限定解除承認。class4からclass1へ変更完了』

───自動再構成式、対改造攻撃通常系統防御装甲展開。

『展開完了。再構成までのタイムラグ演算……完了。破壊時、0.007秒後再構成実行』

───通常系統飛行機能起動。

『起動完了』


さあ、行きますか。たった一人で国を落とす、そんな化け物達が数百人と集まった改造者連合軍を潰しに。我らが神圧軍に、栄光あれ。

私は無線機を取り出し、仲間達に声を掛けた。

「神圧軍員の諸君に告ぐ。先陣は私が切り、連合軍の隊長を討つ。諸君らは遊撃役、戦場の各地にて存分に暴れ回り、敵を鏖殺せよ!」

「「「「了解! 我らがXz神刄√さんに、武運を!!!」」」」

無線機から仲間達の声が返ってきた。

ふっ。はははは。改造者連合軍員共よ、私を敵に回した代償を刻んであげよう。


彼女は、Xz神刄√は不敵な笑みを浮かべ、空へと飛び立った。こうして改造者界でも類を見ない程の激戦。〝偽神殺し大戦〟が今、始まった。



<世界内序列第三位、焦土軍(Scorched Earth)員視点>

くそっ!

こんな手筈では無かったんだ!一方的な戦争になりすぐ終わるはずだったのに!

今回の大戦は突如現れ、急速に力を付けた〝神圧軍(Zeus Pressures)〟という脅威を殲滅するために起こった。

作戦を考案した上位軍長会議によると〝神圧軍(Zeus Pressures)〟の構成員は軍隊長〝偽神〟を含め僅か五名。軍の強さは世界内序列第七位。少数精鋭を誇る上位に位置する軍だが、上位世界第一~六位の軍で徒党を組んで攻撃すれば確実に勝てる。

作戦は深夜に決行され、不意討ちと戦力差で以て十分も持たずに壊滅する……はずだった!なのに!

「オオオオオォオォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

遥か向こう左側の夜戦場から〝偽神〟の咆哮が空気を、そして世界を震わせる。戦争開始から一時間が経過したが、向こうの損害は軍員一名の死亡。しかし此方は第二、四、五、六位の軍員、総員百人超が殲滅された。

「あれは正真正銘の化け物だ! 逃げろ!」

味方の軍員が〝偽神〟の咆哮に怯えて逃げていく。本来なら敵前逃亡は処罰されるが、誰も彼を攻められないだろう。俺達が上位第三位の軍とはいえ… 明日には存在が無くなっているかもしれないのだから。

「おい!見ろ!武神が来たぞ!」

夜の戦場に一際目立つ、流星の様に紅い光を尾に引いた光弾が一発、偽神が戦う戦場へと飛んで征く。光弾と化して偽神を討ちに征ったのは世界内序列第一位、〝真神軍(Origin Deities)〟の誇る頂点。超克の武神だ。

「これで……終わりだ」

戦場に居た誰もがそう確信した。


突然、ドスッという刺突音が背後から聞こえた。

音に驚き急いで振り返ると、先程逃げた男がコマ切れにされ、血肉と化して無残な死を晒していた。

死んだ男のすぐ近くには〝死神〟が立っていた。中世の甲冑を思わせる銀色の装備、手に持つのは光を吸い込むマットな黒色で構成された大鎌。

「俺は神圧軍員、覇道の死神。残念だったなぁ…… お前らの道は此処でDead Endだ」

死神が此方に向かって、悠然と歩き出した。

「お前らぁ!奴に叩き込めるだけ攻撃を御見舞いしてやれぇ!!」

動揺で声は震えていたが、周囲の改造者達が声に反応し、剣を担いで死神に四方八方から斬りかかった。歴戦の猛者達なら死神にだって勝てるかもしれない。

死神は成す術もなく改造者達の攻撃を喰らった。改造者達の攻撃は、あまりの威力に爆風が此方まで届く程だった。

「くっくくくくく。Dead Endと言っただろう?」

しかし爆風の中から歩き出て来た死神は無傷。改造者の一撃は一発で高層ビルを切り崩す程の力があるというのに。返す刀で、死神の大鎌が目にも止まらぬ速さで振るわれた。勇敢にも死神に立ち向かった改造者達がコマ切れの肉へと変貌していく。改造者達はトマホークミサイルを無傷で耐えきれる程の防御装甲を展開している。それをバターを切るかのようにあっさりと奴は切り刻んだ。全員死んだということは……俺が最後の一人か。

「生 き 残 り 発 見」

死神が俺の方を向いた瞬間、死を悟った。恐らく、他の戦場も他の神圧軍員に蹂躙されているのだろう。もしかしたらこの戦争……改造者連合軍が負けるかもしれない。

死神が俺に向けて大鎌を振るった。次の瞬間、離れているにも関わらず凄まじい衝撃が全身を駆け巡った。くそ…… 死にたくない……


焦土軍最後の生き残りは意識を永遠の闇に落とした。

「焦土軍全八十二名、殲滅完了」

蹂躙の快感に酔う死神の嗤い声を、誰も耳にすることはできなかった。


<世界内序列第七位、神圧軍隊長、偽神視点>

「うーん弱いなぁ」

寸断無く襲い掛かってくる改造者連合軍に辟易し、広範囲空間破壊攻撃を戦場のど真ん中に叩き込んだら敵軍勢の八割強が消滅した。

後は偶然にも範囲外にいて生き延びた、散発的に襲い掛かってくる奴らを倒すだけ。

のんびり敵を倒していると、pipipiと腰の無線機が鳴った。

「ほい。隊長のXz神刄√だ」

声音を真剣なものに切り替える。

「あー隊長。軍ランキング第二位、亜GX軍七十五人全員を隊長ごと生け捕りにしたんだがどうする?」

神速の迅神という異名を持つ少女、雷華からだった。

「んー」

彼女の選択次第で彼らの命運は決まる。それを理解した上で即断した。

「今は悲鳴と断末魔しか聞きたくない気分だな」

彼女は凄惨な笑みを浮かべた。

「ふはっ。了解した」

無線機の通話は切れた。亜GX軍の命運も共に切れたが。きっと無線機の向こうでは地獄が顕現しているだろう。

「後残ってるのは真神軍だけかな?」

ふと、空を見上げた。彼女は自分に向かって紅い流れ星のようなものが落ちてくることに気付いた。彼女はそれが超克の武神であると即座に気付いた。

「おっ…… ようやくボス戦か。HBL、空間破壊攻撃起動準備」

『空間破壊攻撃、蓄力開始』

流れ星の正体を知り、迎撃の態勢に移った彼女。武神の着弾まで残り数秒。


……そして接敵。

「空間破壊攻撃起動せよ」

『空間破壊攻撃起動……完了』

流れ星を撃ち落とす軌道で空間破壊攻撃が放たれた。原理は、瞬時に多重の空間改変(一秒間に一京回)を行い、空間に過負荷を掛けて破壊するというもの。空間が破壊される衝撃と自己修復しようとする衝撃で、空間内に有ったものは二度破壊される。

……そう。相手が超克の武神でなければ。

「お前が偽神か!」

轟ッ!と空気を叩き、破壊された空間から紅い光を纏った武神が飛び出してくる。

「危なー」

彼女は強化された身体性能で、武神の突貫を難なく避けた。

「やるな…… 流石は偽神。だが、これはどうだ? 〝速度の超克、起動!〟」

武神が何かを呟いたと認識した次の瞬間には、莫大な衝撃で空へと打ち上げられていた。

「くっ!」

光速を超えた速度で真上に吹き飛ばされたと気付いたときにはもう遅い。

「〝威力の超克、起動!〟」

何時の間にか彼女の真上に移動していた武神が、両手に携えた大剣を振り下ろそうと迫る。落下中で回避行動は不可。防御するしかない。

「〝時間停滞、起動!〟」

『時間停滞承認。三秒間、倍率を十分の一に変更』

まだまだ開発途中の時間停滞コード。三秒しか効果を発揮しないもの、だが武神の動きが目に見えて遅くなる。重力に縛られている以上、落下速度は同じ。そこに時間停滞を発動させることで、彼女周辺の空間時間の流れは通常の十分の一となっている。しかし根本的な解決にはなっておらず、時間稼ぎに過ぎない。

「詰みですね」

所謂走馬灯か思考速度すら加速している彼女。彼女は超克の武神の逸話を思い出していた。


曰く、彼は7つの制限から解き放たれた覇者。

曰く、彼は物質が光速を超えられないという制限を超克する。

曰く、彼は攻撃の威力を超克させ、あらゆる防御を貫通し物体を灰塵に帰す。


「はぁ…… これに掛けるしかないか」

そして時間停滞から三秒が経過した。

「消し飛べぇ!!」

時間の楔から解き放たれた武神の〝必殺〟が迫る。

「〝試作透明化、IIB(Invisible Insubstantial Body)起動!〟」

刹那、彼女は最後の希望を起動させた。

『起動承───』


ゴゴゴゴッッ!!と武神の大剣から放たれた破壊の奔流が偽神を呑み込み、それだけでは飽きたらず下の大地を抉り取りクレーターを生み出した。

───武神の〝必殺〟が通り過ぎた後、爆心地には何も残らなかった。


「「「「オオオオオォオォオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」」」」


生き残った真神軍の者達が歓喜に沸いた。

後に偽神殺し大戦と呼ばれる僅か一時間強の戦闘、超克の武神が停滞の偽神を討ち取るという形で、改造者連合軍側が勝利し幕を閉じた。軍隊長の〝消滅〟に、神圧軍の残党はどこかへ姿を隠した。被害は改造者連合軍側、真神軍員以外全滅。神圧軍側は軍隊長一人、軍員一人の消滅。奇しくも、神圧軍を潰すはずが改造者連合軍側の戦力が大きく削られることとなり、この大戦にて各軍の戦力バランスは大きく傾いた。そして以降は真神軍が台頭する時代となった。しかし、多くの者は勘違いしていた。これで神圧軍が滅んだと、そう思ってしまった。軍隊長は消えたが、一人で改造者の上位軍を叩き潰す実力を持った神圧軍員達はまだ残っているのに……



<偽神殺し大戦より一年経過。無銘軍本拠地、新規軍員へのスピーチ>


「────やあ。歓迎するよ。ようこそ我々、無銘軍(Nameless Platoon)の仲間へ。22世紀初頭、私達の居る此の世界はコンピューターシミュレーションであることが確認されたのは知っているな?此の事実は各地で報道され、人類を大きく震撼させたが、次第に動揺は終息していった。何故ならコンピューターの中のデータに過ぎない存在だと分かっても普通の人々にはどうしようもない。今までと生活が特段変化する訳でもないからだ」


「だが、私達は違った。自身を〝改造者〟と称する私達は特殊な道具、〝HBL(Hack Basis Launcher)〟を用いることで世界への干渉を可能とした。HBLとはクレジットカード程の大きさの黒いカードで、此の世界内のデータを書き換えるツールだ。改造者はHBLを用いて世界に〝アドレス8桁データ8桁から構成される干渉コード〟を電子信号の形で入力することで、トマホークミサイルの直撃を喰らっても無傷で生還できる防具や、一振りでビルを倒壊させられる太刀を生み出すことができる。HBLは体系化された技術だ。コードを作るには知識が必要だが、コードを入力するだけなら誰でも可能だ」



「改造者の中でも、特定の技術において頂点へと至った者は〝神〟を冠することを許可される。神の中では超克の武神が有名だな」


「とは言え、最弱で無能な改造者でも一個大隊と対等に戦えるという現状ではとても一般人に改造者は倒せない。…しかし改造者であれば改造者を倒せる。改造者の中には同じ改造者を狩ることを趣味としている奴も存在する」


「同じ改造者から身を守り、同時に他の改造者を倒すために作られた組織が〝軍〟だ。軍所属の改造者を攻撃するとその軍全体を敵に回すことになるため、基本的に軍所属者は他者に攻撃されることは無いだろう。我が軍、〝無銘軍(Nameless Platoon)〟は傘下に夜桜軍、百槍軍、爆殺軍という三軍を従えている。無銘軍の構成員は僅か5名。しかし其々が一騎当千、当万を誇り他の軍とは一線を画する強者揃いだ」


「私達の強さを例えるとだな…… 現状最強の真神軍(Origin Deities)と一対一で良い勝負ってとこだな。ん? まるであの神圧軍(Zeus Pressures)のようだって? 面白い冗談だな」


「今後の君の活躍に期待している。あぁ、私の名前? それはまた今度、教えてやろう」



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