第3話 〝対等な関係〟
待たせたな!(待ってない
エタったかと思った?
実は原作者が長期休載宣言したので、再開を待つまでの間、「作者が今書けないなら、私達二次創作者達が書けばいいじゃない!」という思考に至り、久しぶりに書くという事態に。
駄文な上に特に面白くも無いだろうけど、私なりに敬愛している原作者様の為にフェバルの世界を広げようという魂胆で行きます。
いつか、レスト様が復活する日まで、ちょくちょく書いていくので、これからもウチのエネミアちゃんをよろしくしてやってくれると嬉しいです。
最後に今回の話に対して一言。
急展開注意!
「………申し訳ない」
「いいのよー、人手が足りなかったから良かった部分もあるし」
はい、久しぶりですね。エネミアです。
あの後、知らなかったとはいえ、食料泥棒という死刑宣告されてもおかしくない事態(あくまでエネミアの故郷基準)をやらかした私を、あの赤髪の家族は逆にもてなしてくれるという、女神と見紛うばかりの慈悲を見せ、許してくれた。
ただ、私が食べたあの果実は種自体が大分入手しづらい上に、三年間でたった一つしか実らないという希少な果実だったらしく、流石にタダという訳にもいかなかった為、家族が経営している飲食店の手伝いをする事になったのだが、それでもかなり優しい沙汰である。感謝しかない。
そして私は現在、その飲食店の〝うぇいとれす〟とかいうーー所謂もてなしの相手をする人の事らしいーーの制服を着せて貰っていた。客の前に出るからには、今までのボロ切れ同然の旅装ではダメらしい。想像してはいたが、服の生地は未だ嘗て見たことない程上質なものだった。肌に張り付かない、ざらつかない服とか初めて着たよ。
「ふん、馬子にも衣装ってこういう事を言うのね。……まぁ、似合ってるんじゃない?」
因みに、このド下手な〝つんでれ〟をかましてる15歳くらいの少女ーーー笛吹きをミスったあいつであるーーーは一家の一人娘、アミカちゃんである。
三年に一度の貴重な楽しみであったらしい果実を取られた為、先日まで大分不機嫌だったのだが、最近やっと機嫌を直してくれた。
後で聞いた話だと、私がこの家に滞在するのを許可されたのは、この子のお陰だとか。理由は知らんが物凄く感謝してる。でも、その優しさの出所がわからないから現状一番警戒してる。ついでに私怨も少しある。
ーーそんな感じの〝つんでれ〟娘である。
「おい、今思考した事を隠さず話せ」
「ド下手な〝つんでれ〟っ娘………ーーー痛い」
正直に言ったら拳が返ってきたでござる。
まぁ、全力でやったら弱体化した今の状態だと気絶じゃ済まないと思うので手加減してくれてはいるようだが、それでも視界が霞む程度には痛い。
「早速、仲が良くなったみたいで安心したわ〜」
「………どこが」
「ほんとよ」
因みに、このおっとりとした感じで訳の分からない世迷言を呟いた女性は、私にご飯を振舞ってくれたあの女神である。アミカの母親らしいが、全然似てない。断言する。
因みにこの家庭の最終的な決定権は全てこの人にあるらしく、アミカが私の滞在を許してくれたとか言うが、ただ単に母親に直談判しただけである。『何らかの権利が欲しいなら命を差し出せ。もしくは奪いとって見せろ』が基本だったマテリムジアイヤとは違い、家庭内で賊の沙汰が決まるのは驚いた。とりあえず、私が助かったのはこの人のお陰と思っている。
断じてアミカのお陰とか思ってはいけない。
「そろそろ、開店するぞ。急げー」
「はーい、今行くわ」
「あ、うん。今行くわ、お父さん」
「………借りは稼いで返す」
開店の挨拶をしたのはこの家族の大黒柱である父様である。特に特徴も無い人である。強いて言うなら料理が上手い。それだけ。
でも、いつも美味しい料理を振舞ってくれるので、私の中では一番心を許している相手でもある。
とりあえず、これまで散々世話になっているので、接客とやらで私の有能さを示し、借りを返すとしよう。稼ぐのが仕事なら、私に考えがあるのだ。
少なくとも、アミカにだけは負けられない。
因みに私がアミカの事をここまで嫌っているのは、単純にライバル意識である。
理由は数日前まで遡る。
ーーーという感じで、私の華々しい接客デビューの前に少し回想をしてやろう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あれは、私がフェバルになってから三日が経った頃だった。
何をしても普通以下の実力しか出せないのに流石に疑問を感じた(というか、疑問を感じるのが遅すぎる気がするが、それは言いっこ無しである)私は、フェバルとなったのが、私の弱体化の原因なのではないかと考えた。
まぁ、タイミング的に考えてそれしか思い浮かばないし。
でも、魔神ちゃん、つまりプリシラはフェバルの事を『超越者』と称した。
実際、フェバルになる直前に出会った魔女っ子(笑)は『超越者』と呼ぶに相応しい底の見えない力を宿していたから間違いとかではないだろう。
フェバルが不老不死と聞いたから、寿命のある人ではあり得ない程の長い年月の修練の果てに『超越者』となるフェバルがいるだけだ、という仮説も建てたのだが、それではフェバルになったばかりの私がプリシラに『超越者』扱いされた事の説明がつかない。
つまり、プリシラと魔女っ子(笑)ことエーナさんの会話から、フェバルとはそれそのものが『超越者』の証であり、そして『超越者』と呼ばれるに相応しい力を持っている存在であるとわかる。
つまり、フェバルになる事と『超越者』になる事は同義なのだ。だとすると、修練を積んで『超越者』になった訳ではないフェバルが相応の力を手に入れられる方法は一つ。
何らかの外的要因から突発的に力を得る事である。
外的要因に関しては散々存在を匂わせてくれたので簡単に想像がついた。恐らく、星脈とやらがフェバルの力の源なのだろう。
星脈の詳細は知らないが、フェバルが複数いる存在である事はプリシラの『武闘派害虫集団』という散々な言い草から理解できる。つまり、複数の『超越者』を簡単に量産できる程度には恐ろしい力の塊ーー星〝脈〟と言うからには塊というより力の〝流れ〟なのかも知れないが、つまりはそれ程強大な存在なのだろう。
プリシラが『悲惨な未来確定のデットコース』と発言した事から運命にすら作用する恐ろしい力だと言うこともわかる。
そして、そんなーープリシラ風に言うなら『星脈の奴隷』であるフェバルとなった私にも、何かしらの力が与えられていると考えた。
弱体化の事をその力の〝代償〟か何かかと推測したのだ。
そのため、アミカの家ーーオーメスという姓らしいーーに滞在する数日は能力の検証をしていたのだ。
結果は散々だった。意識して感じ取ろうとすると、まるで自分そのものが内側から抑え込まれているかの様な不快感を感じることができた。
その感覚は全身を鎖で雁字搦めにされた挙句、楔を両手両足に打ち込み、小さな箱に押し込められる様な………とても耐えられそうに無い不快な感覚だった。
何とかその拘束感を解こうと苦闘した数日は、特に成果も無い酷い毎日で、仕方なく弱体化した結果、持ち上げる事すら困難になった愛剣を素振りするしかできなかった。
そこに、剣聖と呼ばれた頃の栄光など無く、何かもわからないものに縛られている日々は屈辱でしか無い。
そんな、焦りと屈辱と縛られる不快感でどうにかなりそうな日々だ。その一言を聞いたのは。
それは私が、アミカと初めて全力でぶつかり合った日で、今の関係を作り上げた原因となった日。
ーーーある意味、記念の日かも知れない。
「ーーーうわ、不細工な剣術ねぇ……」
それは、色々と追い詰められていた私にとって許容できない言葉だった。
「………何が、言いたいの?」
「正直言ってアンタに剣は向いてないって思ってる」
その言葉の主ーーーアミカは私に正面からその言葉を堂々と言い放った。
「うるさいな」
「何で、そんなに剣に執着してるのよ?力も無い、体つきに恵まれてもいない、ちょっと小突いただけで倒れちゃうような弱い貴女に、それは無用なものでしょ?」
当然、アミカの言葉は認められなかった。
ーーー認めたく、なかった。
「……私の剣は、こんなものじゃ無い」
出てきた言葉はかなり言い訳じみた言葉だった。
実際、私の剣は我流だ。突き詰めれば、高い反射神経に任せて滅多斬りにしてるだけの単純な剣術。その辺り詳しい剣術家からすれば唾棄すべきものだろう。
「そう、でも私も戦闘の心得を少しばかり齧っているから分かるけど、貴女、落第点なんてものじゃ無いわよ?」
「ッ!………貴女に言われる事じゃない」
だが、そんな剣でも私の人生を共に駆けてきたものだ。
今まで、この剣で全て乗り越えて来たんだ。
過酷な環境も、獣人の迫害も、ーーー死の恐怖も。
「あっそう。なら何も言わないわ」
「……………」
「でもさ、〝死にたくて〟振るう剣なんて、侮辱なんてものじゃないわよ?」
その言葉は私の最後の砦を簡単に砕いた。
「お前に……」
「…………?」
思わず口から漏れた言葉は、一度出たら止まらなかった。
「お前に何が分かるッ!!!」
いつの間にか、私は私の言葉に振り向いたアミカを押し倒していた。服の襟を引っ張って馬乗りになり、剣先を向けてその激情をぶつけてしまっていた。
「っ!……っイッたいなぁ!!」
「……貴女に分かるわけない!!生きるだけの事すら絶望に塗れた悲しさも!最強に登りつめた後の虚無感も!誰もが認めても、ずっと誰とも対等になれなかった悔しさも!ーーー分かるわけがない!!」
「分かりたくも無いよ!そんな死にたがりの剣なんて!!」
そのままぶつけた激情の言葉は止まらず、口から酷い暴言として吐き出され続けた。
その言葉は私の理性を抑えて、本能のままに飛び出すだけで。
ーーー他人との〝対等な関係〟なんて私は求めていたのか、と今さらながらに自分の本音に気づいたのだった。
確かに私は、獣人として迫害され続けた。剣聖として認められても、今度は賞賛されるばかりで、孤独感は拭えなかった。
悔しかった。悔しかったのだ。
意図せず漏れた本音は本人すら気づかない深層にある願望だった。
そんな言葉すら、彼女は一蹴して、『弱くなった私』の弱々しい拘束を振り払って立ち上がった。
「分かって欲しいなら喚くな!叫ぶだけじゃなくて、努力しろ!!走り続けて、走り続けてもうこれ以上ない高みですら手に入らない何かがあるならーーーーこんな下らない事で怒ってる暇なんか無いんだよ!!」
「知ったような口を、聞くなぁあああ!!!」
そして、私は激情のままに剣を振った。
その後の事はあまり覚えてない。なんで、あそこまでアミカの言葉が感に障ったのかも知らない。
ただ、いつの間にかフェバルになってから私を縛っていた見えない鎖は消えていて、何故か故郷で剣聖と呼ばれていた時と同じ力を取り戻していた。
でも、その一つの生存世界で最強と呼ばれた私の力を、アミカは全て受け切ってくれた。
「………全力、出したでしょ」
「………うん」
意識が正常に作動するようになってから、はじめに見たのは青い空だった。
いつの間にか、私達は二人とも仰向けに倒れていたのだ。気力は底をついていて、周りには台風でも起きたのかと思う程の惨状が広がっていた。
「………私、生きてるよ」
「………うん」
そう、全力でも倒せなかった。本人は齧っただけとか言っていたが、アミカの力は剣聖にも劣らない力だった。
「………最強なんて言ってたけどさ」
「………うん」
「私みたいな小娘一人倒せなくて、最強とかあり得ないよね」
「………そう、だね」
言い聞かせるような言葉だった。
まるで、姉が出来たかのような気分だった。
そんな、気分にされたのが心地良くて、そして、負けたくないと思った。
「ほら、貴女がさっきまで言ってた事が全部解決した」
「………?」
「だって、貴女は最強じゃないから、対等な人なんて一杯いるよ」
「…………」
「だって、貴女は強くなんかないから、登りつめた虚無感とか、そんな変なもん抱えてなんかいない」
「……………っ」
不思議と涙が溢れたのを覚えてる。
理由はわかる。
確信があったんだ。
こいつなら、私と対等に接してくれると。
こいつなら、私を絶望に堕としたりしないと。
こいつならーーー
「生きるのに辛かったら、家に帰ればいい。だって、ここが今日から貴女の家なんだもん。
その為に、私がママに説得したんだもん」
「うっ……ううぅ……」
「あんたは弱いよ。すっごく弱い。だからーーーしばらくは、私達が守らないと、ね?」
ーーーー私を独りにしないと、確信してしまったんだ。
「ーーー孤独を語るなら、私達が居なくなってからにしなよ、生意気」
「……うあああぁぁぁあっ!!!」
その日は人生で初めてだ、ってくらい泣いた。
なんで会って数日の、それもただの泥棒にしか見えない私にこんなに良くしてくれるのか意味不明で、訳がわからない。
ぶっちゃけると、殴りあってわかり合うというシュチュエーションも青臭くて、微妙だ。
急展開すぎてよく分からないし、慰めているのか、貶しているのかも良く分からない。
なんで、こいつらはこんなに赤の他人に親身になるんだろう。
その答えは、案外直ぐに分かった。
ああ、そうか。こいつらはバカなんだ。
どうしようもなくお人好しなんだ。だってそうとしか思えない。
打算とか関係なくて、自分の事情とか勘定に入れてすらいない。
異世界にいって初めて会ったのが、こんなバカな家族だなんて、本当に呆れてしまう。
完全に他人でしかない私を簡単に懐に入れて、そんで家族面したーーーーそして、その事が心底嬉しい私の心がムカつく。
だから、私は泣き止むと同時に言うべき事を言った。
これからも彼女ーーーアミカと付き合うなら、ただ、好意に甘えるだけじゃダメだと思った。
何よりそれじゃあ、私の求めた〝対等な関係〟じゃないんだ。
半分意地の様なものだけど、私は決意する。
これは、アミカと対等になる為の宣戦布告。
「………私、アミカ嫌い」
「………分かってたけど、直球だね」
そうだ。私は対等になるんだ。
でも、今まで、孤独だった私には、家族としての〝対等〟なんてよく分からないから。
私が一番、分かりやすい〝対等〟な関係をアミカに押し付ける事にした。
「………アミカは、私のライバル」
「………へぇ」
私の言葉に、アミカは面白そうに口角を上げる。
「……何度だって挑む。何度だって諦めない」
「………ええ、それでいいのよ」
「……お互い、逃げるのは無し」
「……当然ね」
「「どっちかが勝つまで、何度だって挑んでやる」」
二人で宣言したのは、所謂ライバル宣言というものだ。
家族の振る舞いなんて知らない、私が一番身近で分かりやすい〝対等な関係〟。
そう、私はーーーアミカが嫌いだ。
他人の心にづけづけと踏み込んできて。
勝手に悩みを晴らした挙句、自慢の剣を全て受け切ってみせた。
そんな、図々しいアミカが嫌いだ。
でも、それ以上にーーーーこの上ない程、この出会いに感謝している。
私の初めてのライバルにして、初めての家族。
きっとフェバルとして、いつか別れる時が来るとしても、この出会いだけは忘れないだろう。
全力でぶつかり合った疲労か、なんだか意識が薄れてきた。
でも、その瞬間。
私の意識が落ちる直前に、どこか特徴的な桃色の髪の少女がほんの少しだけーーーー嬉しそうに笑っている様に見えたのだった。
因みに、アミカに全力をぶつけ合った時は剣聖としての力を完全に取り戻していたのだが、朝起きたら、またいつもの貧弱な体に戻っていて軽く泣いたのは、完全に余談である。
いや、展開早すぎるとか、いきなりすぎて意味わからんとか思う人多いと思うけど、話の構成とかまだ勉強中の作者なのでご勘弁を。
基本この二次創作はストーリーに細かい小ネタとか挟まれないので、巻きで行くと思います。
なので、多分合わない人が多いと思いますが、ちゃんとした小説を書けるようになったら全話修正も視野に入れているので容赦ください。
今は、兎に角投稿して、話の骨組みが十分出来上がったら、話の違和感が無いように極力修正する予定です。
私だって急展開しか無くて読者置いてけぼりの訳がわからない小説を書きたい訳じゃ無いですし。
多分、ある程度話の骨格が出来たら肉付けみたいな感じで割り込み投稿とか活用して整合性を取る予定。
なので暫くはこの作品の展開に期待はしないで下さい。