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不協留学  作者: 玲於奈
146/146

私の未来

なし

来た道を戻る。


メインストリートから

国道へ続く

横路地へと行く


国道に近づくにつれ

見えてきた

巨大ホテル


「ああ、このホテルは」


思わず感嘆。


かくいう

修学旅行で泊まったホテルは

こうして

私の目の前に姿を

現した。


今でも思い出す


2階建ての風呂。


浴場が広い

とてつもないひろさで

2階から

階段をつかって

降りていく感じだったような。


外にも露天風呂があって


「こんな広い温泉が

 あるのかあ」


と夢見心地。


なつかしい


感慨無量。


しかし、休みは終わって

東京に戻らないといけない。


いづれの再会を。


というわけで

宿泊はしない。


ホテルの前を通り

車を止めた

駐車場に向かう。


おなかが減った。


たくやさんが朝

コンビニで買ってくれた

サンドイッチしか

今日は口にしていない。


腹がなる。


たくやさんとえりこさんは

笑って


「サーフィンはじめは、

 身体は緊張して

 固くなるし、

 海の寒さでエネルギー使って

 腹減るんだわ」


とまたひとしきり笑う。


苫小牧に知り合いの

料理屋があるというので

そこに行くことになった。


またもや北上。


かた焼きそばが

美味しかった。


新千歳空港から

飛行機に乗るために

JRの駅まで

案内してくれる二人。


ここからなら新千歳空港は

目と鼻の先らしい


確かに頭上には

ヒコーキがどんどん飛んでいる


あるいは降りてくる


駅前は、

いまどきの駅前だった。


改札口の前


なぜか、岩手の

実家から送ってきた

おそうめんの箱を

私に渡すえりこさん


「なんもないけどね」


そう言って

笑顔でわたす


とびきりの笑顔。


しかし、もの悲しい。


「太陽、なんとか

 だけど

 やっていくわ」


しずかに一語一語話す

えりこさん


たくやさんも黙って聞いている


私が来ることで

一緒に住むようになった。


はたまた、単なる

きっかけ野郎なのか。


二人の共通でもある

サーフィンも

させてもらった。


「12月は、俺たち

 ハワイに行くんだわ」


「とも稼ぎで

 うちらリッチで

 サーフィンに行くんだわ。

 そのつもりで」


なにが、そのつもりか

わからないが


養育費、住宅ローンは

宮沢先輩が払うと

言っていたから


お金の行き所が

ないのであろう。


冗談のようにして言われると

宮沢派の私は

さらにもの悲しくなる。


問い返す間もなく


電車が近づいている

駅のアナウンスがある


行かなければならない


あわてて

もそもそとお礼を言って

手をふって改札を通る。


「今度はカレーラーメンさ

 食べにいくべ」


たくやさんが

おもしろいことを言っているが

笑えない


「これは」と

思ったのであえて

後ろは振り返らない。


すぐに


改札を出てすぐの

1番ホームに

列車が入ってきた


そのまま

またもや振り返らずに乗り込む。



扉が閉まる。


閉まったことで

改札の方を見る。


すぐ前の

改札を見れば


えりこさんが

大きくおおきく

手をふっている


ああ、あの時も


思い出す。



私が留学の出発をするときも



大学寮の前で

手をふってくれた


あのころと同じだ。


何もいえない。


そのまま

電車は走り出す。




景色はあふれる涙で

見えなかった


ありがたいことに


空港までは近かった


デッキにたたずむ




窓からは

さきほどの苫小牧の街が

見える


工業都市。

空から見れば

町全体が茶色。



「さらば北海道」


「また来るぜ」


独り言をとなりの

カップルに聞こえないように言う。


最後にひとこと。


「えりこさん、

 ほんとうにお幸せに」


下界が見えなくなる直前に

つぶやく。


白の世界。


流れる雲の中

上昇する飛行機。


さあ、これからの

私の未来。


どうでるのだろうか。


















半年のお付き合い

ほんとうにありがとうございました。

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