バッドの芯
なし
おおきな太平洋。
ここらの海は
20mほどで
急に深くなる。
火山性の山が
ひかえていて
海への
斜面の勾配が
きつくなったのか
恐るべし北海道岸
ちょうど
テトラポットのあたりが
水浸ポイントか
しかしながら
たくやさんにとっては
そこらが
絶好のポイントらしく
たくやさんは
どんどん
沖に向かって
パドリングしながら
すすんでいく
反面
私はというと
ただひたすら
「こわい」の
連鎖
しかし、ここはまだ
ひざ上の浅い海が
広がる
こわい気持ちが
つよいが
ここで
練習をする。
「ボードに乗る」
その言葉とは
うらはらに
平らなはずなのに
すべるように
うまく乗れない
野球でバットの芯に
ボールが当たって
角度をつけて
飛んでいく
それと同じように
ボードも体にピタッと
フィットして
平らに乗れる感覚。
感覚問題。
たしかに理論上は
そうなのだが・・
スキー板に固形ワックスを
塗るように
身体に板がなじんで乗れる
海への出発前
たくやさんは
クルマを止めた脇で
私が乗るボードに
ワックスを塗ってくれた
バランスがとりやすく
なるとのこと
しかしながら
浅い海で
波もないところで
ボードを静かに
浮かべているのに
乗れない
ボードの上に寝そべって
中心にのれなくて
茶色の砂浜
そして
その海中に落ちる
自転車に乗れない人が
練習でしばらくすすんで
左右にころぶ
まさにそれと同じ現象
ぜんぜんに
安定感をもつどころか
まったくのれない
こんなことで
手こずっていて
果たして
ふかい深い海が
ひかえている沖に
でられるのだろうか
昨夜の焼肉でも
波にのれずに
海中に落ちる
いやたたきつけられると
聞いた
えりこさん
痛かったらしく
さらにコンタクトもなくしたらしく
裸眼でサーフィンの
練習をしているそう
あな恐ろしや
見えない分恐怖感が
なかったのだろうか
足がつかない
ふかい海
ボードの他に
浮くものはなく
「溺れる」という
つよい不安が
しずかにわきあがる
たくやさんは
何も言わずに沖へと
向かう
すぐにその背中が
小さくなる
まずは
ボードに乗れ
無言の圧力を
感じる
このままではと
意を決して
ボードに乗るも
勢いありすぎて
派手に海中に落ちる
浜を見れば
浜辺の小高い山に
えりこさん
長望遠こそないものの
文春砲のように
海中への落下ショットを
なんまいも何枚も
おさめている
えりこさん
私のいる場所まで
10mくらいの
距離がありながら
連続したシャッター音が
聞こえるよう
急に海水を冷たく
感じる
背筋が寒くなる
えりこさん
あなたの目的はなんですか
長望遠で狙いながら
えりこさんが
笑ったような気がした。
なし




