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遺影
なし
ボードを車から
出して
準備を始めるたくやさん
着々とすすめる
慣れた手順
「このバンドを
足にまくんだわ」
ボードが波で
流されていかないように
バンドで体と
ボードをつなぐようだ
また、
ボードもでかい
わたしのボードに
くらべて
たくやさんのボードは
小さい
えりこさんが
きがついたようだ
「ボードは小さいほうが
むずかしいんだわ」
「昨日も言ったけど
波にのるのは
むずかしいよ」
えりこさんが
笑って言う
「おれっ。今日は
やめとくわ」
長身の好青年は
遠慮したのか
すぐに車に乗って
去っていく
サーファーは
かっこいいという
都市伝説は
本当のようだ
ボードを小脇にかかえて
いよいよ
海へ向かう
えりこさんも
ついてきてくれる
ふりかえれば
いつのまにか
スマホで写真を撮っている
浜辺に到着
浜辺の色で茶色
波が荒い気がする
海にボードを浮かべて
ボードにのる
「遺影はとったかんなああ」
えりこさん
はじめての
サーフィンで緊張してんだから
洒落になんない
ギャグ
言わないでくださいよ
心の中でつぶやき
海に出る
なし




