おしゃれなオープンテラス
なし
白い大きな犬を連れたマダムが
ゆったりと
木かげの道を歩く。
会社ちかくの
オープンテラスでおそい昼食を
とる私。
札幌の仕事は
受注することが内定し
実際の業務は後輩がうけおって
補足を私が手伝う役割と
なった
ホテルの廊下で
宮沢先輩に
「必ず電話をしてやれよ」
そう言われた
しかしながら
えりこさんにする電話は
ためらわれて
「宮沢先輩とお会いしたと」
後日、メールで送った。
大きな犬を連れる女性の
後ろ姿を見ながら
えりこさんの心境が
思い浮かぶ
宮沢先輩とえりこさんが
離婚したと聞いたのは
ほかでもない
えりこさんからだった。
突然かかってきた
見覚えのない番号。
新手の詐欺が横行する中
出たくはなかったが
もしかして
取引先かもしれない。
そう思い
電話にでた。
出たと思ったら
開口一番
「太陽、わたし、
宮沢先輩と離婚したんだわ」
何十年かぶりなのに
げらげら笑うえりこさん。
悠悠自適の専業主婦であったえりこさん
家のことだけしていれば
よかった
女の子もいて
当時小学3年生
まだまだ
手がかかるころだったそう
そして、離婚。
若い女の子たちが
にぎやかに歩いていく
「同じ課だったらしい。
すごくきれいな人。
いろいろ
助けているうちに
親しくなったそうなの」
「そりゃそうよね。
宮沢先輩。
イケメンだもんね。
大学の時も
あれでけっこう
もててたらしいよ」
かつてのえりこさんの
べしゃりのまま
大学の先輩であった
えりこさんと
話をして錯覚に襲われる
「私は、浮気一つや二つ。
男の甲斐性。
そう、言ったんだけど・・」
「宮沢先輩。
一言。
すまん。離婚する。
家のローンも、養育費も
俺が全部払う。
だから、別れてほしい」
何も言えず、黙る私。
無言。
「宮沢先輩
やさしいから
これでよりを戻して
もとに戻っても、
相手の人に
悪いとおもったんだろうね。」
「まあ、やっぱり、
あいつは情にながされる。
そして、みえっぱりの
九州男児やけんね」
電話口で
ふっと笑うえりこさんが
とても悲しい
子どもを抱えての
えりこさんは
相当の覚悟だったらしく
離婚後
一念発起して
小学校の採用試験を受けたそう。
大学で腰かけで
とっていた
教員免許が役にたったようで。
ついこないだの
電話を思い出すには
このおしゃれな
オープンテラスは
まったく
そぐわない。
おしゃれさや華やかさに
逆に心がしずむ。
なし




