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『死神のお仕事』

風邪ひいたのでなんて書いてたか思い出せないレベルで意識がもうろうとしてる中書いてました

帰り道、隣には転校生の美少女。端から見れば非常に羨ましい状況だろう。高校を出たばかりの道はまだ同級生や先輩たちも数多く見受けられる。

そんな中俺達を見つけた同級生たちは何事かと俺達を一瞥してはこそこそと話をしている。

あぁ居心地わりぃ。言いたいことがあるなら目の前で言えばいいのに。まぁそんな事を言っても仕方がない訳だが。

俺のマンションは高校からは徒歩二十分と言ったところに位置し、間には結構大通りを通るので寄り道し放題である。

カフェにコンビニ、スーパーからゲーセンまでより取り見取りで、そこには結構同級生たちも出入りしていると聞く。

「まいぞのくん。カフェ、いこ。」

そう促されるままに道路沿いにあるカフェに立ち寄る。

店内には同じ高校の先輩も数人見られ、こちらを見るとなにやらにやにやしながら近寄ってくる。

「ねぇねぇ・・・君。ちょっとそこのお嬢さん貸してくんね?やっぱほら、そういうのは上級生の出番でしょ?」

ほらきたこれだ。やっぱアルフォード、こいつやたら可愛いからこういう先輩に目を付けられてるんだよな。

当日からこれとはなかなかやると少し思う。だが面倒くさいのですみません、と言ってことを穏便に済ませたかったのだが…。

「私は今、まいぞのくんとお話をするためにカフェに寄ったんです。あなたとお話するためではありません。」

「おい、こら!?」

遅かった。まずい、こいつがこっちの常識を知らない外国人だって忘れてた!

確かに気に触るのは俺も同じだがあまりそういう態度をとると絶対逆ギレされる・・・。

「あぁ…?言ってくれんじゃねえかオイ。お前は黙ってこっちこればいいんだよ!」

あ、やばいこれ。絶対こいつひどい目にあうな。学校生活で相当やらかした感じすごい。

初っ端からこれとはこいつもつくづくついてない。まぁ慣れるまでは俺が何とかしてやるか。

案の定逆ギレした先輩は強引にアルフォードを掴もうとして・・・近くにいた若い女の人に腕を押さえられた。

「ノンノン。しつこい男は嫌われるわよ?」

挑発的な笑みを宿した女性はふりほどこうと暴れる先輩を流れるような動作で捌き、拘束した。

悔しそうにもがく先輩だが、振りほどくどころか更にぎちぎちと鎖のように締め付ける女性の腕からは到底逃げられないように思えた。

「分かったら彼女には関わらない方がいいわ。」

それだけ言って拘束をあっさりと解くと女性は侮るように一言だけ伝える。

それを聞いた先輩たちは恨みがましく俺を見た後、渋々といったように店から出ていった。

少しいい気味だ。まぁ後で絡まれる可能性もあるが恐らく問題ないだろう。

「まいぞのくん、こっち。」

そう言って促されたのは先ほどの女性が座っていたテーブルだった。

店内に人が集まってきたが特に何もなかったかのように装い、席に着く。

「呼んだのはアルフォードだけだったのだけれど…君は?まぁ彼女が連れてきたってことは悪い人間ではないんでしょうけど。」

向かい側に座った女性は俺を見ると質問を投げかけてくる。まぁ確かに知らない人間がいたらそりゃ驚くか。

「えーと、俺は舞薗駆って言います。そこの彼女から死神について聞いたところ放課後に伝える、と言った話になって。」

「・・・よく死神の話を聞いてくる気になったわね。普通気味悪がるか戯言だと言ってまともに受け取りはしないでしょうに。」

訝しむような目線を俺に送ってくるそこの女性。

長い白髪はくはつをうなじのあたりで結び、あくびをしてアメジストのような紫色の瞳を細めて頬杖を突く女性はおおよそ20歳程度だろうか。

大人っぽい仕草をしている為実年齢より大人に見えてしまうだけかもしれないが。

一通り俺を眺めた後まぁいいわ、と言って話を始める。

「私たちは死神って呼ばれる役職についているの。もちろんアルフォードもね。

あまり人に伝えていい話ではないのだけれどあなたは悪い人ではないようだし、伝えておいても問題ないでしょう。

死神って聞くとどんなイメージが浮かぶ?舞薗君。」

唐突に話を振られて軽く動揺するも、平静さを取り戻して答えを出す。

「…そうですね・・・外国に出てくる命を奪う悪魔とかそのへんのイメージがあります。

あとは鎌とかを持って命を刈り取る・・・みたいな?」

うんうん、といってよくぞ言ってくれたみたいな顔をして話を再開する。

「そう、一般社会ではそういうイメージ、言うなれば悪いイメージね。そういうのが浸透してるわ。でも実際はそういう訳じゃないの。

人間にはもともと定められた死期って言うのがあってね。その死期に本来死ぬはずだった人が事件や事故に巻き込まれて死ぬことを防ぐ為にできたのが『死神』よ。

魂を奪う、って言うよりも魂を管理する、って言った方がニュアンス的には正しいのかな。

例えば65歳で死ぬ予定の人間が事件に巻き込まれて25歳で死んじゃうと魂の管理に支障が出ちゃうのよ。

基本的には警察とかに身柄を渡すのがいいんだけどやむを得ない場合は殺傷も認められてるわ。あくまで最終手段ではあるけどね。」

なるほど。要するに魂の管理職ってことなのか。すごい話になってきたな。

ラノベか漫画みたいなことになってるぞこれ。

「単刀直入に言うわ。あなた、死神になる気はない?報酬は弾むわ。」

「えと・・・興味はあるんですけど…やっぱり想像がつかないのでそう簡単には。」

流石に中二病の俺とは言えそこまでの想像力は持ち合わせていない。

加えて事件の現場に出ていくわけだから恐らく命の危険もあるのだろう。

「そう。まぁ私もそうだったから気持ちは分かる。このあと仕事入ってるから…くる?」

隣で今まで黙っていたアルフォードが提案する。これはいい機会かもしれない。

現実でその状況を見ることができたら実感も湧くかもしれないからな。

「いいのか?一般人が紛れ込んだりして。」

全く関係ない俺が紛れ込んだら仕事に支障が出るんじゃないか。

そういう意図で質問をすると代わりに答えたのは白髪の女性だった。

「ここだけの話死神って人手不足なのよね。だから死神になる可能性があるなら多少の危険は顧みずに現場見てもらった方がいいのよ。

私は今日他の用事が入ってるから一緒には行けないけど彼女ならそこそこ実力はあるから大丈夫じゃないかしら。

ここは私が払っておくから現場に行ってきなさい。」

そこまで言うなら大丈夫なのかな。詳しいことは後々聞けばいい。

「分かった。まいぞのくん、行こ。」

促されるままに店を後にする。街にはまだ同じ学校の人間たちが数人見えたが先ほどよりははるかに少なくなっているかのように感じられた。

しかしアルフォードは人通りの多い大通りではなく、何故か暗い路地裏へと入り込んでいく。

そこには金属バットを手にした大柄な男が三人と・・・一人の中学生だろうか?

小柄な少女を囲んで何やら言っている。分かるのは何やら穏やかな雰囲気ではないということだけ。

「いい加減にしろよ…あぁ?」

「や、やめてください・・・。」

うひゃあ。これあかんやつだ。少女はおびえたような声を漏らしながら座り込んでしまっている。

そんな男達の恫喝を背後で聞きつつもアルフォードは一切の恐怖を感じないような足取りで男たちの背後に忍び寄る。

「お兄さんたち。そういうのはやめた方がいい。」

「なんだお前。お前も殺されてえのか!?」

背後に突如現れたアルフォードを認めると男の一人が激しく喚き散らす。

しかし怯む素振りを全く見せず、

「殺されるのはどちらか、認識するべき。」

挑発と言うよりはただ事実を述べるような口調で言葉を紡ぐ。

その声には全く感情は籠っておらず、一種の警告のようにも感じられる。

「ガキが・・・死ね!」

全く動じないアルフォードに痺れを切らしたのか、男の一人が金属バットを大振りな動きで振りかぶる。あの巨躯から放たれるバットの威力は並大抵のものではないだろう。

当たればアルフォードの華奢な体は絶対無事では済まない。それは火を見るよりも明らかだ。それでも彼女は怯まない。

彼女は振るわれたそのバットを・・・一刀両断した。比喩ではなく、文字通りに。

彼女に右手を見ればいつの間にか一振りのナイフが握られている。金属でできたそのバットは横一文字に薙ぎ払われたナイフによって綺麗に分かたれていた。

あまりに速いその動きとその凄まじい鋭さの両方を込めたその一太刀に男たちは驚愕に顔を染める。

「お、おい・・・なんだよ今の・・・。」

「嘘だろ…!?」

「次はあなたたちがこうなる番。こうなりたくなかったらどこかに行くべき。」

冷静沈着に淡々と脅すアルフォードは男達から見たら非常に恐ろしく思えたのだろう。

男達は我を忘れ狂ったように大通りに駆け出していくが…そのあとを追っていく様子はない。

あくまで命を奪わせないのが目的なんだろうな。深追いはしないっていうのもそのためだと思う。

一連の行動を見て思ったのが・・・

(超かっこいい!!!!)

小並感で何が悪い。すごくかっこいいと俺は思う。

あんな風に生きれたらいい。それが俺の理想だ。

「どう?死神になってみる?」

口元に幽かな笑みを浮かべながら振り返りざまにこっちを見てそう言うアルフォードは今までよりもずっと魅力的に思えて。

「あぁ。俺は死神になりたい。」

俺も口元に同じように笑みを宿しながら答えるのだった。

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