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部屋が元の明るさに戻る。
「それで、どうするの?」
答えは決まっていた。
「やります。」
ベティさんは少し驚いた顔になったが、すぐに元の表情に戻った。
「あら、迷わず決めれたのね」
父さんが会社に絡んでいたとなるとやらずにはいられなかった。
父さんについて詳しくわかるかもしれない。叔父さんの所在もわからないけど、僕に託すということは余程のことなんだろう。
「話の早いことはいいことだけど、本当に良かったの?」
「・・・はい。後悔するかもしれないけど、でも、叔父さんの頼みでもあるし、なにより父さんのことが知りたいから。」
「そうと決まれば、急がないとね。」
「やってもらうことがいっぱいあるのよ。駆け足でついてきてもらえる?」
そういうとベティさんはハイヒールではありえない速度で歩きだした。
僕は小走りでベティさんについていった。
エレベーターに乗り込むと彼女は80階を指定した。
「どこにいくんですか?」
「社長になるといってもPMCの仕事も分からない状態で、社長になってもらってもお互い困るでしょ?」
「現場にでてもらって、実際にどういう仕事か理解してもらう必要があるの。」
「かと言って兵士になれって訳でもないわ。第一、P.A.M.Cでは男性の兵士はいないし。」
「理由は後になったら分かるはずだから説明は省くけど。あなた、リ・ナックでは修理工してたんでしょ?」
「やってはいましたけど・・・。」
「なら丁度いいわ。あなたには専属のエンジニアとして雇い入れたという形にしておくから。」
「でも、僕は4等クラスの資格しかもってませんけど・・・。」
「ゴウジの甥でシンジさんの息子なら大丈夫よ」
「それにここで働くとなると1等クラスまではスグよ。」
その自信は一体どこから来るのか・・・。親父ってそこまですごかったのか?
子供だったから全然わからなかったけど実は相当凄い人だったのかも・・・。
レスタニアのエンジニアには実力基準が設けられている。
最低ランクが5等、最高ランクが特等クラスだ。
5等クラスは生活家電などの修理ができる程度で学生でもとれてしまう
4等クラスになるとある程度の精密機器や移動用車両、電子機器など修理・作成などが可能である。
主にその技術を売りに商売をしている人は多く、仕事ができる最低ラインだとされている。
特等クラスにまでになると国家レベルの技術者で、レスタニアには200名程度しか存在していない。
全体から考えても一握りの人間しかいないのだ。
ランクを上げるには試験を受けなければならないのと、技術経験がかならず必要で、だれでも簡単に受けられるわけではない。
莫大な資金が必要で、特等クラスなどには到底たどりつけないのだ。
そのせいかPMCや医療関係の会社はいかにライバル企業のエンジニアを引き抜くかだとか、優秀な人材を探し出し採用するかで大変らしい。
資格さえあれば一生遊んで暮らせるほどの金が手に入るとなると目指す人間は多いが、どうしても途中で挫折するひとが後を絶たない。
考えごとをしているうちに表示が80になっていた。
エレベーターの扉が開く。