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「・・・へ?」
ご同行?デートなら嬉しいんだけど、そういう雰囲気ではなさそうだし、やはり叔父さんの関係者か?
「よろしいですか?」
表情を変えず、透き通った声で僕に聞いてくる。
色々なことが突然に起こりすぎて、僕の頭は混乱しているようだ。
一緒に行くっていっても、叔父さんのところか?でもなぜだ?
考えても仕方が無い、とりあえず了承することにしよう
「・・・分かりました。」
「では、私についてきてください」
そういって彼女は後ろを振り返り、店の外へ出て行く。
あわてて僕もついていった。
「と、その前に!」
彼女は振り返りこちらを見る。変わらず無表情で、あの目でこちらを見る。
「み、店じまいとか色々準備をさせてください。」
「・・・。了解しました。店の外で待っていますので」
そのまま彼女は店を静かに出た。
まるで、ロボットみたいだな・・・。
そう思えるほどに彼女の表情はなく、動作にも無駄が無かった。
「さて・・・と、先ずは店を片付けなきゃな・・・。」
大型の道具の全ての動力を停止させ、元の位置に収納する。
店先の電力供給をすべて停止させ、終業手続きを行う。
小道具は腰にあるホルスターに戻し、バッテリーを交換し、チャージャーに接続させる。
出かけるときはいつも新しくしているからだ。
慣れた動作だが、考え事をしているせいでいつもより時間がかかってしまった。
2階にある自室に入り、急いで準備を行う。
手当たり次第に思い当たるものを肩掛けバッグに詰める
それでも必要最低限のものだ、こういうのは心がけている
部屋を出ようとしたときに、大切なものを忘れていることに気づき急いでとりに戻る。
形見であるネックレスだ。
造形はあまり好みではないが、あの日からずっと欠かさず持ち歩いている。
息をきらしながら店を出ると彼女は涼しい顔をしながらこちらを見ていた。
「準備は終えましたか?」
「はい、できました」
「そうですか、では行きましょう」
そういうと彼女はみたことのないものに跨った。
僕自身、こういう仕事をしているから乗り物とかには詳しいのだが、これは全く初めて見るものだった。
移動用2輪の様な形状をしているのだが、車輪部分はなく、代わりに2枚重ねのブレードが2つ回転していた。
後ろの部分にはジェットらしきものが見え、冷や汗がでた。
「・・・?。どうしたのですか?乗ってください」
無表情でこちらをみながら聞いてくる。まるで当たりかのように
「こ、これにですか?」
震え声ながらに聞いてみたが無駄であることはわかっていた。
「これ以外のどれに乗るんですか?」
「は、はい」
しぶしぶ跨ってみたが、意外と安定していた。
「あと、コレ被ってくださいね」
そういってフルフェイスヘルメットのようなものを渡してきた。
無言で受け取り、被った。
中は以外と密着しているわけでなく、被り心地は悪くはなかった。
「それ、絶対に外さないでくださいね。あと、しっかりつかまってください」
そういうと彼女はアクセルらしきものを思いっきり握った。
一瞬にして飛ばされそうになるところを必死に彼女の腰にしがみつく
女性のくびれなどを堪能している余裕もなく、がっしりと掴んでいた。
最初のうちは目をあけられずにいたが、慣れてくると目をあけることができた。
目をあけるとそこに広がっていたのは、小さくなった自分の町だった。
ヘルメットの両耳から声が聞こえた
「大変だったんですよ、ここに来るの。離島のくせにアクセスが貨物船しか通ってないなんて聞いたことないですよ。」
「ハハハ、田舎町ですから・・・」
乾いた笑いしかでてこなかった。
「それで、この乗り物にしたんですね・・・。どうしてヘリとかにしなかったんですか?」
「ヘリだと目立ってしょうがないですし、なによりコストがかかるんです。」
「それにこの最新型を試してみたいというのもありますしね。」
「僕の移動はテストですか・・・。」