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仕事用のバイザーを外し、端末の画面をそのまま見る。
ビデオメッセージのようで、そのまま再生する
そこには10年前の姿となにも変わらない叔父の姿があった。
「よぉ!久しぶりだな!元気にやってるか?
突然の連絡で申し訳ねぇな!こんな形で伝えるのはあんまり好きじゃあねぇんだが、忙しくてな!」
「本当はもっとはやめに送るべきだったんだがな、どうしても今しか時間がとれねぇ」
気さくで明るい叔父の姿に懐かしい気持ちと同時に悲しい気持ちが込み上げてくる。
「で、話なんだがな」
「俺、死んだみたいだわ!」
「面白いだろ?ハーハッハッハ!俺がだぜぇ?」
危うく手を滑らせ携帯を落としそうになる。
一体なにを言ってるんだこの人は・・・
いつもの冗談か?冗談でも言っていいことと・・
「このビデオはな、万が一俺が死んじまったときに備えて撮っておいたものだ。」
「詳しくは言えねぇが、次の仕事でもしかしたら死ぬってことがあるかもしれねぇ」
「だから俺の唯一の血のつながりのあるやつ、そうお前にメッセージを残そうと思ってな」
突然、叔父の顔が真剣な表情になり、冗談ではないのだと、思い知らされる。
「あの日から俺は一人で行ってしまって、お前に何一つ構ってやれなかった」
「おめぇには本当に悪いことをしてしまったと思う。」
「そこでだ」
「もし、俺が死んじまったら俺がもっているもの全てをお前にやろうと思う。」
「詳しくは・・・そうだな、このメッセージが終わったら分かるが」
「まぁ、こういうのはその・・・だな、苦手なんだわ」
「とりあえず、支度をしておくことだな!」
そう言い残し、ビデオは終了した。
意味がわからなかった。
10年前のあの日、僕を置いて叔父はどこかへ行ってしまった。
祖母に僕を預け、音信不通にしていた
祖母が亡くなり僕が店を継いだ。
その叔父が突然僕の携帯にメッセージを送り、突然死んだと僕に告げたのだ。
なぜ今頃になって連絡を、しかもこんな形で。
というよりどうして僕の携帯の連絡先が分かったんだ?
そうやって混乱していると一人の少女が僕の目の前に立っていた。
「あなたが”キシマ・ユウ”ですか?」
見たこともないような雰囲気の女の子だった。
こんな田舎町には絶対いないような独特の雰囲気をかもしだしていた。
長く腰までおろした黒髪、どこかでみたような服だった。
目は真直ぐ前を向いていて強い意志を感じさせる。それでいて吸い込まれるような。
顔つきも綺麗に整っている、芸能人か?でも、みたことないな
こんな女の子に面識はない、会っていたのなら絶対に覚えている。
でもなぜ、僕の名前を・・・?
「・・・?。大丈夫ですか?」
呼びかけられ、ハッと気づく。
「あ、はい、・・・大丈夫です」
「キシマ・ユウで間違いないですよね?」
「・・・はい、そうです」
もしかして叔父の関係者か?それとも娘・・・?でもこの子の歳であれば知っているはずだ・・・
「あなたの叔父、キシマ・ゴウジからあなたを連れてくるように言われました」
「ご同行願います」