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キャベツのサラダ

作者: 誰化

 高校を卒業して、15年たったか、たってないか。

 高校を卒業して、まず小さな会社に就職した。3年して、他の会社も見たくなって、フリーターになった。それから数年後、工場に就職した。同じ工場で仕事を続けたり、たまに出張したり、異動したり、仕事がきついこともあったが、人間関係も良く、仕事をそれなりにこなしていた。

 

 甥っ子が夏休みを利用して、こちらの休みにあわせて遊びにきた。男の一人暮らしを見てみたいらしい。甥っ子とは、わりと小さいころから遊んでいてた。遊んでやっていたわけではない。一緒になってゲームをしたりして盛り上がっていた。そして、一緒に義理の姉に怒られていた。

 甥っ子は高校生になり、来年は受験だという。大学への進学を予定しているらしく、地元にするか、他県にするかで迷っている、と言っていた。その参考みたいなもので、一人暮らしを見てみたかったらしい。甥っ子が駅に到着して、車で迎えにいき、少し休憩してから、夕飯の買い物に出かけた。

 夕飯はカレーにした。キャベツをスライスして細かく食べやすくしサラダにする。野菜を食べることが、一人暮らしでは特に大事なんだと教えておいた。虫歯と病気は、予防しておくにこしたことはないのだから。ちなみに、病気、とくに高熱を出したときのために、レトルトの保存食はあったほうがいいとも伝えておいた。

 夕飯をすませ、風呂も済ませたあと、今度はコンビニに出かけた。夜はゲーム大会の予定だったし、ジュースもおかしもいるだろう。あと、自分用に何本かアルコールを選んだ。そうしてるうちに、甥っ子が、美人な女性と話していた。いつのまにナンパするようになったのか、と思っていると、甥っ子に呼ばれた。美人さんを紹介されると、学校の先生だということだった。自分の高校にはこんな美人な先生はいなかった、と言うと、甥っ子は真面目な顔をして、先生と結婚してやってくれと言ってきた。それを聞いた美人さんは甥っ子に、うめぼしをくらわせていた。どうやらいい先生のようだ。機会があればまた呑みましょう、とあいさつのように言うと、美人さんも快く返事をしてくれた。

 

 美人さんは、こちらの友人の家に泊まりで遊びにきたらしく、じゃんけんに負けての買い物だったらしい。お互い買い物をすませたあと、あいさつをして家に帰った。その夜は、ゲーム大会のはずが、甥っ子による美人先生の話で盛り上がってしまった。甥っ子が言うには、仕事のせいで美人さんは結婚できないでいる、とのことだった。生徒にかかりっきりになり、彼氏ができても続かないと言っていた。婚活パーティーでも浮いてしまうという。というか、なぜおまえがそこまで知っているのか、と聞くと、呼び出しをくらうたびに愚痴をきかされているのだという。自分の甥っ子は問題児だったらしい。

 美人さんの担当は数学らしく、甥っ子は、文系の大学のみをねらっているらしいその授業態度の悪さに、いつも注意をされているらしかった。今度そっちにいったら、美人先生とセッティングしてくれと、冗談めかしに言っておいた。

 しかし、甥っ子は、それを本気にしていた。


 年末年始の休み、兄の家に、数日泊まりで遊びに行った。ちなみに、甥っ子は兄の息子である。家に到着し、姪っ子が迎えてくれた。子供たちの関係は、兄妹である。甥っ子も出てきたので、さっさとお年玉をわたしておいた。まだ、年をこしていない、と姪っ子が言ったので、じゃあ年越しをしてから渡すから返せと言うと、これはこれでうれしいと言いながら笑っていた。その笑い方にかわいげと、女らしさがにじみでてきていて、姪っ子の成長が見えた。それを見ていた兄が、娘をとられたことに少し苛立ちをみせていた。そこで姪っ子に、何人の男に言い寄られ、何人泣かせたのかを冗談で聞くと、3人、とリアルな数字がかえってきた。ちなみに彼氏はいないらしい。それを聞いた兄は安心しながらも、娘の、女としての成長に心配は隠せていなかった。

 その夜、甥っ子が、明日は暇かと声をかけてきた。何の用かと聞くと、夏に会った美人先生とセッティングしてくれるという。甥っ子は夏の話を覚えていてくれたらしい。生徒の伯父と会っても問題はないのだろうかと考えてみたが、せっかくなので会わせてもらうことにした。


 当日、甥っ子に連れられて待ち合わせの場所まできた。すでに美人さんは到着していた。それじゃあ、あとは若い2人でゆっくりと、と甥っ子は帰って行った。

 美人さんのほうで店を予約していてくれたらしく、店にむかった。歩きながら、甥っ子の学校での話を聞いたりしていた。そうしているうちに2人の空気の緊張がなごんでいった。

 意外というか、予約してくれていた店は、地味系の和風居酒屋で、美人さんへの自分勝手なイメージとは違う店だった。話していてわかったが、美人さんは、見た目のイメージとちがい、男っぽいところがあるようだった。それは、ジョッキの生ビールを飲むしぐさと、その笑顔ではっきりした。

 おそらく美人さんと付き合ったことのある男性たちは、見た目とのギャップ、仕事に対する熱心さから、離れていったのかもしれない、と思った。

 さらに、美人さんが自分に対してある程度オープンに接してくれたのは、甥っ子の功績によるものだとわかった。その夜は、美人さんの趣味の話になり、それに自分がノリながら話がはずんでいった。ちなみに美人さんの趣味はゲームだった。

 別れ際、少し緊張しながら、また会ってもらえないかと伝えた。美人さんは、「また今夜のような話でよければ。」

と、照れ笑いのように返事をくれた。自分は、喜んで、と満面の笑みで答えた。そしてアドレスを交換した。

 兄の家にもどると、ニヤついた自分を、甥っ子と姪っ子がひやかしながら迎えてくれた。風呂をすませてから、美人さんに今夜のお礼をメールしておいた。返事はすぐに来て、また会うことを楽しみにしている、と書かれてあった。何回かメールのやりとりをしていてわかった。年齢は聞いていなかったが、わりと乙女チックなところもあるようだった。


 それから数年、妻は教師をつづけ、自分は専業主夫をしている。

「また仕事を押し付けられた。」、と妻は愚痴ることがあるが、そういう愚痴をなぐさめながら、それなりに夫婦仲はうまく過ごせていると思う。

 今夜も妻は仕事に疲れて帰ってくるだろう。夕飯は何にしようかと考えていた。健康管理は主夫の務めである。

 結婚前と、結婚後で、生活が大きく変化した。でも、独身の頃から変わらないこともある。でも、意味合いは、1人から2人のためにと変化した。


 今夜もキャベツをスライスにしてサラダをつくる。

 これからも、2人で元気に過ごすために。


                           Fin


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