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Alternative/Warhead ―姉妹戦争―  作者: |日0TK
Practice Training
12/21

08/ shooting training 《練習》

練習は大切

 ドココココココ!ドココココココ!


 たいほうの後部甲板に軽機関銃の射撃音が響く。

 それに合わせて、艦尾から曳航された射撃標的が揺れ、或いは跳ねる。

 だが、命中しているわけではない。ソーサリーアンプでエンチャントされた弾丸の威力で海面が煽られ、それで標的まで揺れているだけだ。


 エレオノールは、腕を組んでぼんやりとその様子を眺めた。


「へたくそ」

 ぽつっと呟く。

「なんか言ったかッ?!」

 毛布の上で7.62mmチェーンガンを内蔵したワンドに抱きつくようにプローン姿勢を取り、射撃訓練をしていたショーコ・リトマネン曹長が、エレオノールのような中途半端なものではない、ぴんぴん毛先が跳ねたショートの明るい綺麗な赤毛を振り乱してがばっと振り返る。


 ちっ、聞こえてやがった……。

「いやぁ、フィヨルラントではもしかして味方ごと撃つのが流行なのかねぇ、って思ってさ? ああ、至高のスナイプソーサレス、セルマ・ハユハを輩出したフィヨルランドに失礼だった、悪かった訂正するよ。ショーコはサーミの癖に射撃が下手だなぁ、って思ってさ」

「あぐぐ…!!あ、当たる距離に近付いて撃てばいいじゃん!

 大体、エレオノールに言われたくない!あんた、こないだの訓練でVR標的に

 50mm機首ごと突っ込んでぶち抜いてたジャン!部隊一突撃バカの癖に!!」

「はン、それで言い訳は終わりか?へたくそショーコ。あれは、ちょっと硬くてでかかったからああするのが一番手っ取り早かっただけさ。それと、エレオノール中尉殿、だ」

「こぉおおのおおおおおお!」


 猟兵が突撃すんのは当然だろうが、ばーか。鳥が飛び魚が泳ぐようなもんだっての。

「はぁいはい、いいからちょっとどいてな。僕がお手本を見せてやるよショーコおじょうちゃん?」

「零距離射撃狂いのあんたがうまいってんだ、いいじゃん見ててやるよ!」

 言いながら、ショーコのいた位置に立つ。ショーコが即席レンジに据え付けられたレーザ側遠器付き砲隊鏡にかじり付く。

(砲兵部隊の前進観測部隊が使う据え置き式のやたらと重くて巨大な双眼鏡だ。何でこの船こんなもん積んでんだ)

「見てな」G11Kを抜く。

「?…バカにしてんの?立射であたるわけ無いでしょ」

 わかってねぇな。まあ、いい。


 体を横にし、遠隔操作信号で初弾を装填。

 小気味良いモーター音と共に弾薬が薬室に入る。

 まっすぐと右手をワンハンド・スタンスに構え、

 タタン!タタン!タタン!タタン!タタンッ!

 セミオートでダブルタップ。

「観測、どうよ」

「……………………………全部、命中」

「はン。ま、セミなら当たり前だな」

 鋭い作動音、スタックエンドを排出。

 空になったローディングゲートに大型のカートリッジスタックをセット。

 ローディングサーボ作動。装填よし。

 保護フレーム部を握りこんだ完璧なウィーバースタンス。

 セレクターをフルオートに。魔導加速、速射出力。


 多重魔法円が機関部から銃身を包むように浮かび上がる。

 エレオノールが『ガンバレル』と呼んでいる魔導だ。

 魔導式を展開、対象(この場合、弾薬と銃)の内包エネルギー増大活性化・靭性強化、

 魔導加速撤甲弾。結果として貫通力を高めるアクセラレート・ソーサリー。


 ドヴォオオオオオオオオオオオオッ!

 唸るような発射音に合わせ。

 標的が微細に振動する。遠目に見ても瞬間的に表面が蜂の巣になったのが判る被弾濃度。


 薬室をしっかり見てから腰に左手を当てゆっくりと銃口を口許に寄せて、ふっ、とたなびく硝煙を吹き散らす。

「どうよ」

「……………ほぼ全弾命中だよバカ!言わなくてもわかってんだろ!!」

「うん」

「なんでなのよー!」

 ショーコが叫ぶ。本人は射撃の腕は気にしていないようだが、エレオノールに負けるのが納得できないようだ。

「お前、(ワンド)乗れる?」

「何だよ脈絡が無い!フレームがあるのに杖なんて乗んないよ!関係ないでしょ!!」

「杖、練習したほうがいいぞ。風と友達になれ」

「何でよ」

「それで中るようになる」

「本当だろうナ!?嘘だったらタダじゃおかないぞ?!」

「本当だから、安心しなおじょうちゃん」

 まぁほっといてもちゃんと練習するんだろうな。そこは素直にえらいと思う。

 こいつ、筋はいいからすぐだ。


 ───僕の場合、もっと練習したいことが最近はある。

 だからこれしか持ってこなかった。


 一度、G11Kをパイロンに仕舞う。

「ふううぅぅぅ、はぁあああああぁ………」

 心身を制御する。ナノマシンの神経信号を拾ったチョーカーから可変兵装架へ起動指令信号が入力され待機状態に。


 空気を切り裂く音を立てて、自動で最適位置に展開した兵装架から紫電の如きヒノ・ブレードの居合いの速度de

 G11Kを抜いて構える。今度は外部電源ケーブルで兵装架に繋がったまま。


「……くうぅ」

 アンプが全力稼働。チョーカーのインジゲーターが赤く明滅する。

 ブウゥン………!一拍遅れて先程より高密度で立体的な多重魔法円が浮かび上がる。魔導加速、最大出力。

 爆轟。


 野砲のような射撃音が鳴り響く。両手が上に跳ねる。

 装甲車を一撃で貫く弾丸で、曳航標的が粉々になる。

「ああぁ~~~~~~ナニしちゃってんの!?こ、壊れちゃったジャンバカ!」

「あれは今日で耐用命数が終わりだったんだよ、替わりはもうある。射撃教官は僕だぞ?」

「そういう問題?!」

「僕がいいッつってんだからいいんだよ」


 ―――これじゃ、駄目だ。


「………これじゃ、勝てない」

「何にさ」

「別に。さ、今日はお仕舞いだ。お前の場合、弾がもったいないから姿勢からだな。

 MG、ちゃんと明後日まで手入れするんだぞ」

 腰の横くらいで後ろに手をひらひら振って格納庫へ。

「バカニスンナ!するよ!」

 興奮したときに出るフィヨル・ランド訛りでちょっと片仮名っぽい発音になりながらショーコが言ってくる。

 別に、疑ってないよ。

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