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06/ launch 《発艦》

出そうと思えば・・・・・

 

『シャトルセット、ギア、ブーム、アンカリングロック』

 マーシャラーが主脚とボディから降ろされたトーイングバーにカタパルトのシャトルを接続する。

 ブーマー(ブーム操作員)が伸縮式の機体拘束用アームを4本、それぞれ両脚部、ボディ両端に接続し機を拘束。

 タイダウンよりよほど強固な固定により機が殆ど動かなくなる。

「チェック OK」


『セット、ニーリング・ポジション』

「セット」

 黒いアビオフレームがその身を屈め、クラウチング姿勢になる。


『スロットル、ミリタリー』

「ミリタリー OK」

 ノズルが吐き出す排気速度が上昇し、エンジンの金属的なソプラノの調が高まる。


『ロケットモーター、セイフティ、ディスアーム』

「チェック オールディスアームOK」

『マーシャラー、最終安全装置を解除、シェルターイン』

 REMOVE(飛行) BEFORE(前に) FLIGHT(外せ)と書かれた大きな赤いタグの付いた兵装と射出用ロケットのアーマメント安全ピンをマーシャラーが解除し高く掲げる。

 総ての飛行前物理安全装置が解除され、兵装類が『生きて』いることを中枢制御装置が警告する。

 表示を解除(KILL)、これでこの機の総ての兵装は実射可能弾薬(LIVE ROUND)状態だ。

「コーションクリア、最終安全装置解除を確認 全兵装、SAFE OK」

『ユアクリア・トゥ・テイクオフ、オールレディ・ローンチ、ノーム』

「ノーム、オールレディ」

『スロットル、マキシマム』

 ペダルを踏み抜きそうな勢いで蹴り込んで機を甲板に抑えこみつつ出力制御トリガーを握りこむ。

 爆発的に跳ね上がる回転数とエンジン音。テレメトリは全て正常。リヒートが起動し、ノズルから爆発的な蒼炎を噴射してじりじりとエンジンコアの温度が上昇してゆく。

「マキシOK、メーター、オールグリーン」

『イニシエート・モーター』

 ロケット補助離陸(RATO)システムを点火する。


 ゴッ!!

 機の尻にくっ付いたどでかいミサイルみたいな白が眩しい二本の筒がその先端のノズルから爆炎の奔流を吐き出す。


 フレームごと全身がビリビリ震える。甲板のロケット・ブラスト・ディフレクターが爆炎を上へと逸らす。

「くうぅ……!」


 ロケット燃焼テレメトリの数値が規定推力を上回った瞬間、《LAUNCH》のアイコンが視覚に投影される。

『ノーム、ローンチ・NOW』

「ローンチ!」

 がちり、猛烈に重いブーム解放トリガを思い切り引き絞る。

 カタパルト操作員が射出ボタンを押し込む。

 2つの操作信号が同期し、全く同時に機を拘束する4本の巨大なブームのロックが解除され、カタパルトが紫電を曳きながら加速を開始。


 カァン!!

「ッッ!」

 鋭い金属音と共にカタパルトレールから蹴りだされる。

 Gで視界が黒くなる。

 即座にナノマシンが眼球からの視界に代わり視覚野に直接フレームのセンサ画像を叩き込む。カミソリのようにシャープで異常に鮮明な焦点を結ぶ画像が全天球の画像を構成、体感覚を喪いそうな超越的認識。

 猛烈な射出の苦痛が生の体感覚として自我を繋ぎ止める。

 背中から血が全部抜けるかのような痛み。

 必死で引き起こし。スロットルはマキシマムのまま。

 ギア・アップ。暫くそのまま大加速で上昇、燃焼を終えたロケットモーターを投棄。視認して確認、OK。

「………っはぁ!」

 漸く息を吐く、即座に機体のストアコントロールシステムが無理矢理肺に酸素濃度を高めた空気をぶち込んでくる。

 脳がチリチリして正常な体感覚を急速に取り戻す。


 ───どのみち、ナノマシンは気絶など許しはしないけれど。


『グッドラック、ノーム』

「サンクス、タイホウ・コントロール」



 さあ、あとは涼の尻に付いて陸に出る。

 その後は、いよいよお待ちかねの着艦訓練だ。

『ノーム、落ちなかったようだな』

「莫迦にするな涼」


 ―――とはいえ、相当きつかった。もっと体力が必要だな。


 そもそも勘違いされがちだが、エレオノールはその外見通り未成熟な女性相応にそこまでスタミナが無いのだった。

 ありあまる精神力とありあまるマギウムでソーサリーアンプをブン回し、全力稼働するナノマシン・フィジカルバーストで誤魔化しているのだ。

 根源的に根性論者であり、同時にヒトならざる域に至りつつある生命体なのである。


「さぁ、行くぞ、早く編隊に入れ」

 今度は距離が近いからナノマシン通信だ。


 あせる気持ちを落ち着け、編隊に入る。



『全員そろったな、では行こうか』

 デパーチャー(出発点)を通過し、一路、給油機との会合地点へ。


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