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サンキューハローグッバイ。

 ハピバースデートゥ――――ユー。


 最後の部分を溜めに溜めて歌い切ると、画面の向こうの妻がこちらに向かって拍手をする。


「杏、11歳のお誕生日おめでとう! ってことで、こんにちは母です!  そっかー、もう小五かぁー。まだお父さんとお風呂に入ってる?

 あなたのお父さんはちょっとあれだから、そろそろやんわり断った方がいいよ?

 あと、毎年訊くけど雅也君。もうさすがに再婚した? してない?

 してないのかなぁ……もし、再婚してて奥さんがこれを見てたら、本当に心からよろしくお願いします!

 ムッツリだし、優柔不断だし、ネガティブだし、とマイナスしかないようですが、いいところもたくさんあるんです。

 たくさんあるんですが、今はちょっと思いつかないんで、また次回お伝えしますね。

 って、案外もう杏に妹がいたりして。もう四人目とかだったりして。

 んーむ。あ、そうだ杏。どう? もうアレ来た? 来たらちゃんとお父さんにも報告してお赤飯炊いてもらいなよ。

 うん。あとは……好きな男の子はできた?

 って、これ毎年訊いてるよね。何かだんだん言うことなくなってくるね、これ。へへへっ。困ったな……。

 うん。まぁいいや。それでは今年はこんなところで。

 杏。愛してる。すんごく愛してる。何もしてあげられないけど愛してます。

 ……えっと、それじゃほんとキリないんで今度こそここで。

 また次回お会いしましょう! さようならー!」


 最後に画面いっぱいのサチのキスでビデオは終わった。

 ビデオはそこで終わっているが、サチのすすり泣く声がすぐ横で聞こえてくるようだ。



「ねぇ、お父さん」


 ビデオが終わると、並んでソファに座る、十一歳の誕生日を迎えたばかり娘が画面を見つめたまま訊ねてくる。


「何だ、杏」


「お母さんってさ」


「うん」


「バカだよね」


「知らなかったのか」


「いや、知ってたけど、自分の母親がこんなだって現実がどうにも受け入れられなくって」


「気持ちはわかるけど、残念ながらこれが杏の本当のお母さんなんだ」


「本当に残念だよ」


「かわいそうに」


 そう言ったところで何かの気配を察した杏が、ここに来て舵を真逆に切る。


「でもさ」


「うん」


「かわいいよねお母さん」


「そうだろ? かわいいんだよ」


「すごくかわいい」


「ものすごくかわいい」


「私、お母さんの子でよかった」


「お父さんも、お母さんの旦那でよかった」


「あと何言えばいい?」


「わかんない」


 おそらくだが、フォローのタイミングが遅かったんだと思う。


 間もなくして、背後から俺と娘の脳天に唐竹割りが同時に食い込んだ。

 

                                                           【終】



ど、どどどどうも……完結しました。

ど、どどどどどうだったでしょうか?

昨晩、完結したものと比べてしまうと圧倒的にアレでアレな感じですが、

ここまで読んでくださった、神様のような人もいらっしゃるので、

ちょっと述べります。


元々は想像するに容易い、とある事情があって、

「これはそんなにダメなのか!?」

と思ったのがきっかけでして、

ならばと、一年くらい放置していた、「なろう」に投稿しようと思ったのです。


内容に関してはとにかく切ない恋愛ものを書こうと思ったのが始まりで、

別の学園モノと同時進行で初めて書いた小説でした。

中途半端にラノベ調なのもそのせいです。


そして今まで色んなジャンルに手を出してきたのですが、

一番手間をかけたのも、この作品で、

ローマは行ってませんが、本やら写真やら他人様のブログやらグーグルマップやら、

もう行った気になるくらいに調べました。

としまえんにもひとりで行きました……寒かった……寂しかった。


なので、ローマととしまえんの描写に関しては、

「そうなんだー」と思っていただいて構いません。

たぶん。


病気に関しては最後はもちろん完全フィクションです。

執筆当時は、書きながら最後をバッドにするかハッピーにするかずっと悩んでました。

二転三転四転はしたかと思います。


恥ずかしながら私自信はこの話にものすごく同調しておりまして、

言うなれば親バカな視点で書いておりまして、

「や、やっぱり死なせたくないよー」というのが最終的に勝ったのと、

『難病モノは最後は死ぬ』といセオリーは、

自分がものすごく好きではなかったということと、

実際、病気になってる人からしたら、救いのない話ばっかりじゃないかと思った結果、最後はこうなりました。

ですが、最後「何じゃそりゃ」って思われた方はす、すみません……。


作中でがんに関して何のがんか明確にしていないのは、

調べれば調べる程に「嘘」を書きにくくなったからです。


「このがんだと、この時期にそれほどの状態なら立ってるのもしんどいはず……」

「このがんだと、この時期に発見できたなら回復の見込みがかなり大きいし……」

ってな感じで身動きが取れなくなってしまった末の決断でした。

なので、難病モノの映画というのは結構いい加減なこと言ってるんだと知りました(笑)

ということで、がんの描写はフィクションです。


ただ、もし少し「がん」という大きなくくりを差す病気に興味を持っていただけたのなら、

参考資料の中から、

中川恵一先生の「がんのひみつ」をお薦めします。

中川先生の著書はどれも読みやすく、

まったく眉間にしわを寄せることなく読めますが、

なかでもこれはものすごくサイズがコンパクトで、

字も大きくページ数もそんなにありません。

しかし、読んでみると感心の連続です。

あまり大きな声では言えませんが、

お値段も中古でいいならアマゾンで小銭で買えます。

定価でも¥714です。


「がん」というのは何ぞやというところから、

治療法や、間違った知識などが、

専門用語をほとんど使わず、読みやすい言葉で書かれてあります。

読む前と読んだあとでは心構えが全然違います。

漠然と「難病」という恐怖心ばかりあったがんですが、

その正体がわかると不思議と前向きにがんを捉えることができます。

読みものとしても十分面白く書かれてあるので、絶対読んでください(笑)

でも、本当強くお薦めします。

たかだか、ン百円です。

騙されたと思って買うには気楽な額じゃないでしょうか。


思い入れが強い分、長くなり過ぎました。

文章もおそらく滅裂かと思いますがお許しください。

最後までお付き合いくださり、本当に本当にありがとうございました。

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