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お父さんスイッチ。


 結局、話はそのまま中断して、姉ちゃんも親父達もそれぞれに帰っていった。


「ダメだな。俺は」


 病室に柔らかな夕陽が差し込む中、

 サチの腕の中で眠る杏の顔をを眺めがら愚痴が漏れた。


「そんなことないんじゃない?」サチも杏を見つめたまま、

「それでよかったと思うよ私は」と言った。


「肝心なところで泣いちゃったのに?」


「うん。だって本当に意地張ってたってしょうがないもん。幸せは指くわえて眺めるもんじゃないんだよ。こうやって手の中にあってこそ幸せなんだよ。それがわかった時、きっとお義父さんもお義姉さんも雅也君に感謝するよ」


「何かさっちゃん、頼もしいね」


 そう言うとこちらに「キリッ!」と顔を作ると、

 すぐにそれを笑顔で崩した。


「しっかりしようと決めたんだよ。たぶんホルモンとかそういう関係なんだろうなって思うんだけど、こうやって杏の顔を毎日見て、ミルクあげて、おしめ変えてってしてると、私生きなきゃなって思うんだよ。しっかりしなきゃなって。だからね、雅也君の言ったわずかな可能性にすがるっていうのはちょっとだけ違うかな」


「悲観的過ぎ?」


「まあ、私もずっとそういう風に考えてたからわかるんだけどね。でも今はすがるんじゃなくて、わずかな可能性を根こそぎ奪いに行くって感じかな。他人を押しのけてでも生きてやるって。その為だったら煮え湯だってごくごく飲むよ」


「母は強しか」


「父も強くなれ」


 そう言うとサチは、こっちに寄れと手招きした。

 俺はてっきりキス展開だと思って顔を近づけたところで、鼻の頭を押される。


「なに?」


「お父さんスイッチ」


「そこスイッチなんだ」


「そうなんだよ実は」


「強くなれるの?」


 そう訊くと、「無茶苦茶なれる!」といたずらっぽくサチは笑った。


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