◇追われる側から追う側へ!4
油と線路の鉄の臭いが充満するトンネルの端の通路を駅員さんの先導で私達は奥へ奥へと進む、反対側では轟音をたてて列車が私達の横を通過していく。
「この扉の先が関係者専用の通路です、その先のドアから下に行く階段があり、雨水等を流し出す下水道へと繋がっていますので、そこから行けますよ…」
「Thank You!!君はここでいいよ、後は私達が何とかする、案内ご苦労様!」
駅員さんと別れた私達は、静かに扉を開けて関係者専用の通路に入った、もっと暗い通路かと思っていたが、LEDライトのお陰かとても明るかった、しかし、緊張していた私は思わず固唾を飲んだ……。
「い……いよいよやね!…ヴァンパイアハンターチーム[ビーナス京子と愉快な仲間達]の初仕事!!……」
「は?……京子ちゃん……そのネーミング……何とかならない?……」
「どこかおかしい?……うちは気に入ってるけど♪…」
「じゃ…………帰ったらロバートさんとマイクさんにもこのチーム名…相談してみたら?…………」
「えっ??……そ……そやね…………じ…次回のミーティングの議題にするね…………」
「ははは♪やはり京子をチームに入れて正解だったね!余計な緊張が解けてリラックス出来るよ!…沙也架も以前より落ち着いているようだしね!」
ケンさんの言う通り、なんだかあまり怖い気持ちが出てこない…怖いと思う前に京子ちゃんが何かをしでかすから、ついつい気が京子ちゃんに向いてしまう……あれ?もしかして京子ちゃん……それを計算してわざとやってる?……。
「じゃぁ、じゃぁ、ケンさん!こんなのは?[京子ファンクラブ]って…響きもいいし…簡単でいいでしょ?」
「わ…私は[水の戦士カッパ~ガール友の会]の方が好みだけどね……」
「友の会って!…ケンさん古すぎぃ~~!」
(……な訳ないか…………)
地下と言っても今は夏真っ盛り、おまけにこの厚着をしているからすでに汗が額からも流れ始めていく、当然こんな場所に空調などあるわけない、私はジャージの袖で何度も額の汗を拭った。
「ほんまにあっついな~~…………タオル持ってて良かったわ!…はぁぁ~~……けど、この暑さでブラのカップまで汗が染み込んでくるわ~~……」
「ちょ、ちょっと京子ちゃん!…ケンさんも居てるのよ!…」
「あら?私としたことが……ごめんあさぁ~せ!」
ようやく長い通路の先に更に地下へと続く扉が見えてきた、それと同時に京子コメディショーの終演を迎える。
「さぁ!2人共!そろそろ扉の前だ!……京子!ワルサーの安全装置を解除!…沙也架!聖水の用意と左目に神経を集中させるんだ!!」
《はい!!》
忘れていた緊張が私達を包んでいく……私はゆっくり深呼吸を2回してそっと両目を瞑り神経を左目に集中していく。
(おじいちゃん……京子ちゃんと……ケンさんやみんなを守る力を私に貸して…………主よ、これから私達が行う事を許したまえ……)
♪カチャッ!!
京子ちゃんの右手に握られたワルサーから安全装置が解除された音が聞こえた、その音を合図に私は静かに左目を開けていく。
「では、扉を開ける!…沙也架!ここから君が先頭だ!いいね?…」
「ケンさん?…ほんまに沙也架ちゃんを先頭にしていいの?……」
「心配しないで、京子ちゃん……私…左目だけは暗闇でも赤外線カメラみたいにはっきり見えるの……だから、大丈夫よ!」
「へぇ~~……沙也架ちゃんて、コウモリみたいやね♪」
(いやいや!全然違うしぃ~~…コウモリは超音波でしょ!)
♪ガチャン!ギィ~~~~~~…………
ケンさんが静かに扉を開けていく、さすがに京子ちゃんも警察官だ!扉が開くにつれ、しっかりと両手でワルサーを構え視線はその奥の暗闇に注がれていた。
「沙也架…君の合図で私がヴァンパイアにライトを当てる!……その瞬間、京子は素早くワルサーをshotする!……lastは沙也架がヴァンパイアを浄化させる!……何か質問は?……」
「あの……やっぱり発砲するって事は……相手の頭を狙わなあかんの?……」
「京子はホラー映画好きかい?……ヴァンパイアとゾンビを混同してるね、別に頭を狙わなくてもいい!ワルサーの弾丸には聖水が入っている、どこをfireしてもヴァンパイアにダメージを与えられる!」
「それ聞いて安心したわ♪うちらまだ夕飯食べてないのに、頭バーーン!!のシーンは見たくなかったし♪」
(この京子ちゃんの余裕…どこから出て来るかな?……あのおまじないのお陰?……だとしたら………凄く……京子ちゃんて…単純だ………)
「ok!…では、頼むよ!沙也架…」
ドアボーイのように扉を開けてくれるケンさんの前を私は通り過ぎていく、じわじわと私の左目に奥の様子が映し出され、私は一歩一歩ゆっくりと歩き始める、その後ろからケンさんが私の肩を、京子ちゃんがケンさんの肩を掴み連結状態で進んでいく。
「なぁなぁ、連結ゴッコみたいにしてるけど……ナイトスコープとかは使ったらあかんの?……」
「残念ながらナイトスコープはロバート達のチームに出張してるよ、私達には沙也架が居てくれるから必要ないしね!…」
「なるほどね♪そりゃそやね!…」
ケンさんの言った通り京子ちゃんが居てくれて良かった!もし私とケンさんだけだったらプレッシャーでもっとガチコチになってたはずだ。
「間もなく階段です、足元に注意して下さいね!…」
「OK!!」
「はいな!」
一段、一段と暗闇の階段を私達は降りていく…果たして明日の太陽が見られるかどうか…その不安が頭をよぎる。
(大丈夫!今回は頼もしい仲間も一緒だから!…)
私の右肩にしっかりと添えられたケンさんの掌から温もりが伝わってくる、その温もりが私に勇気を与え前へ前へと足を進ませてくれた。




